嗚咽むせ)” の例文
母は、塗りの褪せた箪笥にもたれかかり、空になった欝金うこんの財布を、ハンケチの様に目に当てて嗚咽むせった。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
嗚咽むせびかえっているのです、それを見た武の顔はほんとうに例えようがありません、額に青筋を立てて歯を喰いしばるかと思うと、泣き出しそうな顔をして眼をまじまじさせます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
僕が夢中になって問返すと、母は嗚咽むせび返って顔を抑えて居る。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)