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くして、三日ののちに重蔵は死んだ。人間の運命は不思議なもので、彼は故郷こきょうの土とるべく、偶然にここへ帰って来たのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
婬乱者が竜とった物語は、『毘奈耶雑事』と『戒因縁経』に出で、話の本人を妙光女とも善光女とも訳し居るが、概要はこうだ。
何のつやもない濁った煙色にり、見る/\天穹てんきゅうい上り、大軍の散開する様に、東に、西に、天心に、ず、ずうと広がって来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
吾妻はばし川地のおもてながめ居りしが、忽如たちまちあをりて声ひそめつ「——ぢや、又た肺病の黴菌ばいきんでもまさうといふんですか——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ただ自分の吐く息のみが白く見え、その息もまた、口のまわりのぶ毛にたかるとすぐ霜にるかと疑われるほど冷たいのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕の竹馬の友で、親友で、妻の媒介人で、何かにつけて兄侍けいじしていた今井は、こうしてただ一片の骨とってしまった…………。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
「黄金を作る者は地上の悪魔也。彼等の触るる異性は悉く肉慾の奴隷と化し、肉慾の奴隷と化し能わざる異性は悉く血泥とる」
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
紙は見る間に燃えて行った。捨吉は土蔵の廂間ひあわいにあった裏の畠を掃く草箒くさぼうきを手にしたまま、丹精した草稿が灰にって行くのを眺めていた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
母親は近所の人に向って今頃はどないにか大きくなって、すっかり様子も都風とってよい丁稚になったでしょうと話した。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、急いでね。早乙女のお殿様のお目の前で女にってお見せ申すのも一興だから、一ツ腕によりをかけて頼みますよ」
こうして人間の面をかぶっておればこそ、の、わしが顔を暴露むきだいたら、さて、一堪ひとたまりものう、ひげが生えた玩弄物おもちゃろうが。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
松浦まつら佐用媛さよひめは夫に別れた悲しさの余り、そのまゝ石につてしまつたといふぢやないか、つまり石は生の極致だね。」
風もない青空に、黄にりきった公孫樹いちょうは、静かに影を畳んで休ろうていた。白い化粧煉瓦を張った長い塀が、いかにも澄んだ冬の空気を映していた。
冬の日 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
『では、だおまへはそれをらないんだわ』とつてあいちやんは、『でも、おまへさなぎつてから——何時いつかしら屹度きつとわかるわ——それからてふになるときに、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
亞拉比亞夜話アラビヤンナイト曾邊伊傳ソベイデはなしや、西洋奇談の魔法使ひや、驢馬にされた西藏王子の話を聞かして貰つて
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
針金はりがねのやうなをちらりとつた落葉おちばひとひら/\がけぶりともかるのぼつた。落葉おちばぐにしろはひつてさらいくつかにわかれて與吉よきち頭髮かみから卯平うへい白髮かみつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
燠につたほだの呟き。——わたしの脊椎せきつゐはづしとつてする「洗骨式せんこつしき」を、……でなければ、肉体の髄をきつくしてする「風葬祭ふうさうさい」を、……そんな末枯うらがれた夢見もするわな。
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
それからもう一つ、卓一がいうんですが、今までの自分というものに愛想が尽きたので、之を機会に信造にって、無口で真面目な人間に更生しようと考えた、とこういうんです
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ほんにその、天竺のをなごのり変つたのがあの鳥で、み経の名を呼ばはるのかえ。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
今一つは肥後の阿蘇氏の先祖のことであるが、景行紀によると、天皇が肥後の國に行かれた時に、阿蘇都彦・阿蘇都媛といふ神が、人につて現れたといふことになつてゐるのである。
女真種族の同源伝説 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
水戸みなとの神のひこ櫛八玉くしやたまの神膳夫かしはで二一となりて、天つ御饗みあへ二二獻る時に、ぎ白して、櫛八玉の神鵜にりて、わたの底に入りて、底のはこひあがり出でて二三、天の八十平瓮びらか二四を作りて
今まで現実の我れとして筆りつゝありし我れが、はつと思ふ刹那に忽ち天地の奥なる実在とりたるの意識、我は没して神みづからが現に筆を執りつゝありと感じたる意識とも言ふべき
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
吉良は、背骨が棒にったように硬直して、唾をんでいるだけだった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
海へはいつて蛤につて了つた親雀は
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
讃頌ほめうたこだまにこたへ、り出でたる
田鼠たねずみりおほせても草隱れ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
石とりぬる楠の橋
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
南米のチピウヤン人信じたは大兎神諸獣を率いて水に浮び大洋底より採った砂粒一つもて大地を造り部下の諸獣を人間にした。
次に、どこかで玄徳の大音声がきこえると、四方の山沢、みな鼓を鳴らし、奔激の渓流、こぞってときをあげ、草木みな兵とったかと思われた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猟人等は驚いて、これおそらく山の神であろうと、のちたたりを恐れて捨てて置いたら、自然に腐って骨にってしまったと、橘南谿たちばななんけい西遊記せいゆうきに書いてある。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幸い持合せのちと泥臭どろくさいが見かけは立派な円筒形えんとうけいの大きな舶来はくらい唐墨とうぼくがあったので、こころよく用立てた。今夜見れば墨痕ぼくこん美わしく「彰忠しょうちゅう」の二字にって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
空は同一おなじほど長方形に屋根を抜いてあるので、雨も雪も降込ふりこむし、水がたまつてれて居るのに、以前女髪結おんなかみゆいが住んで居て、取散とりちらかした元結もっといつたといふ
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むかし、支那しな莊周さうしうといふひとは、ゆめ胡蝶こてふつたとはなしがありますが、ゆめなればこそ、漫々まん/\たる大海原おほうなばら徒渉かちわたりすることも出來できます、空飛そらととり眞似まね出來できます。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
蠱術まじなひのやうな事を言つてみたが、ビフテキは別段猫につて逃げ出さうともしなかつた。
ほんまにその、天竺てんじくのおなごが、あの鳥にり変って、み経の名を呼ばるるのかえ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
とお婆さんが木戸口から顔を出した頃は、捨吉の草稿はあらかた灰にっていた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何時の間に貴女あなた其様そんな弱き心におりでした、——先夜始めて新聞社の二階で御面会致した時、貴女と同じ不幸におちいつてるひと、又陥りかけてる女が何千何万ともかぎりないのであるから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しその水を飲んで命があるものならどんな重い熱病もなおるが、死ぬものなら身体がやはりどくだみ草の色とって死んでしまうと聞いた——この時、黒い鳥が空を幾羽となく飛んでいた。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みなやき石のりぞゆく、あな恐怖おそれより。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
りしすがたもふべけれ。
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
篤信が引いた『旧事記』は怪しい物となしくも、保食神の頂より牛馬しと神代巻一書に見え、天斑馬あまのぶちこまの事と、日子遅神ひこじのかみ
その餓鬼に、こうされると思うと、お杉は、郷土の者に対する大義名分ばかりでなく、感情だけでも、このまま土にることはできなかった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又、彼等の皮膚が赭土色あかつちいろってしまったのは、生れてから死ぬまで岩石や赭土の中に棲んでいる為である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
宝塔ほうたふごときにせつしたときは、邪気じやきある凡夫ぼんぷは、手足てあしもすくんでそのまゝにしやがんだ石猿いしざるらうかとした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は蛇を嫌う権理がないばかりではなく、蛇は恐らく虫にって居る彼自身ではあるまいか。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ハア、貴嬢あなたにわかに非常なる厭世家におりでしたネ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
草も木もかの誘惑いざなひされつる
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今日もインドで吝嗇漢しわんぼう嗣子なく、死ねば蛇とって遺財を守るという(エントホヴェン輯『グジャラット民俗記フォークローアノーツ』一一九頁)。
「盆地の襲兵ども、今だぞ、ふちを出て雲とれ! 野をめぐって敵を抱きこみ、みなごろしにして、血の雨を見せよ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんなものは、今頃何にっているか分りませんよ、よう、ですから、銑さん。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)