“慈”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
いつく65.6%
いつくし17.2%
いつ3.1%
なさ3.1%
めぐ3.1%
やさ3.1%
いつくしみ1.6%
1.6%
1.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
そして彼は、ただ現在の生をのみいつくしむ涙ぐましい心を懐いて、袷の肌にも寒いほどの夜更けに、火種さえない下宿の四疊半へ、ぼんやり帰っていった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
春水が亡い後は、子に対して盲愛に近い母性のいつくしみと、そうではならぬという厳格な愛の形とが、手紙の文字にも闘っている老母を見た。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女は、だんだん老紳士に対する好感が増して行き、いつくしむようなまなざしで青年の姿を眺めていると、老紳士は、暗黙の中にそれを感謝するらしく、
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
何故なら、濡れたがらくたの堆積の間に、春は植物をいつくしんでゐた——草や雜草などが、石や落ちたたるきの間のあちこちに生えてゐた。
さういふ僕たちを恰もいつくしむかのやうに、マントル・ピイスの上から、この夏釋迢空さんが僕たちのために書いて下すつた朱の短册が、森嚴に見下ろしてゐる。
山日記その二 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
いつくしみ深かりし姉上、われはわが小親と別るるこの悲しさのそれをもて、救うことをなし得ざる姉上、姉上が楓のために陥りたまいしと聞く、その境遇に報い参らす。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それに一體君は、魔法使ひの婆さん見たいな人間は、君に仕事をさせて呉れるやうな方面にばかし居るんだと思つてるのが、根本の間違ひだと思ふがな。吾々の周圍——文壇人なんてもつとひどいものかも知れないからね。君のいふ魔法使ひの婆さんとは違つた、風流な愛とか人道とかいつくしむとか云つてるから悉くこれ慈悲忍辱の士君子かなんぞと考へたら、飛んだ大間違ひといふもんだよ。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
それに一体君は、魔法使いの婆さん見たいな人間は、君に仕事をさせて呉れるような方面にばかし居るんだと思ってるのが、根本の間違いだと思うがな。吾々の周囲——文壇人なんてもっとひどいものかも知れないからね。君のいう魔法使いの婆さんとは違った、風流な愛とか人道とかいつくしむとか云ってるから悉くこれ慈悲忍辱にんにくの士君子かなんぞと考えたら、飛んだ大間違いというもんだよ。
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
彼は起き上り、そして自分を捕へに来た者を再び蹴らうと足を上げた時、「助けてやらう。おなさけだ!」と云ふ声が後ろにして、刀が背中から彼の胸を突き抜いた。
が、其晩長崎の町には踏絵の鋳造者萩原裕佐が「特別なおなさけを以て」秘かに斬罪に処せられたと云ふ噂が拡まつた。
ファラデーは非常になさけ深い人で、よく施しをした。
しかしまた吶喊とめた上は、大将の命令を聴くのが当然だから、わたしは往々曲筆をめぐんでやらぬことがある。
「吶喊」原序 (新字新仮名) / 魯迅(著)
然して後に天皇のたまはく、朕がこども各異腹にして生る。然れども今ひとつ母同産おもはらからの如くてめぐましむ。則ちみそのひもひらきて、その六皇子を抱きたまふ。よりて以て盟ひてのたまはく、若しちかひたがはば、たちまちに朕が身をうしなはむ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
暖味のない夢に物寂た夜を明かしけるが、お浪暁天あかつきの鐘に眼覚めて猪之と一所に寐たる床よりそつと出るも、朝風の寒いに火の無い中から起すまじ、も少しさせて置かうとのやさしき親の心なるに
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
暖か味のない夢に物寂ものさびた夜を明かしけるが、お浪暁天あかつきの鐘に眼覚めて猪之と一所に寝たる床よりそっと出づるも、朝風の寒いに火のないうちから起すまじ、も少しさせておこうとのやさしき親の心なるに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と飽くまでやさしき注意こゝろぞへ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
(中略)清麻呂らと事を謀っている同類の存在も分っているが、天皇のマツリゴトはいつくしみをもって行うべきものだから
安吾史譚:02 道鏡童子 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
諸王、諸臣、及び天下の百姓、ことごと長老おきなは愛児を失ふがごとく、塩酢之昧あぢはひ口に在れどもめず、少幼者わかきめる父母かぞうしなふが如くて
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
逍遙子はあらしに似たる批評家の花にならざるを怪めども、われは逍遙子が花に慈なるに過ぎて、風を憎むことの太甚はなはだしきを怪めり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)