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擲
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な
ふりがな文庫
“
擲
(
な
)” の例文
ハツバス・ダアダアは當時一流の
埴瓮
(
はにべ
)
つくりはじめて、これを氣象情致の
逈
(
はるか
)
に優れたる詩人に
擲
(
な
)
げ付け、自ら恥づることを知らざりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
何かその時分に
喧嘩
(
けんか
)
でも起るとそれこそ非常な罰金を命じます。ただ罰金を命ずるだけではない。やはりぶん
擲
(
な
)
ぐられるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
われは珈琲代の白銅貨を、帳場の石板の上に
擲
(
な
)
げ、
外套
(
がいとう
)
取りて出でて見しに、花売の子は、ひとりさめさめと泣きてゆくを、呼べども
顧
(
かえり
)
みず。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
すると与吉は、やっぱりなんでえ、なんでえ、
擲
(
な
)
ぐるぞと云いながらなおと崖の下へ寄って来た。じゃ欲しいのと喜いちゃんはまた柿を出した。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
突然、順一は
長火鉢
(
ながひばち
)
の側にあったネーブルの皮を
掴
(
つか
)
むと、向うの壁へピシャリと
擲
(
な
)
げつけた。狂暴な空気がさっと
漲
(
みなぎ
)
った。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
銭
(
ぜに
)
を
擲
(
な
)
げては
陰陽
(
いんよう
)
を
定
(
さだ
)
める、——それがちょうど六度続いた。お
蓮
(
れん
)
はその穴銭の順序へ、心配そうな眼を
注
(
そそ
)
いでいた。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と言うと、持った杖をハタと
擲
(
な
)
げた。その
風采
(
ふうさい
)
や、さながら
一山
(
いっさん
)
の大導師、一体の聖者のごとく見えたのであった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
『旧事紀』は、茲に附記して曰く、今の世の人夜、一箇火を忌み、亦夜、
擲
(
な
)
げ櫛を忌むは、是その縁なりと。
比較神話学
(新字新仮名)
/
高木敏雄
(著)
疑わしくば木枝を空中に
擲
(
な
)
げ、その向う処をみて占うといい、カンボジア人は、虎
栖処
(
すみか
)
より出る時、何気なく尾が廻る、その
尖
(
さき
)
をみて向うべき処を定むと信ず。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
敵は、最初のうちは、明かに、
狼狽
(
ろうばい
)
の色を見せたが、暫くすると、
勢
(
いきおい
)
を
盛返
(
もりかえ
)
し、手榴弾を、ポンポンと
擲
(
な
)
げつけては、機関銃を、一門又一門と、破壊していった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その忘却の心理には、きわめて精密な機構があって、同じ発音の言葉でも、
抑揚
(
アクセント
)
が違う場合には、一時ことごとく記憶の圏外に
擲
(
な
)
げ出されてしまう。そうではないか。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と言つて何方かが何方かを
擲
(
な
)
ぐるか何うかするより他為方がないやうなものではあるまいか。
通俗小説
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
それをありのままに「蒸しうもの歌
並
(
ならびに
)
反歌」と書き添えて、それなりに控帳を
閉
(
とざ
)
して、
擲
(
な
)
げ
棄
(
す
)
てるようにして、側の方へ
押
(
お
)
し
遣
(
や
)
った。そしてちと長たらしいなと
呟
(
つぶや
)
いている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
私らが、穴から二間ばかり離れて見物している前へ、彼が
擲
(
な
)
げ出した地蜂の巣は、直径二尺ほどもあろうと思うものが五つ重ねもあった。ぱちぱちぱち、私らは拍手喝采した。
採峰徘菌愚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
同勢三、四人で一個の
西瓜
(
すいか
)
を買って石手川へ涼みに行き、居士はある石崖の上に
擲
(
な
)
げつけてそれを割り、その破片をヒヒヒヒと嬉しそうに笑いながら拾って食った事もあった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
十二月二十八日、江府から
松平豆州
(
まつだいらずしゅう
)
が上使として
下向
(
げこう
)
したという情報に接すると、内膳正は烈火のごとく怒って、原城の城壁に、自分の身体と手兵とを
擲
(
な
)
げ付けようと決心した。
恩を返す話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と
途
(
みち
)
の
出会頭
(
であひがしら
)
に石を
擲
(
な
)
げつけた女達が
交
(
まじ
)
つてゐたといふ事を何かの本で読んだ事がある。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この究竟の目的たる大理想は、実在を説明原理として見ないでこれを前途に
擲
(
な
)
げ出して人間行動の標的としたときに、構成されるので、彼と此とは畢竟一つのものと見るべきである。
明治哲学界の回顧:04 結論――自分の立場
(新字新仮名)
/
井上哲次郎
(著)
もしも私が凍りついて動かぬ氷にさへなつて了へば——それは
懷
(
なつ
)
かしい死の無感覺である——假令
擲
(
な
)
げつけるやうに雨が降つても何ともあるまいに。私にはもう感じられないのだから。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
然れども
竊
(
ひそ
)
かに居士の高風を
遠羨
(
ゑんせん
)
せしことあるものなり、而して今や居士在らず、
徒
(
いたづ
)
らに半仙半商の中江篤介、
怯懦
(
けふだ
)
にして世を避けたる、驕慢にして世を
擲
(
な
)
げたる中江篤介あるを聞くのみ。
兆民居士安くにかある
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
日頃、武蔵のこの態度を
慊
(
あきた
)
らず思っていた無二斎が、ある時、
楊枝
(
ようじ
)
を
削
(
けず
)
っていた小刀を、ひと
間
(
ま
)
距てた武蔵めがけて
擲
(
な
)
げつけた。すると武蔵は、軽く面をそむけて
躱
(
かわ
)
し、にこと笑って見せた。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
突然
(
いきなり
)
林の中で野獣でも吼える様に怒鳴りつける。対手がそれで
平伏
(
へこたま
)
れば可いが、さもなければ、盃を
擲
(
な
)
げて、
唐突
(
いきなり
)
両腕を攫んで
戸外
(
そと
)
へ引摺り出す。踏む、蹴る、下駄で敲く、
泥溝
(
どぶ
)
へ
突仆
(
つきのめ
)
す。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
緑の草の中にしも
腕
(
かひな
)
を君が
擲
(
な
)
げやれば
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこで私は
直
(
すぐ
)
に着物を脱いで山に少しく上りて大いなる石を一つ馬の居る側に
擲
(
な
)
げつけましたが、馬は自分を打たるると思ってかびくびくして居りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
假面をば被りたらねど、「コンフエツチイ」の粒
擲
(
な
)
ぐることは、人々に劣らざりき。道の傍なる椅子には人滿ちたり。家ごとの窓よりも人の頭あらはれたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ああ、
眩
(
まぶ
)
しい自動車のヘッド・ライトは、二百メートルも
間近
(
まぢか
)
に
迫
(
せま
)
っています。警察隊が来てくれたのです。あすこへ身を
擲
(
な
)
げこめば助かる! 私はもう夢中で走りました。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
若い時三井寺で
件
(
くだん
)
の鐘を見たるに𤿎裂筋あり、往昔弁慶、力試しにこれを
提
(
さ
)
げて谷へ
擲
(
な
)
げ下ろすと二つに裂けた、谷に下り
推
(
お
)
し合せ
長刀
(
なぎなた
)
で
担
(
にの
)
うて上り、堂辺へ置いたまま現在した
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その時
擲
(
な
)
げ
棄
(
す
)
てた一片の布を、ちょうど川岸に枝を伸していた松が受けとめたというのである。渡し場の目じるしとして立っていたその松は今に残っていて、
脚布掛
(
きゃふが
)
けの松と呼ばれている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
其
(
そ
)
の
憎
(
にく
)
さげな、
高慢
(
かうまん
)
な、
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にした
形
(
かたち
)
は
何
(
ど
)
うだい、
總別
(
そうべつ
)
、
氣
(
き
)
に
食
(
く
)
はない
畜生
(
ちくしやう
)
だ、と
云
(
い
)
ふ
心
(
こゝろ
)
から、
石段
(
いしだん
)
の
割
(
わ
)
れた
欠
(
かけら
)
を
拾
(
ひろ
)
つて、
俗
(
ぞく
)
にねこと
言
(
い
)
ふ、
川楊
(
かはやぎ
)
の
葉
(
は
)
がくれに、
熟
(
ぢつ
)
と
狙
(
ねら
)
つて、ひしりと
擲
(
な
)
げる
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
亡
(
ほろ
)
びるね」と云つた。熊本でこんな事を
口
(
くち
)
に
出
(
だ
)
せば、すぐ
擲
(
な
)
ぐられる。わるくすると
国賊取扱
(
こくぞくどりあつかひ
)
にされる。三四郎は
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
の
何処
(
どこ
)
の
隅
(
すみ
)
にも
斯
(
こ
)
う云ふ思想を入れる余裕はない様な空気の
裡
(
うち
)
で生長した。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
われとわがからだを敵に
擲
(
な
)
げつくる心を——
呼子と口笛
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
覚えられないのを奨励して覚えさせる唯一の方法はぶん
擲
(
な
)
ぐるので、それを最上の良法として用いて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「すると金青年に重い砲丸を
擲
(
な
)
げつけて重傷を負わせたのは、丘田医師だったのかい」
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ただし『今昔物語』十一や『弘法大師
行化記
(
ぎょうけき
)
』に、大師初めて南山に向った時、二黒犬を随えた猟人から唐で
擲
(
な
)
げた三
鈷
(
こ
)
の行き先を教えられたとあり、この黒犬が大師を
嚮導
(
きょうどう
)
したらしいから
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
娘は籠の内なる丸の有らん限を我頭に
擲
(
な
)
げ付け、續いて籠を擲げ付けしに、われ驚きて
跳
(
をど
)
り下るれば、車ははや彼方へ進み、
和睦
(
わぼく
)
のしるしなるべし、娘のうしろざまに投じたる花束一つ我掌に留りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
われとわがからだを敵に
擲
(
な
)
げつくる心を——
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
万吉郎は無意識に砂利場の
礫
(
こいし
)
を拾っては河の面に
擲
(
な
)
げ、また拾っては擲げしていた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
後必ず汝を害せん
擲
(
な
)
げ落して我に食わせよ食い得ぬ内は去るまじと言う、熊我いかでか我を頼む者を殺すべきとて聴き入れず、熊かの人に向い我汝を抱きて疲れたり暫く
睡
(
やす
)
む間番せよとて
睡
(
ねむ
)
る
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
もう一つ砲丸を
擲
(
な
)
げることは、どの若い女にも出来るという絶対の芸当ではないのだ。それとも君は、
脆弱
(
かよわ
)
い女性にあの砲丸を相手の肩へ
投
(
な
)
げつけることが出来る場合を想像できるかネ
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
鬼、宮に入れば、仏、また還り、入る事三度して四度目に仏出でず、鬼神怒って出でずんば汝の脚を捉え、
恒河
(
ごうが
)
裏に
擲
(
な
)
げ込むべしというに、仏いわく、梵天様でも天魔でも我を
擲
(
なげう
)
つ力はないと。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これは一部の人に大変
奇異
(
きい
)
な思いをいだかせた。何故ならば、どうしてチェリーのように
脆弱
(
かよわ
)
い女性が、あの重い砲丸を金青年の肩の上に
擲
(
な
)
げつけることが出来たろうかという疑問が第一。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
擲
漢検1級
部首:⼿
18画
“擲”を含む語句
打擲
放擲
抛擲
擲倒
擲附
擲弾兵
手擲弾
投擲
擲殺
擲出
擲却
乾坤一擲
一擲
御打擲
擲弾
酒銭擲三緡
革擲
擲銭卜
書擲
横擲
...