“庭前”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
にわさき73.6%
ていぜん20.8%
にはさき5.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
ちょうど秋の夜で、中秋の月が綺麗であるから、李汾は庭前にわさきを歩いた後に、琴を弾いていると、外の方で琴に感心しているような人の声がした。
(新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ねえさんは、すわって、仕事しごとをしながら、ときどきおもしたように、たる庭前にわさきました。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、何だか沈着おちついても居られないので、市郎は洋服身軽に扮装いでたって、かく庭前にわさき降立おりたった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
庭前にわさきには、枝ぶりのいい、おおきな松の樹が一本、で、ちっとも、もの欲しそうにこしらえた処がありません。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悪い奴が多いから、庭前にわさきの忍び廻りは遠山權六で、雨が降っても風が吹いても、嵐でも巡廻みまわるのでございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ちょうどなつあつに、庭前ていぜんみづをまけばにわかにすゞしさがかんぜられるのとおなじりくつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たれにか棄てられけむ、一頭いつとう流浪るらうの犬の、予が入塾の初より、数々しば/\庭前ていぜん入来いりきたり、そこはかと𩛰あさるあり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
垢染あかじみた布団ふとんひややかに敷いて、五分刈ごぶがりが七分ほどに延びた頭を薄ぎたない枕の上によこたえていた高柳君はふと眼をげて庭前ていぜん梧桐ごとうを見た。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それと同時に室の中に銀色の眼をきろきろと光らした一ぴきの大きながまが見えて、それがぴょんぴょんと飛んで縁側から飛びおり、暗い庭前ていぜんの池の中へどぼんと云う重い音をさして飛び込んだ。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うよりはや天狗てんぐさんは電光いなづまのように道場どうじょうからしたとおももなく、たちまちするすると庭前ていぜんそびえている、一ぽんすぎ大木たいぼくあがりました。
彼はにはかに心着きて履物はきものあらため来んとて起ちけるに、いで起てる満枝の庭前にはさきの縁に出づると見れば、傱々つかつかと行きて子亭はなれの入口にあらはれたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、元二げんじ團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから庭前にはさき𢌞まはつた、座敷ざしき御新造ごしんぞことあらかじつてのうへで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蠅叩きを片手に持つて、うるさく手足に觸れる蠅を叩き潰し或ひは追ひ拂ひながら、「人間の幸福は日光の中に舞つてゐる蠅のやうなものだ。」といつたある歐洲文學者の言葉に感歎したり(之れは先日讀んだ谷崎精二君の小説の中で學んだ言葉)蟲の音が繁くなつて庭前にはさき女郎花をみなへしが盛んに咲いたのを見聞きしながら何時の間に高原が秋になりかけたのかと