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萎
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な
ふりがな文庫
“
萎
(
な
)” の例文
それをいぶかる君自身すら、心がただわくわくと感傷的になりまさるばかりで、急いで働かすべき手はかえって
萎
(
な
)
えてしまっていた。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その小家の持ち主というのは、娘と二人暮らしの足の
萎
(
な
)
えた老婆で、この町の町人だということは、アリョーシャもよく知っていた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
今日こそ夫人の
機嫌
(
きげん
)
を取り返してやろうという
気込
(
きごみ
)
が一度に
萎
(
な
)
えた。夫人は残酷に見えるほど早く調子を
易
(
か
)
えて、すぐ岡本に向った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
捉え難い寂しさは
盲
(
めし
)
いたる眼で闇の中を
当
(
あ
)
て
途
(
ど
)
もなく見廻わそうとし、去り難い悩しさは
萎
(
な
)
えたる手でいたずらに虚空を
掴
(
つか
)
もうとした。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
パルプを解く槽のあたりに眼をやると、そこに
叢
(
むらが
)
るとうに盛りを過ぎて
萎
(
な
)
えしぼんだ黄水仙が、少し出て来た風に重く揺れている。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
▼ もっと見る
だが、かの
女
(
じょ
)
は
萎
(
な
)
えかけた自分の体を、その薬で
癒
(
い
)
やそうとする希望より強く、今の話が胸の底にいろいろな想像の
渦
(
うず
)
を起こしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
気も心も
萎
(
な
)
えきった祖母は、しまいには
諦
(
あきら
)
めたらしく、家の暮しがあまりに苦しいので、お金の工面に帰った母親が、金の工面ができず
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
それが度重なつたところで、そんな神経が
若
(
も
)
しあつたとしても、いつか
萎
(
な
)
えてしまつて、常習的に感じがなくなつてしまつたものだつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
かくて次の日になりけるに、不思議なるかな
萎
(
な
)
えたる足、朱目が言葉に露たがはず、全く癒えて常に異ならねば。黄金丸は
雀躍
(
こおどり
)
して喜び。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
真中
(
まんなか
)
に際立って、袖も襟も
萎
(
な
)
えたように
懸
(
かか
)
っているのは、
斧
(
よき
)
、琴、菊を中形に染めた、朝顔の秋のあわれ花も白地の浴衣である。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ついにある安息日に会堂で、そこにいた片手の
萎
(
な
)
えたる人をもしイエスが癒したならば官憲に告発しようと、悪意に満ちてうかがっていた。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
とても自分などが
太刀打
(
たちう
)
ちできる相手ではないと思うと、心が
萎
(
な
)
えたようになって、何をいうのも
覚束
(
おぼつか
)
ない気がするのだった。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
されど見よかしこに流るゝエウノエを、汝かなたに彼をみちびき、汝の常に爲す如く、その
萎
(
な
)
えたる力をふたゝび生かせ。 一二七—一二九
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
ただ、多くの美しい女性が、若くして力が
萎
(
な
)
え、そのためにあの世に旅立たなければならなくなるとかたく信ずるのである。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
萎
(
な
)
えた白絣の襟を堅く合せて、柄に合はぬ縮緬の大幅の兵子帶を、小さい體に幾𢌞りも捲いた、狹い額には汗が滲んでゐる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
うんとお絹の横顔を
睨
(
にら
)
みつけると、例の乳白色の少し
萎
(
な
)
えてはいるが、魅力のある白い頬に、白粉をこってりとつけている。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
歪みのままに自分の気持を
萎
(
な
)
えさせて、どうせ、と云ってしまったら、どこから自分たちの成長の可能がもたらされよう。
女の歴史:そこにある判断と責任の姿
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それだのに、脚がひどく力がなく
萎
(
な
)
えこんだ。脚だけがどうしたのか、つい、五六間も歩いたら、へたばりやしないか、彼は、それを危ぶんだ。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
そこを
流石
(
さすが
)
は忠三郎氏郷だ、戦の門出に全軍の気が
萎
(
な
)
えているようでは宜しく無いから、
諸手
(
もろて
)
の士卒を緊張させて其の意気を振い立たせる為に
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ときどき、
膝
(
ひざ
)
が
萎
(
な
)
えそうになる気もした。部屋に入り、電燈を消しすぐ横になったが、どうしても
睡
(
ねむ
)
ることができない。
一人ぼっちのプレゼント
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
萎
(
な
)
えたような心を我れから引き立てて
行李
(
こうり
)
をしばったり
書籍
(
ほん
)
をかたづけたりしながらそこらを見まわすと、何かにつけて先立つものは無念の涙だ。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そして夫が滑かな舌で、道理らしい事を言うのを聞いていると、いつかその道理に服するのではなくて、只何がなしに
萎
(
な
)
やされてしまうのである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
私の身体にも精神にも力が
漲
(
みなぎ
)
って来た。
萎
(
な
)
えた手足がぴんとなって、わけなく私は立ち上れた、空腹などは永久に忘れてしまったようでもあった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
しかし自分自身に、そして自分の力にずつとしつかりした信頼を持つてゐることを、壓迫に對して
萎
(
な
)
え恐れることの少くなつてゐることを感じた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
長い道中のために両脚が
萎
(
な
)
えてかたわになっていたのである。歩卒ふたり左右からさしはさみ助けて、榻につかせた。
地球図
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その向うには何でも
適中
(
あた
)
るという評判の足
萎
(
な
)
え
和尚
(
おしょう
)
さんが、丸々と肥った
身体
(
からだ
)
に、浴衣がけの
大胡座
(
おおあぐら
)
で
筮竹
(
ぜいちく
)
を
斜
(
しゃ
)
に構えて、大きな眼玉を
剥
(
む
)
いていた。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
郡兵衛今は魂消え気
萎
(
な
)
え、怒りばかりは燃え狂っていたが、頭は乱れ胸は動悸、
沈着
(
おちつ
)
きことごとく失われてしまった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼は今日も、
萎
(
な
)
え
相
(
そう
)
になる気力を奮い起して、早くから登庁した。そして、自席について、今日の捜査方針に思い耽っている所へ、刑事部長からの使だ。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
萎
(
な
)
えて弱まり、その上都合の悪いことには心の底の方から自分で憎くなるほど相手に対して睦まじげな
慈
(
いつく
)
しみやら
憫
(
あわれ
)
みが滲み出して来るのでありました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
母の手紙で一
時
(
じ
)
萎
(
な
)
えた気が又
振起
(
ふるいおこ
)
って、今朝からの今夜こそは即ち今が其時だと思うと、
漫心
(
そぞろごころ
)
になって、「泊ってかないか?」と私が
常談
(
じょうだん
)
らしくいうと
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
浪路は、もだえ狂ったが、何分にも、さっき、あれ程の惑乱のあとで、身も
萎
(
な
)
え萎えと、今は、抵抗の力もない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と、戸板にかかった針先をとろうとし、つるりと滑った途端に、
菰
(
こも
)
が
摺
(
ず
)
り落ちて、皮も
萎
(
な
)
え血もしこり、肉脱した岩の死骸が、ぬるっとばかりに現われた。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
たまたま下の洗面所に顔でも洗いにゆくと、目に入るものは、赤錆いろの鉄分の強い坪ばかりの池の水と、
萎
(
な
)
えきって生色のない
八
(
や
)
つ
手
(
で
)
の一、二本である。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そしてかれらの生活は自分たちの吐いた同じ息をくりかえし呼吸することによって
萎
(
な
)
えていく。朝夕のかれらの影はかれらの日中の足取りよりも長くとどく。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
こんなことではならぬならぬと思いながら、思えば思うほど腕が
萎
(
な
)
えるような気がして、どうにもならない。彼はただ暗がりの中にまじまじと眼を
睜
(
みひら
)
いていた。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
その内部にて、用途のないもろもろの力は、使用がはばかられる美徳や悪徳は、
萎
(
な
)
えしぼんでゆく。実際的な賢い理性が、
卑怯
(
ひきょう
)
な常識が、室の
鍵
(
かぎ
)
を握っている。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
女の肌を恋しいと感じても、わしの心と体とは一つにならず、
萎
(
な
)
えうな垂れて、力ないのだ。奈世は蒸しタオルに萎えを包んで支え、尊いものの様に
撫
(
な
)
ぜさする。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
それに
萎
(
な
)
えた
揉烏帽子
(
もみえぼし
)
をかけたのが、この頃評判の高い
鳥羽僧正
(
とばそうじょう
)
の絵巻の中の人物を見るようである。
運
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
店の小さい
窯
(
かま
)
の前には人の善さそうな陶器師の
翁
(
おきな
)
が
萎
(
な
)
えな烏帽子をかぶって、少し猫背に身をかがめて、小さい莚の上で何か壺のようなものを一心につくねていた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
武男が
仙台平
(
せんだいひら
)
の
袴
(
はかま
)
はきて儀式の座につく時、
小倉袴
(
こくらばかま
)
の
萎
(
な
)
えたるを着て下座にすくまされし千々岩は、身は武男のごとく親、財産、地位などのあり余る者ならずして
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
麓のだんだん畑には、霜がれた薩摩芋の
蔓
(
つる
)
が、畑一面に
萎
(
な
)
えていた。芋蔓が枯れる時には、地中の芋は、まったく成熟し切っていた。私達は、お腹が
空
(
す
)
き切っていた。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
納屋へしめこまれると思わせようとしたお母さんは、今までの腹立ちがきゅうに
萎
(
な
)
えてしまい
赤いステッキ
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
かへらはゞ我郷訪ひこ見にまかれ足がまたけば手は
萎
(
な
)
えぬとも((明治三十七年九月上旬作))
長塚節歌集:2 中
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それほどになさつても、なんの
役
(
やく
)
にも
立
(
た
)
ちません。あの
國
(
くに
)
の
人
(
ひと
)
が
來
(
く
)
れば、どこの
戸
(
と
)
もみなひとりでに
開
(
あ
)
いて、
戰
(
たゝか
)
はうとする
人
(
ひと
)
たちも
萎
(
な
)
えしびれたようになつて
力
(
ちから
)
が
出
(
で
)
ません
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
さすがに一同
呀
(
あ
)
っ! と
驚駭
(
きょうがい
)
の叫びを発したが、ピッケルン島南の遭遇以来、死生の間に打ちのめさるることすでに九十六時間! 身心気力ともに
萎
(
な
)
え疲れ、感覚は麻痺し
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
郎女は、
徐
(
しづ
)
かに
両袖
(
もろそで
)
を胸のあたりに重ねて見た。家に居時よりは、
萎
(
な
)
れ、
皺
(
しわ
)
立つてゐるが、小鳥の
羽
(
はね
)
とはなつて居なかつた。手をあげて唇にさはつて見ると、喙でもなかつた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
ながい病床生活ですっかり足が
萎
(
な
)
えてしまった俺は、降り積った雪を踏む足が、まるで雲の中を歩くような頼りなさだった。俺は足で歩くのではなく、いわば気力で歩いていた。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
それから十一日には二度目の霜が降った。四度目の霜である十二月
朔日
(
ついたち
)
は雪のようであった。そしてその七日八日九日は三朝続いたひどい霜で、
八
(
や
)
ツ
手
(
で
)
や、つわぶきの葉が
萎
(
な
)
えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
緋の羽二重に花菱の
定紋
(
ぢやうもん
)
を抜いた一対の
産衣
(
うぶぎ
)
が
萎
(
な
)
へばんでは
居
(
を
)
るが目立つて
艶
(
なまめ
)
かしい。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
すすきの
萎
(
な
)
えた穂と
唐糸草
(
からいとそう
)
の実つきと、残りの赤い色を細かにつけた
水引草
(
みずひきぐさ
)
と、それに
刺
(
とげ
)
なしひいらぎの白い花を極めてあっさりと低くあしらったものである。至極の出来である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
萎
常用漢字
中学
部首:⾋
11画
“萎”を含む語句
萎縮
萎靡
萎々
打萎
足萎
萎氣
濡萎
萎微
萎気
気萎
萎枯
萎縮腎
凋萎
萎黄病
萎靡凋落
萎靡因循
萎靡振
身萎
萎靡沈滞
萎靡沈衰
...