“桜花”のいろいろな読み方と例文
旧字:櫻花
読み方(ふりがな)割合
さくら42.9%
おうか17.9%
はな17.9%
さくらばな10.7%
あうくわ7.1%
ばな3.6%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
今朝良人の見ていた軒の桜花さくらがこぼれてくる。ゆうべ、良人と聞いたであろう屋敷の裏の川波の音が、今宵もひたひたと石垣を打っている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今井君の骨を抱いて、その忘れ形見達と共に、僕が美作みまさか山中の故郷へ帰ったのは、桜花さくらに早い大正六年四月上旬の事であった。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
と、矢立から筆を出して、自身の扇子へ、さらさらと、一桜花さくらと、一首の歌を書いてくれた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてあたりが鏡だったせいか、まるで、この部屋一杯に蛾が無類に充満し、あたかも散りしきる桜花おうかのように、春の夢の国のように、美しき眺めであった。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
折しも弥生やよいの桜時、庭前にわさき桜花おうかは一円に咲揃い、そよ/\春風の吹くたびに、一二輪ずつチラリ/\とちっる処は得も云われざる風情。
最初河水かすい汎濫はんらんを防ぐために築いた向島の土手に、桜花おうかの装飾を施す事を忘れなかった江戸人の度量は、都会を電信柱の大森林たらしめた明治人の経営に比して何たる相違であろう。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
午さがりの空は、うす寒く曇って、吹上苑ふきあげをつつむ桜花はなの蔭に、チチ、チチ、と小禽ことりの音はあるが、何となく浮いていない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おぼろな夜の雲を見ているのか、桜花はなの梢を見つめているのか、内蔵助は、背を樹にもたせかけ、顔を仰向けたまま、いつまでも、眸を下に落さない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白粉おしろい焼けのような、荒淫こういんにただれた顔に桜花はなの映ろいが明るく踊っているのが、男だけにへんに気味が悪い。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
桜花さくらばな軒場のきばに近しにあつるかみそりの冷えのうすらさびしき
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
桜花さくらばなちりてくされりぬかるみに黒く腐れる椿つばきがほとり
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
立ち並ぶかひこそなけれ桜花さくらばな松に千歳ちとせの色はならはで
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
とよせた老車夫はかぢりながらよた/\歩いて橋を渡るやいな桜花あうくわにぎはひをよそ
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
春雲しゆんうんつきめて、よるほの白く、桜花あうくわたんとして無からむとす。かはづの声いと静かなり。
花月の夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
軒堤燈のきぢょうちんがすうっとならんで、つくり桜花ばなや風鈴、さっき出た花車だしはもう駒形こまがたあたりを押していよう。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)