)” の例文
食用蛙がやかましくきたててゐる。ビンロウや、ビルマネムの植込みのなかへ自動車を置いて、一行はホテルの部屋へ案内された。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
一羽のからすが、彼と母とのすすく声に交えて花園の上でき始めた。すると、彼の妻は、親しげな愛撫の微笑を洩らしながらつぶやいた。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それは、驢馬が帰って来ながら、ありったけの声を振絞って、なに平気だ、なに平気だと、声がれるほどき続けているのである。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
しかしもう梢から梢へくぐり抜ける小鳥たちの影には春らしい敏捷びんしょうさが見られた。暮方になると、近くの林のなかできじがよくいた。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
種々な小禽ことりの声が、ひのきの密林にきぬいていた。二人の頭脳は冷たく澄み、明智あけちしょうを落ちて来てから初めてまことわれにかえっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むさゝびからぬがきツ/\といつてむねへ、やがおよ小山こやまほどあらうと気取けどられるのがむねすほどにちかづいてて、うしいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その夜、奥の院に仏法僧鳥ぶつぽふそうくのを聴きに行つた。夕食を済まし、小さい提灯ちやうちんを借りて今日の午後に往反わうへんしたところを辿たどつて行つた。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ただ朗吟していた者だけは、なよなよとした姿でためらっているうちにつかまえられ、き叫びながら一生懸命になって抵抗した。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
また一生けんめいく。うぐいすならば春にはっきり啼く。みそさざいならばからだをうごかすたびにもうきっと啼いているのだ。
けたたましい羽音と共に、からすの群れが、最初は二羽、それから三羽四羽と引きつづいて、自分の頭の上の松の木にとまってき出した。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
緑のスロープも、高地になるに随って明るく、陰影が一刷毛ひとはけに撫で下ろされた。あしくさむらの多い下の沢では、葦切よしきりがやかましくいていた。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
そこから長い石段をおりると、名主利右衛門の屋敷はすぐ左にひらけた藪のかげにあった。どこかで、ほう、ほう、とふくろういている。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
わたしはさまよい出た一羽の鵞鳥がちょうが池の上をまさぐり歩き、迷い児のように、あるいは霧の精のようにクックッとくのを聞いた。
紅葉ふみわけく鹿と申しましても、秋は子を生む時ではございませんで、妻恋う鹿と申しまして、つまり夫婦和合の時でございますな
鶯がいている。手習子がやって来る。朝早いのに無理に起されたと見えて、眠そうな眼をこすりながらやって来る、というのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
くちばしがめるといってく、などというようなおかしい話が多く、もとは大ていの子どもはいちどはこの話をいたものであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すさまじい風のなかに、この騒々しい世界から独立した静寂へ、人の霊を誘ひ入れるやうにきしきるこほろぎの声に彼は耳を澄した。
林泉奥深うして水あおく砂白きほとり、鳥き、魚おどつて、念仏、念法、念僧するありさま、まこと末世まっせ奇特きどく稀代きたいの浄地とおぼえたり。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼女はまた昔の人ののこした歌になぞらえて、上野のもりにからすのかない日はあっても君を恋しく思わない日はないとも書いてあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
鹿しかがひどくくのを聞いていて、「われ劣らめや」(秋なれば山とよむまで啼く鹿にわれ劣らめやひとる夜は)と吐息といきをついたあとで
源氏物語:40 夕霧二 (新字新仮名) / 紫式部(著)
が、その拍子に婆さんが、からすくような声を立てたかと思うと、まるで電気に打たれたように、ピストルは手から落ちてしまいました。
アグニの神 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
むまつのなく鹿しかたてがみなくいぬにやんいてじやれずねこはワンとえてまもらず、しかれどもおのづかむまなり鹿しかなりいぬなりねこなるをさまたけず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
今なら難なくあの人を捕えることが出来ます。ああ、小鳥がいて、うるさい。今夜はどうしてこんなに夜鳥の声が耳につくのでしょう。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
あかつきの四時か五時頃だったろう、障子の外がほんのりしらみ初めたと思ったら、どこかうしろの山の方で、不意にと声ほととぎすがいた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雄鶏がいれば外敵が来てもコーコーといて知らせてくれるし、あさる時にも雄鶏が先へ見付けて雌鶏に食べさせてくれるし
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
小菊太夫に腹をでてもらいながら、「庄太夫」は苦しそうに舌を垂らし、激しくあえぎながら若尾を見あげて、くんくんと悲しげにいた。
みずぐるま (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この時、彼方の寺の栗林でひよどりが沢山来ていているのが聞えた。で、早速家へ引返して二連発の猟銃を持って寺の林へ急いだ。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どこでくのか、風邪を引いているような蟋蟀こおろぎの声が聞えた。いつもこの室に並べて敷く二つの蒲団を、ひとつにしたいような夜であった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
あちらこちらでふくろうがホーホーといて、夜の七時といえば都会では、まだほんのよいの口です。銀座なぞは人で、さぞ雑踏しているでしょう。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
小児の生まるるときのごとく、あるいはき、あるいは笑うは、まず憂喜を習うがゆえなり。人の教うることなくして、しかも憂喜続生す。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
メルルと云つて日本の杜鵑ほとゝぎすうぐひすの間の様な声をする小鳥が夜明よあけには来てくが、五時になると最早もう雀のき声と代つて仕舞しまふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
するとその時、すぐそこの松山の中でギギッとけたたましいき声がした。同時にするどい羽音がして、中ぞらへ闇を裂いた。そして消えた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
丹頂は眠っていると見えてばさりとも音をたてないが、遠くの方からは、いろいろな動物のき声が間断たえまなく聞こえてくる。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
そうかと思うと、嵐のように樹々の枝を、けたたましくき騒ぐ猿の大群が、丸木舟をめがけて雨霰あめあられのように木の実を投げつけることもある。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
之に遇えば物に害あり。ゆえ大厲だいれい門に入りて晋景しんけい歿ぼっし、妖豕ようしいて斉襄せいじょうす。くだようをなし、さいおこせつをなす。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
身動みうごきたくも、不思議なるかな、ちッとも出来んわい。其儘で暫くつ。竈馬こおろぎ、蜂の唸声うなりごえの外には何も聞えん。
にはとり神様かみさま夜明よあけらせること仰付おほせつかつたのがうれしさに、最初さいしよよる、まだお月様つきさまがゆつくりとそらあそびまはつてゐるのに、ときつくつてきました。
乳母 はい/\、だまりまする、でもな、わらはいではをられませぬ、くのをめて、「あい」とはッしゃったとおもふと。
微細な網目に両脚をつっこんで、逆さにぶら下って、チイチイとき叫んでいる。騒げば騒ぐほど、網がからまってゆく仕掛けになっているらしい。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
とりかざる山間やまあいの物静かなるが中なれば、その声谿に応え雲に響きて岩にも侵み入らんばかりなりしが、この音の知らせにそれと心得てなるべし
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さればその地に千鳥がかずとも、その地に山吹が咲かずとも、もとよりそれらに頓著あるべくもあらず、甚しきはあるかなきか分らぬやうな名所を
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
麻川氏は私達の側から立って今一つあいている長方形の涼み台の上に仰向あおむけになった。八月下旬に近く、虫がしんとした遠近の草むらでいている。
鶴は病みき (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宮はうつむきて唇を咬みぬ。母は聞かざるまねして、折しもけるうぐひすうかがへり。貫一はこのていを見て更に嗤笑あざわらひつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
くるまはやがて町端まちはづれを離れて、暗い田舎道へ差懸さしかゝつた。くろい山の姿が月夜の空にそゝり立つて、海のやうに煙つた青田から、蛙が物凄くきしきつてゐた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
二一くずのうら葉のかへるは此の秋なるべし。心づよく待ち給へと、いひなぐさめて、夜も明けぬるに、二二鳥があづまを立ち出でて京の方へ急ぎけり。
堂の広さはわずかに二坪ぐらいで、修善寺町の方を見おろして立っている。あたりには杉やかえでなど枝をかわして生い茂って、どこかでからすいている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちやう時鳥ほとゝぎすく頃で、庭には青葉が、こんもりと繁つてゐた。政宗はお産でもするやうに蟹のやうな顔をしかめてうん/\うなつてゐたが、暫くすると
彼らの大きな石造りの邸はひろびろしていて、夏分は涼しく、数ある窓の半分は年をへて鬱蒼うっそうたる庭園に面していて、春になるとそこで小夜鶯うぐいすいた。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
半月も過ぎて秋も深まり、百舌鳥もずの鋭いき声が庭園を横切るかと思えば、裏の山の実をいばむ渡り鳥が群れ啼いて空を渡り、時雨しぐれる日が多かった。
(新字新仮名) / 富田常雄(著)
蚯蚓みみずき声を研究するために、あの、そこの廃兵院の森に夜明しをしてしゃがんでおりましたら、泥棒と見誤られて刑事に誰何すいかされたことがございます
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)