)” の例文
感激もなしにバタバタとぎ倒おされ、千切ちぎられ、引裂かれ、腐敗させられ、屍毒化させられ、破傷風化させられて行くことである。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「パルドン、パルドン」の百万陀羅まんだら。これに反してタヌは、群集の口が増せば増すほどいよいよ活況を呈し、四面八方にぎ立てる。
抜き落しに、一刀、下の影をサッとぐと、その勢いと、放された不意とで、ドンと土塀の向うがわへ、もんどりうって転げ落ちた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卯平うへい何時いつたれがさうしたのかむしろうへよこたへられてあつた。かれすくな白髮しらがはらつていた火傷やけどのあたりをうてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
規矩男は小戻りして、かの女から預っているパラソルで残忍に草のつるぎ破り、ぐんぐん先へ進んだ。かの女はあとを通って行った。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「走りかかってちょうと切れば」と米八はうたいがかりに身振りをした、「そむけて右に飛びちがう、取り直して裾をぎはらえば」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
よく切れる鎌でいで行くのは爽快そうかいなものである。また草の根をぶりぶりかき切るのも痛快なものである。かゆい所をかくような気がする。
路傍の草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もしも本当に斬る気になって、翻然ほんぜんと飛び出して来たならば、そんな五人の遊び人などは、一ぎ二薙ぎで斃されるであろう。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
反徒らは城壁の上にっていて、死体や負傷者らの間につまずき急斜面に足を取られてる兵士らを、ねらい打ちにぎ倒した。
「しまった」と、三郎兵衛が太刀を引こうとする隙に、市九郎は踏み込んで、主人の脇腹を思うさま横にいだのであった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
剛力で斬りつける長刀にしばし敵を支えていたが、おめいて斬りかかる敵の胴を見事にいで二つにしたとき、後へ廻った敵兵の刃に死んだ。
げば薙ぐほど自然にぎすまされる大鎌である。それを見まいとしても見ずにはいられない。それを思うまいとしても思わずにはいられない。
群がる天兵を打倒しぎ倒し、三十六員の雷将をひきいた討手うっての大将祐聖真君ゆうせいしんくんを相手に、霊霄殿りょうしょうでんの前に戦うこと半日余り。
大樹を傾け梢をぎ倒しているが、そのややしばし後になると、小法師岳の木々が、異様に反響して余波に応えていた。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その中にようやく適当な入口を見出し、人夫が草をぎ払った後からつづいて谷を越え、熔岩流のただ中にじ登って見た。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
「ハムラ! こんなに凄まじく木をひし折ったり、草をぎ倒しているのは類人猿ポンゴーの喧嘩の外にはございませんです」
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
せがれはよくよくぎたる大鎌を手にして近より来たり、まず左の肩口を目がけてぐようにすれば、鎌の刃先はさきうえ火棚ひだなっかかりてよくれず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この姿勢で充分に使わせると、左右をぎ立てることができます。近寄るのを追払って寄せつけないことができます。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ぢやあ、もう一番!」勝負事で愉快に昂奮かうふんしてゐるらしい声を、その生徒はその儘部屋のなかへ向けてゐた。「せめて四人はぎ倒さなくつちや!」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
が、相手は隻腕、何ほどのことやある?……と、タ、タッ、ひょうッ! 踏みきった森徹馬、敵のふところ深くつけ入った横ぎが、もろにきまった——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
身をひるがえしつつ襲いかかろうとした猛犬をさッと一閃いっせんぎ倒したかと見えるや浴びせ切りに切りすてました。
こまだけであろう頂上の禿げた大きな山の姿が頭の上にあった。その山のいただきの処には蒼白あおじろい雲が流れていた。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
万乗の君主金冠をおとし、剃刀ていとうの冷光翠髪すいはつぐ。悲痛何ぞえんや。呉王ごおうの教授揚応能ようおうのうは、臣が名度牒どちょうに応ず、願わくは祝髪してしたがいまつらんともうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と、いで来るのを、かわしてやりすごすと同時に、左手の拳がパッと伸びて、十分に、脾腹ひばらにはいった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そこだけの一かくを取りあえず伐木して、下草をぎ払った。それが主君邦夷の来着を待つ用意であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「今度またいたずらをしおったら、すぐに追い掛けてとらまえて、あの鎌で向こう脛をいでくるるわ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
サツといで來る太刀、辛くもかい潜つた平次の手からは、得意の投げ錢が久し振りに飛びました。小さいが、目方のある四文錢。夜風をつて武士の顎へ、額へ、鼻の頭へ。
骨を切る音が鈍く響いて、横にいだ太刀の光が、うすやみをやぶってきらりとする。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
およそ薙刀をひらめかしてぎ伏せようとした当の敵に対して、その身構えが、背後うしろむきになって、堂の縁を、もの狂わしく駆廻ったはおろか、いまだに、振向いても見ないで、胸を
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
竹のステッキで足もとの草をぎ倒し、歯がみをしている太宰の姿よりは、「夜ふけと梅の花」の中の、電信柱の下で前後左右によろめきながら、自分をおびやかす質屋の番頭の幻影に対し
井伏鱒二によせて (新字新仮名) / 小山清(著)
殿村は女竹のステッキで、朝露にしめった雑草を無意味にはらいながら答えた。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
竹のステッキで、海浜の雑草をぎ払い薙ぎ払い、いちどもあとを振りかえらず、一歩、一歩、地団駄踏むようなすさんだ歩きかたで、とにかく海岸伝いに町の方へ、まっすぐに歩いた。
黄金風景 (新字新仮名) / 太宰治(著)
又木はぎ倒され、作物は根こそぎにされ、——だが、それはやがて過ぎて行く。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
それと同時に、バリバリバリバリッと、竹を割るような鋭い音が一行をいだ。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
あらゆる命令が名前としてつけてあった——『て』だの、『ののしれ』だの、『飛びまわれ』だの、『火事』だの、『ぎたおせ』だの『書きなぐれ』だの『焼け』だの、『がせ』だの
水戸はドレゴの説をくつがえすために、色々と事実をあげて反駁はんばくした。がドレゴはいつになく水戸のいうことを聴かず、片端からあべこべの実例をもって水戸の甘い説をたおしていった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
その竹藪はぎ倒され、逃げて行く人の勢で、みちが自然とひらかれていた。見上げる樹木もおおかた中空でぎとられており、川に添った、この由緒ゆいしょある名園も、今は傷だらけの姿であった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ひだりへ折れて血塔の門に入る。今は昔し薔薇しょうびらんに目に余る多くの人を幽閉したのはこの塔である。草のごとく人をぎ、にわとりのごとく人をつぶし、乾鮭からさけのごとくしかばねを積んだのはこの塔である。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鋭い利鎌とかまで草でもぐやうにたふされ、皮を剥がれ、傷つけられ、それから胴切にされてしまふ、今までは私の宅の周囲も、森林で厚肉の蒼黯あをぐろ染色硝子ステインドグラスを立てゝゐたが、一角だけを残して
亡びゆく森 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
そうして、剣を引くと、「卑弥呼、卑弥呼。」と呼びながら、部屋の中を馳け廻り、布被ぬのぶすまを引き開けた。玉簾を跳ね上げた。庭園へ飛び下りて、はぎ葉叢はむらたおしつつ広場の方へ馳けて来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
地も空も蒼然そうぜんれ、時々坊岬灯台の光の束が、空をいで走る。石段も暗く、手をつなぎ合って、そろそろと降りた。しめった掌を離すと、女は道を降り、ダチュラの花を四つ五つんで来た。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ここかしこに無数の群集がいて、拳固げんこを差し出し、怒鳴って真赤まっかになっていたが、しまいには本気でなぐり合うのだった。共和政府は民衆にびていた。そして次には、民衆をぎ払わせていた。
若草をいで来る風が、得ならぬ春のを送ってかおかすめる。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
隣りの地内の奥まったあたりで、竹藪たけやぶぎたてるような音がしていたが、そのうちに、よく通る声で、だれかがこちらへ呼びかけた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
鈴鳴子すずなるこはりんりん鳴る。彼は、脇差を抜いて、身にからむ荒縄を、切っては泳ぎ、いでは泳ぎ、ようやく滝川の対岸へ手をかけた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
てえか、そんでもたえしたこともねえから心配しんぺえすんなよ」おつぎははらはれたきたな卯平うへい白髮しらがへそつとあてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
吹雪は大きな力で枯林を襲い、梢を揺りたて、地を吹きまくり、あらゆるものを灰色の翼でぎたてながら去って行く。
夜明けの辻 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
剛力に任せて水車のように打ちふるう大長刀で馬の足をがれた平家の勢少くなく、討ち果された兵も多く、永覚はしばし少勢でここを支えていたが
それと見て取った七福神組は、一斉に刀を振り上げたが、廻わりながらのぎの手だ、サ——ッとばかりに振り下ろした。すぐに起こったは悲鳴である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
右から左へいだ左腕の剣を、そのままくうあずけて、その八の字を平たく押しつぶしたような恰好のまま——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)