“紛(な)” の例文
すると、せっかく骨を折って拾った銭が紛(な)くなっていた者だの、笄(こうがい)を抜かれている女だの、袂(たもと)を刃物で切られている者だのが数名あって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ピエロオに紛(な)つたやうな陰鬱な、悲惨な、それでゐて莫迦に愉快なやうな気持に追はれながら、素直な叔母を付け込むで出放題な文句を能弁に口走つて
白明 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そのうえ、上の入歯を紛(な)くしたせいもあったでしょうか、いやに下唇ばかり突き出てしまって、それを見るとほんとうに、ひとしお家畜(けもの)めいて憐(いじ)らしく思われました
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)