)” の例文
それでみん御免蒙ごめんこうむって岡田より先へ食事を済ました。岡田はそれがこっちも勝手だといった風に、ひとぜんを控えてさかずきめ続けた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然しこちらをめてかかつた相手に向つて正面から、返答するのも気の利かない話だから、目下頻りに考へ中でまだ手紙は投函しないのだ。
西東 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
で、試みに綱をさげると、その端がしっかりと湿ってくる。めると、それが海水の味。さすが折竹も、オロオロ声になって
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
片目の小さい、始終しよつちゆう唇をめ廻す癖のある、鼻の先に新聞記者がブラ下つてる様な挙動やうすや物言ひをする、可厭いやな男であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
又、私の袖を引きますので五月蠅せからしい奴と思うて振向きますと、大惣の奴、熱で黒くなった舌をめずりまわしております。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仏教では、これを「愛見の大悲」といっておりますが、ほんとうの慈悲は、盲目的な愛、母牛が仔牛こうしめるような、そんな愛ではないのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
なにか仰しゃったようでごぜえますが、むずかしくって少しも分りませんが、わけえ殿様に水飴をめさせて、それから殿様にも甜めさせて、それを
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何だ、何だ、何だ、何だと? 掏摸すりだ、盗賊どろぼうだと……クソをくらえ。ナニその、胡麻和ごまあえのようなてめえつらめろい! さあ、どこにわっしてめえの紙入をったんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
障子をガラリと開けると、中は小さい居間、長火鉢の銅壺どうこに徳利を突っ込んで、め物を二つ三つ猫板に並べ、一人者の気楽に独酌をやっている真っ最中です。
これをめていなごをたべてたとすればいにしえのユダヤの予言者は決して粗食だったとはいえないであろう。
胆石 (新字新仮名) / 中勘助(著)
書きかけては鉛筆をめながら眼をあげた。どのへんだか、何時頃だか判らなかった。ただ激しい風と暗闇くらやみいて疾走はしりつづけている列車の轟音ごうおんだけがきこえていた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
そのとき一人の皇子がどうしたものでしたか、おそばの者と別れて、独りで逃げ迷つていらつしやいました。風にあふられた火は大蛇だいじやの舌のやうにペロリ/\とお軒先をめてまゐります。
拾うた冠 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
それからあいちやんはきのこめて(衣嚢ポケツトなかつたもう一かけの)ほとんど一しやくばかりの身長せいになつて、そのちひさなみちくだつてき、やがて——あいちやんはつひ赫灼かくしやくとしてあやなる花壇くわだん
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
と相手がいおうものなら、ドレゴは待ってましたという風に唇をめて
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
それに文化と云う奴が世の中をめ廻して、2495
なにめた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
コップもかうして握つてめりや、ラヂウム程度にスリへるだらうから、然し、握らねえで、甜めねえで飲むてえわけには行かねえだらうな。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
小「何故大地ぢびためる、汚ならしい、ごみでも這入ってるといかないから止せ……御用の会符でも立ってるか見ろ」
その間も彼の目は、寝ているドドの背に置かれたマヌエラの手のうえを、まるでめ廻すようにいずっているのだが、どうやらそれも、ただの酔いのせいではなさそうに思われてきた。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
二人は火鉢のふちに片手をかざしたまま、ずっと離れた一人はそこに取り散らした新聞紙の上へめるように顔を押し付けたまま、また最後の一人は彼の今腰をおろした長椅子の反対の隅に
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
長い舌がペロリと上唇をめました。
このように要領のよい稲吉だから、心の中では兄弟子どもをことごとくめきッていた。オレは十八、お志乃は十九。別に奇妙な組み合わせではない。
鐵「へえーお医者で、わっちどもはいけぞんぜえだもんだから、お医者と相宿になってると皆も気丈夫でごぜえます、ちっとばかり薄荷はっかがあるならめたいもんで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
めて見ると唇につうんと辛味を感じた。それでやっと分った。私は砂川サンド・リヴァから岩塩の層に落ちこんだのだ。地下水が岩塩を溶かしてつくる塩の洞窟だ。マヌエラ、あなたには想像もできまい。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「いえいえ、分るもんかね。やりかねない奴なんだよ。まるであたいのことなんかめきつてゐるんだから……」
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
紋「あゝ數馬が来たら何うか成るか、あゝ逆上のぼせて来た、折角お兄様から下すった水飴、めて見ようか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ゴリラには、憂鬱病メランコリー恐怖症ホビーが周期的にきて、その時期がいちばん狂暴になりやすいという。そして苦悶くもんつのって来てえられなくなると“Hyraceumヒラセウム”をめにきて緩和するというのだ。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その翌日から和尚は全く発狂して、やたらと女をペロペロめたがり乍ら、間もなく黄泉の客となつた。と、そんな話を一夜龍然はぽつぽつと凡太に語つた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
貴方が御勘当になればわたくしはあなたをベロ/\めますよ、あなたが御勘当になれば揚屋町あげやまちの裏あたりの小粋な処へ世帯しょたいをお持たせ申して、私が仕送りをして御不自由はおさせ申しませんで
ビール、酒が高すぎる、こゝのカストリも高すぎるてんで、みんなよそで飲んできて、こゝぢや、めてゐるばかりで、もつぱら女を口説いてますな。女で酒を
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
親類に成っちまって、お前の云うことは何んでも聞く、頬辺ほッぺたでもめさせるから堪忍してくれろとすがり附いて、機嫌を取って、花魁の御法事御供養をなさい、お金はかゝりますが、仕様が有りません
彼は草鞋を履き、かみしものやうな古めかしい背広服に顔色の悪い丸顔を載せて、零れた人々を一人づつめるやうな格巧をしながら、よろよろと彼を探し廻つてゐた。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「私ね。あとで、男娼の手にすりかえさせようかと思ったんです。はじめの計画は、そうだったの。男娼はよろこぶわ。暗闇で先生に頬ずりしてよ。めるわよ」
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
食べることはできないからめるだけでカンベンしてくれとたのんで、甜めて帰してもらいました。
お前さんたちが甘えるッてことは、めるッてことなんだぜ。お前さんたちが甜めてるものが、ホンモノなのさ。そんなことは、お前さんたちには、わからねえやな。
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
女と相愛の仲かと思えばそうらしくもなし、むしろ女にめられきっているという風なんだね
日月様 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
一時にダビ所をつつみ、火勢あまって赤い舌は大地をたたき、めるように地面を走った。
目から一寸五分ぐらゐのところへ押立てゝめるやうに読む。試みにお札を数へさせると、やつぱり目のさき一寸五分のところへかざしてノゾキ眼鏡をいぢくるやうに数へる。
金銭無情 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
女は小量の紅茶をいたはるやうに飲んで口のまはりをめた。まぶしさうに笑つてゐる。
戦争と一人の女 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ところが肥つた女は駄夫に優越を感じてめきつてゐるものだから、その都度「ふん」とか、なんだい青二才めといふやうに、何かしら駄夫へ対する軽蔑を仄めかしてみせるのである。
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
「この匿名を読んでごらん。拍子抜けがするだらう。一人前の字ぢやないんだね。張合がなくて、められたやうな、なさけない気持にならないかね。だから、君、読者をみんな悩ましてやるのさ」
新作いろは加留多 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
こういふ有様の日本軍なら明の援軍を待つまでもない、俺の力でも間に合ふだらう、と唐突に気が強くなり頭からめてきた。そこで行長の交渉に返答すらも与へず、返事の代りに突然全軍逆襲した。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
めたこともないくせに、大きなことを言いだした。
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)