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綯
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な
ふりがな文庫
“
綯
(
な
)” の例文
金も拾いたいし、お嬢さんにも近づきたい……欲と色の
綯
(
な
)
いまぜ手綱だから、この早朝から、いやもう、奔馬のような人気
沸騰
(
ふっとう
)
……。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もっと社会的な複雑な要因の
綯
(
な
)
いまぜられたものの動きとして感じているから、そういう実質でかりに我々の程度というときには
異性の間の友情
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少
(
すこ
)
し
懷
(
ふところ
)
が
窮屈
(
きうくつ
)
でなくなつてからは
長
(
なが
)
い
夜
(
よ
)
の
休憇時間
(
きうけいじかん
)
には
滅多
(
めつた
)
に
繩
(
なは
)
を
綯
(
な
)
ふこともなく
風呂
(
ふろ
)
に
行
(
い
)
つては
能
(
よ
)
く
噺
(
はなし
)
をしながら
出殼
(
でがら
)
の
茶
(
ちや
)
を
啜
(
すゝ
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
およそ、あらゆる乱雑な音響を
綯
(
な
)
い固めた、の太い声だ。その間を、まぎれもせず、優しい声が細く透るのは、湧き出す湯のだ。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
偃松の枝に捉まって、涸谷を眼下に
瞰下
(
みおろ
)
すようになったが、ここにも大きな残雪があったので、雪と岩片を
綯
(
な
)
い
交
(
ま
)
ぜに渡った。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
▼ もっと見る
近ごろ君、経済書の売行が
好
(
い
)
いさうだが、何の事は無い、
盗賊
(
ぬすびと
)
を見て縄を
綯
(
な
)
ふやうなもんだ。戦争以来実業が勃興したといふのが間違つてる。
青年実業家
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
妖怪
(
ようかい
)
にしてまた悪童である彼は、自然の声とパリーの声とで一つの雑曲を作っていた。小鳥の調子と工場の調子とを一つに
綯
(
な
)
い合わしていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
二人は
固
(
もと
)
より天に
上
(
あが
)
る
雲雀
(
ひばり
)
のごとく自由に生長した。絆を
綯
(
な
)
った人でさえ
確
(
しか
)
とその
端
(
はし
)
を握っている気ではなかったのだろう。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この福慈岳に籠れる選まれた偉大ないのちの中に
綯
(
な
)
い込められ、いまや天地大とも久遠劫来のものとなってしまいました。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
武蔵は、懐紙を取り出して、
紙縒
(
こより
)
を作り始めた。幾十本か知れぬほど
縒
(
よ
)
っている。そしてまた、二本
縒
(
より
)
に
綯
(
な
)
い合せて、長さを測り、
襷
(
たすき
)
にかけた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で、刀身が
綯
(
な
)
われるように、頭上で入れ違って綾を織って、そこに怪しい気味の悪い光り物が踊っているように見えた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして停車場を出ると、ひとりでに込みあげて来る祈祷の文句に、自分の祈願をも
綯
(
な
)
いまぜて一心に唱えはじめた。
情状酌量
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
いつか自分の現在の気もちと
綯
(
な
)
い交ぜになってしまっているようなものばかりを主として、書いてゆくつもりだ。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
右は僕の村の農家が冬の副業に
筵
(
むしろ
)
を織ったり縄を
綯
(
な
)
ったりして働く労賃が、幾らになるかを調べて見たのである。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
小虎の鋭い叫びと殆ど同時に、
巌畳
(
がんじょう
)
に
綯
(
な
)
ってある藤蔓縄が、ぷつりと
断
(
き
)
れた。小虎は水音凄まじく新利根の堀割に落ちた。竜次郎の驚きは絶頂に達した。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
泥棒をつかまえて縄を
綯
(
な
)
うような、ブマなことをしでかした自分を、米友は
歯痒
(
はがゆ
)
く思って
地団駄
(
じだんだ
)
を踏みました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
泥棒を
捕
(
とら
)
えて縄を
綯
(
な
)
うようだが、なかなか油断してはいかぬ。敵国外患なきものは国常に滅ぶ。敵国が来るから、これから国民が努力して一生懸命奮発する。
吾人の文明運動
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「まあそんなに云うない。今にあれが銭を儲けるようになったら、借金を返えしてくれるし、うら等も楽が出来るわい。」為吉はそう云って縄を
綯
(
な
)
いつゞけた。
老夫婦
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
夜は
縄
(
なわ
)
を
綯
(
な
)
い草鞋を編み、その他の夜綯いを楽しみつ、夜綯いなき夜はこの家を訪い、温かなる家内の快楽を
己
(
おの
)
がもののごとく
嬉
(
うれ
)
しがり、夜
深
(
ふ
)
けぬ間に
還
(
かえ
)
りて寝ぬ
空家
(新字新仮名)
/
宮崎湖処子
(著)
今でも、庄内地方の百姓の家では、秋の末の或一日だけ、庭で縄を
綯
(
な
)
ひ、其が済むと、家に這入る。此を行ふには、庭へ竈を造つて、其日一日は、庭で暮すらしい。
大嘗祭の本義
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
……そこで吾輩はモウ一度、引返して、各道の判検事や警察官に、
爆弾船
(
ドンぶね
)
の検挙、裁判方法を講演してまわるという狼狽のし方だ。泥棒を見て縄を
綯
(
な
)
うのじゃない。
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その手は手早く麻を
綯
(
な
)
っていった。私より巧みであった。私はねんごろなものの伝わってくるのを覚えた。私はその人の
躯
(
からだ
)
を身近かに感じ、女々しい感情に催された。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
二時
(
やつ
)
過ぎの
陽
(
ひ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に一本ある柿の木を染めていた。一人の老人が
庭前
(
にわさき
)
の
蓆
(
むしろ
)
の上で縄を
綯
(
な
)
うていた。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
せめて
小遣
(
こづか
)
ひ取りに
草鞋
(
わらじ
)
でも
綯
(
な
)
へといふのに、それもしねえで毎日毎晩ごろ/\してゐやあがる。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
検事長閣下が絞首索を
綯
(
な
)
い、首斬斧を
研
(
と
)
ぎ、処刑台に釘を打ち込まんがために立ち上った時に、裁判官は、ずうっと見𢌞していた眼を元へ戻し、自分の座席で
反
(
そ
)
り返って
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
職工が煉瓦の型に固めあげた粘土を、崩れないように陽で乾しながら、
箆
(
へら
)
で敲き固めるのだった。煉瓦を縛る縄を
綯
(
な
)
って売る者もあった。馬を持っている男達は駄賃に出た。
黒い地帯
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「いけない。ひとが一生けん命
綯
(
な
)
ったものをだまって持って行く。町の者みんな
斯
(
か
)
うだ。」
車
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
徳は孤ならず必ず隣あり、と読み上げ、下男の九助は、破れた
菰
(
こも
)
をほどいて
銭差
(
ぜにさし
)
を
綯
(
な
)
えば、下女のお竹は、いまのうちに朝のおみおつけの実でも、と重い
尻
(
しり
)
をよいしょとあげ
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
平和と戦とが一つに
綯
(
な
)
われて、そこに輝かしい生命の交響楽が作られるであろう。そういうところまでたどりついたジャン・クリストフは、すでに新らしき日を肩に
荷
(
にな
)
っていた。
ジャン・クリストフ:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
毎晩の囲炉裏ばたを
夜業
(
よなべ
)
の仕事場とする佐吉はまた、百姓らしい大きな手に
唾
(
つば
)
をつけてゴシゴシと
藁
(
わら
)
を
綯
(
な
)
いながら、
狸
(
たぬき
)
の人を化かした話、
畠
(
はたけ
)
に出る
狢
(
むじな
)
の話、おそろしい山犬の話
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
あらゆる感情の
綯
(
な
)
い交じったその日その日が、
有
(
あ
)
りの
儘
(
まま
)
に私達の在る限り、胸の中にたたまれてあるとしたら、それを負うて歩まねばならぬ人の運命はいかに悲惨なものだろうか。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
隨分泥棒を
捕
(
つか
)
まへて繩を
綯
(
な
)
ふと云ふやうな話であるが、然も其時は事實あれ程の
急劇
(
きふげき
)
な變化、即ち三年後に江戸が東京になる程の變化が來やうとは思はなかつたので、悲しくても
兵馬倥偬の人
(旧字旧仮名)
/
塚原渋柿園
、
塚原蓼洲
(著)
謀計と性欲との二つを
綯
(
な
)
い交ぜにして、人を
倦
(
う
)
ませないように筋を運ばせて
行
(
ゆ
)
くのが、作者の唯一の手柄である。舞台に注ぐ目だけは、倦まないだろうと云うことが想像せられる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
青銭
(
あをぜに
)
は穴あき
銭
(
ぜに
)
よ、字のおもて寛永通宝、裏に波文久永宝、よく数へよく刺し
貫
(
ぬ
)
くと、手もすまにそろへて締むと、幼な児や息づかし我、
青太藺
(
あをふとゐ
)
綯
(
な
)
ひし小縄の、
撚
(
よ
)
りつよきその緒くくりて
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「泥棒を見て繩を
綯
(
な
)
ふことをしてをるのぢや——
間
(
ま
)
に合はんぢやないか?」
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
午
(
ひる
)
になり、島中の誰彼が木蔭や家の中の竹床の上でうつらうつら午睡をとる時も、此の男ばかりは、家内の清掃に、小舎の建築に、
椰子蜜
(
やしみつ
)
採りに、椰子縄
綯
(
な
)
いに、屋根
葺
(
ふ
)
きに、家具類の製作に
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
反つてそれから来る温さに感謝して、秋の、冬の長い夜な夜なを、繩を
綯
(
な
)
うたり、
草鞋
(
わらぢ
)
を編んだりして、夜を
更
(
ふ
)
かさねばならなかつた。家賃は四月目五月目位から
滞
(
とどこほ
)
り出した。畳はすり切れた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
嘉門次は炉辺で火を
焚
(
た
)
きながら縄を
綯
(
な
)
うている、どうも登山の支度をしてはいないらしい、何だか
訝
(
いぶか
)
しく思うて聞いて見ると、穂高の案内なら昨夜の
中
(
うち
)
に伝えて下さればよかった、と快く承知し
穂高岳槍ヶ岳縦走記
(新字新仮名)
/
鵜殿正雄
(著)
邪心を以て見るが故に、藁を
綯
(
な
)
うて造りたる縄も蛇体と見えるのぢや。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
太い強い針金をいく本も縄のように
綯
(
な
)
って、河の両岸へ渡してある。
惨事のあと
(新字新仮名)
/
素木しづ
(著)
ネパール語の
俄稽古
(
にわかげいこ
)
幸いにセゴーリの郵便局長をして居るベンガル人が英語も知って居ればネパール語も知って居りますからその人に
就
(
つ
)
いて学び始めた。まあ盗人を捉えて繩を
綯
(
な
)
うような話です。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
いつも
莞爾々々
(
にこにこ
)
して、亡くなる前日まで
縄
(
なわ
)
を
綯
(
な
)
うたりせっせと働いて居ました。入棺前、別れに往って見ると、
死顔
(
しがお
)
もにこやかに、生涯労働した手は
節
(
ふし
)
くれ立って土まみれのまま合掌して居ました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
辻町は、欠伸と嚔を
綯
(
な
)
えたような掛声で
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
生れつき善良さと悪意のない観察眼とを半ばずつ
綯
(
な
)
い交ぜながら愛想よく多代子が、若い女客をもてなしている。さよ子は、時々
夜の若葉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
必要
(
ひつえう
)
な
繩
(
なは
)
は
卯平
(
うへい
)
が
丈夫
(
ぢやうぶ
)
に
綯
(
な
)
つて
置
(
お
)
いた。それから
壁
(
かべ
)
を
塗
(
ぬ
)
るのには
間
(
あひだ
)
を
措
(
お
)
いて二三
日
(
にち
)
かゝつた。
勘次
(
かんじ
)
も
有繋
(
さすが
)
に
勞力
(
らうりよく
)
を
惜
(
をし
)
まなかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と、その時、何んたる怪異であろう! 坐っている道了塚の下から、大岩を貫き、銀の一本の線のような、恐怖と悲哀とを
綯
(
な
)
い
雑
(
ま
)
ぜにした男の声が
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さるを履を
綯
(
な
)
えばとて賤しみ、蓆を織りたればとて
蔑
(
さげす
)
むなど、そんな眼をもって、世を観、人生を観、よくも一国の
政事
(
まつりごと
)
に参じられたものではある。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いま鮮やけく
綯
(
な
)
えるものゝように、心から
紡
(
つむ
)
ぎ出されて来て、肉体の感覚にまで結ばり
綾取
(
あやど
)
られたのを感じると
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
種々の階音が
綯
(
な
)
い交ざって、両側の山壁を打ち、こだまを重ね、巨大な積量の響音となって、満谷の空気を大ゆりにゆりつつ、はるかな天空さして逸出してゆく。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
それは両岸に高く材木を三本組合せて立て、それに
藤蔓
(
ふじづる
)
を
綯
(
な
)
って引張って置き、それに小さな
針鉄
(
はりがね
)
の輪を
箝
(
は
)
めて、其輪に綱を結んで、田船の
舳
(
みよし
)
に繋いで有るのだ。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
綯
漢検1級
部首:⽷
14画
“綯”を含む語句
綯交
綯総
令狐綯
綯索
縄綯
肝心綯
観世綯