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庭前
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にわさき
ふりがな文庫
“
庭前
(
にわさき
)” の例文
それから写真を二枚
撮
(
と
)
って貰った。一枚は机の前に坐っている平生の姿、一枚は寒い
庭前
(
にわさき
)
の
霜
(
しも
)
の上に立っている普通の態度であった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はいよいよ不思議に思いながら見るともなしに
庭前
(
にわさき
)
の方へ眼をやった。大きな入道姿の者が眼をぎらぎらと光らして衝立っていた。
魔王物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
折しも
弥生
(
やよい
)
の桜時、
庭前
(
にわさき
)
の
桜花
(
おうか
)
は一円に咲揃い、そよ/\春風の吹く
毎
(
たび
)
に、一二輪ずつチラリ/\と
散
(
ちっ
)
て
居
(
お
)
る処は得も云われざる風情。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あとをも見ずしていっさんに走り出ずれば、
心急
(
こころせ
)
くまま手水口の縁に横たわる
躯
(
むくろ
)
のひややかなる
脚
(
あし
)
に
跌
(
つまず
)
きて、ずでんどうと
庭前
(
にわさき
)
に
転
(
まろ
)
び
墜
(
お
)
ちぬ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうそう
私
(
わたくし
)
が
現世
(
げんせ
)
の
見納
(
みおさ
)
めに
若月
(
わかつき
)
を
庭前
(
にわさき
)
へ
曳
(
ひ
)
かせた
時
(
とき
)
、その
手綱
(
たづな
)
を
執
(
と
)
っていたのも、
矢張
(
やは
)
りこの
老人
(
ろうじん
)
なのでございました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
雪風
(
ゆきかぜ
)
に熱い頬を吹かせながら、お葉は
快
(
いい
)
心地
(
こころもち
)
に
庭前
(
にわさき
)
を眺めていると、松の樹の下に何だか白い物の
蹲踞
(
しゃが
)
んでいるのを
不図
(
ふと
)
見付けた。どうやら人のようである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
能登守はそれと
頷
(
うなず
)
いている時に、暫らく静かにしていた屋根の上の足音がまた、ミシリミシリと聞えはじめました。つづいて
摚
(
どう
)
と
庭前
(
にわさき
)
へ落ちる物の音がしました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
姉
(
ねえ
)
さんは、すわって、
仕事
(
しごと
)
をしながら、ときどき
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
したように、
日
(
ひ
)
の
当
(
あ
)
たる
庭前
(
にわさき
)
を
見
(
み
)
ました。
葉
(
は
)
の
黒
(
くろ
)
ずんだざくろの
木
(
き
)
に、
真
(
ま
)
っ
赤
(
か
)
な
花
(
はな
)
が、
点々
(
てんてん
)
と
火
(
ひ
)
のともるように
咲
(
さ
)
いていました。
ある夏の日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
じじと鳴く
庭前
(
にわさき
)
の、虫の声さえ手に取るように聞えて来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
沙利
(
じゃり
)
を敷いた路は思うように歩けなかった。左側の
街路
(
とおり
)
に沿うた方を低い土手にして
庭前
(
にわさき
)
を
芝生
(
しばふ
)
にしてある洋館の横手の方で犬の声がした。
女の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
更に
迂回
(
うかい
)
して
柴折戸
(
しおりど
)
のある
方
(
かた
)
に
行
(
ゆ
)
き、言葉より先に笑懸けて、「暖き飯一
膳
(
ぜん
)
与えたまえ、」と
巨
(
おおい
)
なる鼻を
庭前
(
にわさき
)
へ差出しぬ。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、何だか
沈着
(
おちつ
)
いても居られないので、市郎は洋服身軽に
扮装
(
いでた
)
って、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
庭前
(
にわさき
)
へ
降立
(
おりた
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「そうじゃ、近いうちおのおの方はじめ有志のお方に、躑躅ヶ崎の拙者屋敷へお集まりを願おう、その
庭前
(
にわさき
)
において右の犬を
験
(
ため
)
させて御覧に入れたい、これも一つの学問じゃ」
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
悪い奴が多いから、
庭前
(
にわさき
)
の忍び廻りは遠山權六で、雨が降っても風が吹いても、嵐でも
巡廻
(
みまわ
)
るのでございます。天気の
好
(
よ
)
い時にも
草鞋
(
わらじ
)
を
穿
(
は
)
いて、お馬場口や藪の中を歩きます。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
宗近君は返事をやめて、
欄干
(
らんかん
)
の
隙間
(
すきま
)
から
庭前
(
にわさき
)
の植込を
頬杖
(
ほおづえ
)
に見下している。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
落城後
(
らくじょうご
)
私
(
わたくし
)
があちこち
流浪
(
るろう
)
をした
時
(
とき
)
にも、
若月
(
わかつき
)
はいつも
私
(
わたくし
)
に
附添
(
つきそ
)
って、
散々
(
さんざん
)
苦労
(
くろう
)
をしてくれました。で、
私
(
わたくし
)
の
臨終
(
りんじゅう
)
が
近
(
ちか
)
づきました
時
(
とき
)
には、
私
(
わたくし
)
は
若月
(
わかつき
)
を
庭前
(
にわさき
)
へ
召
(
よ
)
んで
貰
(
もら
)
って、この
世
(
よ
)
の
訣別
(
わかれ
)
を
告
(
つ
)
げました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
姉
(
ねえ
)
さんは、
庭前
(
にわさき
)
のつつじの
枝
(
えだ
)
に、はちの
巣
(
す
)
を
見
(
み
)
つけました。
ある夏の日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「……奇怪至極でござる、
庭前
(
にわさき
)
で急に婦人の声がするものだから、すぐ庭へ出て見ても、人の影も形もござらぬ……」
女賊記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庭前
(
にわさき
)
には、枝ぶりのいい、
大
(
おおき
)
な松の樹が一本、で、ちっとも、もの欲しそうに
拵
(
こしら
)
えた処がありません。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新一はそのまま
庭前
(
にわさき
)
のほうへ歩いて往った。破れた竹垣の傍には穂のあぎた芒が朝風にがさがさと葉を鳴らしていた。
狐の手帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
取りまわした山々の
末
(
すそ
)
かけて、海と思うあたりまで、
一
(
ひとつ
)
ずつ蛙が鳴きますばかり、時々この二階から吹くように、峰をおろす風が、
庭前
(
にわさき
)
の松の
梢
(
こずえ
)
に、
颯
(
さっ
)
と鳴って渡るのです。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庭前
(
にわさき
)
に
這
(
は
)
っていた尻尾の切れていた蛇は、
楓
(
かえで
)
の木へ登りかけた。平吉を呼びに往っていた定七は
縁側
(
えんがわ
)
へ引返して来て、広栄とともに蛇に注意していた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そこをあちこち、
覗
(
のぞ
)
いたり、
視
(
み
)
たり、
立留
(
たちどま
)
ったり、考えたり、
庭前
(
にわさき
)
、垣根、格子の中。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庄造は不審に思って
衝
(
つ
)
と窓の障子に手をかけたが、
何人
(
たれ
)
か人だったら気はずかしい思いをするだろうと思ったので、其のまま
庭前
(
にわさき
)
へ廻って窓の外を見た。
狸と俳人
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
とおのが手足を、ばたばたと遣りながら、お
目通
(
めどおり
)
、
庭前
(
にわさき
)
で
斬
(
き
)
られたのさ。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その時、
庭前
(
にわさき
)
の樹木へ数十疋の猿が来て啼きだした。それを見ると袁氏は非常に哀しいような顔をしはじめた。
碧玉の環飾
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ト玄関から、
庭前
(
にわさき
)
かけて、わやわやざわざわ、物音、人声。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
一昨日
(
おととい
)
の晩、某家の
庭前
(
にわさき
)
に板女が立っていたので、そこの主人が刀を
執
(
と
)
って追っかけたが、そのまま見えなくなった、きっと傍のはめ板へ引附いていたろう」
女賊記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庭の
前
(
さき
)
は築地になって用心を厳しくしているので、少年達が入って来られる隙はない。それに夜になって人の家の
庭前
(
にわさき
)
などへ来て角力なんか執るものではない。
庭の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして玄関から
庭前
(
にわさき
)
へ飛びおりた。勝行と北代の二人は、次郎兵衛を追って往って庭前で斬り結んだ。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、
己
(
じぶん
)
の行為がばかばかしくなって来た。で、引返そうとしていると
庭前
(
にわさき
)
の方に人の跫音がした。
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
肥った女はちょうど讓の前の方へ来てバケツを置き、
庭前
(
にわさき
)
の方へ向いて犬かなんかを呼ぶように口笛を吹いた。庭の方には
天鳶絨
(
びろうど
)
のような草が青あおと生えていた。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
二時
(
やつ
)
過ぎの
陽
(
ひ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に一本ある柿の木を染めていた。一人の老人が
庭前
(
にわさき
)
の
蓆
(
むしろ
)
の上で縄を
綯
(
な
)
うていた。
怪人の眼
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
為作は
庭前
(
にわさき
)
の日陰に莚を敷いて其処で仕事をしていた。源吉は為作の傍にいたりいなかったりした。
放生津物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
海から昇った
真紅
(
まっか
)
な
朝陽
(
あさひ
)
が長者の家の
棟棟
(
むねむね
)
を照らしておりました。
背後手
(
うしろで
)
に縛られた壮い男は、見張の男に
引摺
(
ひきず
)
られて
母屋
(
おもや
)
の
庭前
(
にわさき
)
へはいって来て、土の上に腰をおろしました。
宇賀長者物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
窈娘はその飲物を取って
庭前
(
にわさき
)
に遊んでいる犬の前へ捨てた。犬は喜んでそれをべろべろと嘗めはじめたが、皆まで嘗めないうちに唸声を立ててひっくりかえって死んでしまった。
虎媛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
夕方まで
庭前
(
にわさき
)
の
楓
(
かえで
)
の青葉を吹きなびけていた西風がぴったりないで静かな晩であった。
雀が森の怪異
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朝になって水の男の云った
詞
(
ことば
)
をおもいだしたが、気の広い勘作はすぐ忘れてしまって漁に往き、
午飯
(
ひるめし
)
に帰って飯をすまし、
庭前
(
にわさき
)
の柿の
立木
(
たちき
)
に
乾
(
ほ
)
してある
投網
(
とあみ
)
の破れ目を
繕
(
つくろ
)
うていると
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
久武内蔵助の邸では、五つか六つになった末の男の子が、庭へ出て、乳母や
婢
(
じょちゅう
)
に
囃
(
はや
)
されて遊んでいた。小供は乳母の傍からちょこちょこと離れて、
庭前
(
にわさき
)
の松の木の根元のほうへ往った。
八人みさきの話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
鹿を初め獲物の兎や雉などは、
庭前
(
にわさき
)
の黄色くなりかけた芝草の上に置かれた。
不動像の行方
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
書生は
扉
(
ドア
)
を開けて出ようとしてふり返った。主翁も引きずられるように
跟
(
つ
)
いて往った。主翁は
庭前
(
にわさき
)
を歩いていた。庭には池の水が暗い中に
鼠
(
ねずみ
)
色に光っていた。池の
縁
(
へり
)
を廻ると
離屋
(
はなれ
)
の
縁側
(
えんがわ
)
になった。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ちょうど秋の夜で、中秋の月が綺麗であるから、李汾は
庭前
(
にわさき
)
を歩いた後に、琴を弾いていると、外の方で琴に感心しているような人の声がした。李汾は夜更けにこんな処へ
何人
(
だれ
)
が来たろうと思って
豕
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
篠原の主人は思い通り蛇が打てたので、大に喜んでやはり猟師仲間の親類の男を呼んで来て、それに手伝ってもらって皮を剥ぎ、それを持って帰って
庭前
(
にわさき
)
の立樹と立樹の間に長い竹を渡してかけた。
蛇怨
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何かの拍子にふと庭の方を見ると、藁屑の散らばっている
庭前
(
にわさき
)
に一羽の雀がいて、それが地の上に転んだり羽を動かして起きあがったり、何か体へ虫でもついていてそれを落しているようにしていた。
雀の宮物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庭前
(
にわさき
)
で
小児
(
こども
)
の対手になって遊んでいた長者は、之を見ると
長者
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
庭
常用漢字
小3
部首:⼴
10画
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
“庭前”で始まる語句
庭前徘徊