“嗚咽”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
おえつ83.6%
をえつ9.9%
むせ1.1%
すゝりなき0.8%
ああ0.4%
お えつ0.4%
すすりあげ0.4%
すすりな0.4%
すすりなき0.4%
すゝりな0.4%
そらなき0.4%
0.4%
なきじゃくり0.4%
むせび0.4%
むせびなき0.4%
むせぶ0.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
時に依って万歳の叫喚で送られたり、手巾ハンカチで名残を惜まれたり、または嗚咽おえつでもって不吉なはなむけを受けるのである。列車番号は一〇三。
列車 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ゆがんだ顏に嗚咽をえつが走つて手を擧げて指さす、少しばかりの空地の隅には、筵を掛けたまゝの、竹松の死體が轉がつて居るではありませんか。
母は、塗りの褪せた箪笥にもたれかかり、空になった欝金うこんの財布を、ハンケチの様に目に当てて嗚咽むせった。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
あゝ——お志保だ——お志保の嗚咽すゝりなきだ——斯う思ひ附くと同時に、言ふに言はれぬ恐怖おそれ哀憐あはれみとが身をおそふやうに感ぜられる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
嗚咽ああ、大空の馳使はせづかひ、添はゞや、なれにわが心
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
眼をひらくと、女はうつ伏して嗚咽お えつしていた。俺は何とも云えない可憐な気持に打たれた。女を抱き起して、唇を与えた。
苦力頭の表情 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
お隅は顔を外向そむけて、嗚咽すすりあげました。一旦なおりかかった胸の傷口が復た破れて、烈しく出血するとはこの思いです。残酷な一生の記憶おもいでは蛇のように蘇生いきかえりました。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
止め度もなく嗚咽すすりないた後で、英国のある老政治家と少女との恋のロオマンスについて彼女特得の薔薇色ばらいろの感傷と熱情とで、あたかもぽっと出の田舎ものの老爺に
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
遣瀬ないように身を悶えて、お熊は嗚咽すすりなきの顔をお菊の膝の上に押付けると、夜寒に近い此頃の夜にも奉公人の寝衣ねまきはまだ薄いので、若い女房の熱い涙はその寝衣を透して若い下女の柔かい肉に滲んだ。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あゝ声を揚げて放肆ほしいまゝに泣いたなら、と思ふ心は幾度起るか知れない。しかし涙は頬をうるほさなかつた——丑松は嗚咽すゝりなくかはりに、大きく口を開いて笑つたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼は嗚咽き出した。北は何も言へなかつた。
二人の男 (新字旧仮名) / 島田清次郎(著)
昼のままの黄八丈に、赤い帯が娘らしく、その嗚咽なきじゃくりも限りなく憐れを誘います。
感激の嗚咽むせびが、静かに時間の軸の上を走っていった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
小さい嗚咽むせびなきを残して、お園は背を見せます。
なぐるぞ」、哄笑、激語、悪罵、歓呼、叱咤、つやある小節こぶしの歌の文句の腸を断つばかりなる、三絃の調子の嗚咽むせぶが如き忽ちにして暴風、忽ちにして春雨しゆんう、見来れば、歓楽の中に殺気をこめ
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)