)” の例文
ハツバス・ダアダアは當時一流の埴瓮はにべつくりはじめて、これを氣象情致のはるかに優れたる詩人にげ付け、自ら恥づることを知らざりき。
何かその時分に喧嘩けんかでも起るとそれこそ非常な罰金を命じます。ただ罰金を命ずるだけではない。やはりぶんぐられるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
われは珈琲代の白銅貨を、帳場の石板の上にげ、外套がいとう取りて出でて見しに、花売の子は、ひとりさめさめと泣きてゆくを、呼べどもかえりみず。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
すると与吉は、やっぱりなんでえ、なんでえ、ぐるぞと云いながらなおと崖の下へ寄って来た。じゃ欲しいのと喜いちゃんはまた柿を出した。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
突然、順一は長火鉢ながひばちの側にあったネーブルの皮をつかむと、向うの壁へピシャリとげつけた。狂暴な空気がさっとみなぎった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ぜにげては陰陽いんようさだめる、——それがちょうど六度続いた。おれんはその穴銭の順序へ、心配そうな眼をそそいでいた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と言うと、持った杖をハタとげた。その風采ふうさいや、さながら一山いっさんの大導師、一体の聖者のごとく見えたのであった。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『旧事紀』は、茲に附記して曰く、今の世の人夜、一箇火を忌み、亦夜、げ櫛を忌むは、是その縁なりと。
比較神話学 (新字新仮名) / 高木敏雄(著)
疑わしくば木枝を空中にげ、その向う処をみて占うといい、カンボジア人は、虎栖処すみかより出る時、何気なく尾が廻る、そのさきをみて向うべき処を定むと信ず。
敵は、最初のうちは、明かに、狼狽ろうばいの色を見せたが、暫くすると、いきおい盛返もりかえし、手榴弾を、ポンポンとげつけては、機関銃を、一門又一門と、破壊していった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その忘却の心理には、きわめて精密な機構があって、同じ発音の言葉でも、抑揚アクセントが違う場合には、一時ことごとく記憶の圏外にげ出されてしまう。そうではないか。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と言つて何方かが何方かをぐるか何うかするより他為方がないやうなものではあるまいか。
通俗小説 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
それをありのままに「蒸しうもの歌ならびに反歌」と書き添えて、それなりに控帳をとざして、てるようにして、側の方へった。そしてちと長たらしいなとつぶやいている。
私らが、穴から二間ばかり離れて見物している前へ、彼がげ出した地蜂の巣は、直径二尺ほどもあろうと思うものが五つ重ねもあった。ぱちぱちぱち、私らは拍手喝采した。
採峰徘菌愚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
同勢三、四人で一個の西瓜すいかを買って石手川へ涼みに行き、居士はある石崖の上にげつけてそれを割り、その破片をヒヒヒヒと嬉しそうに笑いながら拾って食った事もあった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
十二月二十八日、江府から松平豆州まつだいらずしゅうが上使として下向げこうしたという情報に接すると、内膳正は烈火のごとく怒って、原城の城壁に、自分の身体と手兵とをげ付けようと決心した。
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
みち出会頭であひがしらに石をげつけた女達がまじつてゐたといふ事を何かの本で読んだ事がある。
この究竟の目的たる大理想は、実在を説明原理として見ないでこれを前途にげ出して人間行動の標的としたときに、構成されるので、彼と此とは畢竟一つのものと見るべきである。
もしも私が凍りついて動かぬ氷にさへなつて了へば——それはなつかしい死の無感覺である——假令げつけるやうに雨が降つても何ともあるまいに。私にはもう感じられないのだから。
然れどもひそかに居士の高風を遠羨ゑんせんせしことあるものなり、而して今や居士在らず、いたづらに半仙半商の中江篤介、怯懦けふだにして世を避けたる、驕慢にして世をげたる中江篤介あるを聞くのみ。
兆民居士安くにかある (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
日頃、武蔵のこの態度をあきたらず思っていた無二斎が、ある時、楊枝ようじけずっていた小刀を、ひと距てた武蔵めがけてげつけた。すると武蔵は、軽く面をそむけてかわし、にこと笑って見せた。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、突然いきなり林の中で野獣でも吼える様に怒鳴りつける。対手がそれで平伏へこたまれば可いが、さもなければ、盃をげて、唐突いきなり両腕を攫んで戸外そとへ引摺り出す。踏む、蹴る、下駄で敲く、泥溝どぶ突仆つきのめす。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
緑の草の中にしもかひなを君がげやれば
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そこで私はすぐに着物を脱いで山に少しく上りて大いなる石を一つ馬の居る側にげつけましたが、馬は自分を打たるると思ってかびくびくして居りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
假面をば被りたらねど、「コンフエツチイ」の粒ぐることは、人々に劣らざりき。道の傍なる椅子には人滿ちたり。家ごとの窓よりも人の頭あらはれたり。
ああ、まぶしい自動車のヘッド・ライトは、二百メートルも間近まぢかせまっています。警察隊が来てくれたのです。あすこへ身をげこめば助かる! 私はもう夢中で走りました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
若い時三井寺でくだんの鐘を見たるに𤿎裂筋あり、往昔弁慶、力試しにこれをげて谷へげ下ろすと二つに裂けた、谷に下りし合せ長刀なぎなたにのうて上り、堂辺へ置いたまま現在した
その時てた一片の布を、ちょうど川岸に枝を伸していた松が受けとめたというのである。渡し場の目じるしとして立っていたその松は今に残っていて、脚布掛きゃふがけの松と呼ばれている。
にくさげな、高慢かうまんな、ひと馬鹿ばかにしたかたちうだい、總別そうべつはない畜生ちくしやうだ、とこゝろから、石段いしだんれたかけらひろつて、ぞくにねことふ、川楊かはやぎがくれに、ぢつねらつて、ひしりとげる
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほろびるね」と云つた。熊本でこんな事をくちせば、すぐぐられる。わるくすると国賊取扱こくぞくどりあつかひにされる。三四郎はあたまなか何処どこすみにもう云ふ思想を入れる余裕はない様な空気のうちで生長した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
われとわがからだを敵にげつくる心を——
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
覚えられないのを奨励して覚えさせる唯一の方法はぶんぐるので、それを最上の良法として用いて居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「すると金青年に重い砲丸をげつけて重傷を負わせたのは、丘田医師だったのかい」
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただし『今昔物語』十一や『弘法大師行化記ぎょうけき』に、大師初めて南山に向った時、二黒犬を随えた猟人から唐でげた三の行き先を教えられたとあり、この黒犬が大師を嚮導きょうどうしたらしいから
娘は籠の内なる丸の有らん限を我頭にげ付け、續いて籠を擲げ付けしに、われ驚きてをどり下るれば、車ははや彼方へ進み、和睦わぼくのしるしなるべし、娘のうしろざまに投じたる花束一つ我掌に留りぬ。
われとわがからだを敵にげつくる心を——
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
万吉郎は無意識に砂利場のこいしを拾っては河の面にげ、また拾っては擲げしていた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
後必ず汝を害せんげ落して我に食わせよ食い得ぬ内は去るまじと言う、熊我いかでか我を頼む者を殺すべきとて聴き入れず、熊かの人に向い我汝を抱きて疲れたり暫くやすむ間番せよとてねむ
もう一つ砲丸をげることは、どの若い女にも出来るという絶対の芸当ではないのだ。それとも君は、脆弱かよわい女性にあの砲丸を相手の肩へげつけることが出来る場合を想像できるかネ
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鬼、宮に入れば、仏、また還り、入る事三度して四度目に仏出でず、鬼神怒って出でずんば汝の脚を捉え、恒河ごうが裏にげ込むべしというに、仏いわく、梵天様でも天魔でも我をなげうつ力はないと。
これは一部の人に大変奇異きいな思いをいだかせた。何故ならば、どうしてチェリーのように脆弱かよわい女性が、あの重い砲丸を金青年の肩の上にげつけることが出来たろうかという疑問が第一。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)