)” の例文
祖母の妖怪話が頭にみついているせいか、どこかで啾々しゅうしゅうとして鬼がいているといったような、屋の棟三寸下るといったような
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
周倉は、かんばかりにいった。真情をもって訴えれば、人をうごかせないこともあるまいと、縷々るる、心の底から吐いてすがった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
厳重な取調を受けても一から十まで「知りませぬ」「わかりませぬ」の一点張りで、女のようにヒイヒイくばかりであった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夜泣きの刀のいわれは、脇差坤竜丸と所をべつにすれば……かならず丑満うしみつのころあいに迷雲、地中の竜を慕ってすすりくとの伝奇でんきである。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
世の常の老人の如く、予をしてかしめ給へ、永遠の夜の波の上に、辛らく差上げたこの蒼白の皺顔を君の御前に向け奉る。
法王の祈祷 (新字旧仮名) / マルセル・シュウォッブ(著)
まあ僕はきたいような気が起る。真実ほんとうに苦しんで見たものでなければ、苦しんで居る人の心地こころもちは解らないからね。そこだ。
朝飯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
どちらも遠くへだたったところから途切れ途切れに聞えて来るのだが、その声には肺腑はいふをしぼってくものの底知れぬなげきがこもっていた。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼も台所の内へ姿をかくしてしまっていて私の家から出ようとはしなかった。しかしおしまいに彼のお父つあんにつれられて行ってしまった。
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
急逝して私をかしめた四代目小さん君はその頃馬楽で、手堅い渋い話術の中に警抜な警句を言い放ち、一部の寄席ファンをして随喜せしめていた。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
大きな熊蜂や蟒蛇うわばみも棲んでいる。さらに怪しいのは、夜も昼も音楽の声、歌う声、く声などの絶えないことである。
あとにお春はしばしが程は、悪夢を見ている人のようにただ茫乎ぼんやりとしたまま坐っていたが、やがて前へと身を投げて、よよと哀しくき崩れました。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
三津郷……大穴持命おおなもちのみことの御子阿遅須枳高日子アヂスキタカヒコ命……大神ユメぎ給はく「御子のく由をれ」と夢に願ぎましゝかば、夢に、御子のコトカヨふと見ましき。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
『吾妹子が形見に置ける緑児みどりごの乞ひく毎に』と云つて幼児の事を咏んでゐるが、違ふ点は、『現身と念ひし妹が灰にてませば』といふ句で結んだところにある。
人麿の妻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
病的になっていたひろ子の神経は、その萩の花の大きいゆれをわが魂の大ゆれのようにはっと感じた。自分のこうとする心がそこにあらわされたように感じた。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それが昨日の晩は今吹いてゐるやうな——騷がしく強い——のではなくて、哀れつぽいくやうな音を立てゝ吹いてゐて、氣味惡きみわるい位のことではなかつたのです。
北洲の人大小便すれば自ずから地下に没し、その地清潔で糞臭の処なし。人死すれば好衣もて飾り、少しもかずに四辻に置くと鬱遮鳥が片付けて洲外に持ち去る。
悟空は、今までの極度の増上慢ぞうじょうまんから、一転して極度の自信のなさにちた。彼は気が弱くなり、ときには苦しさのあまり、恥も外聞も構わずワアワアと大声でいた。
おんなよなにゆえにくや。」——「わが主を取りし者ありていずこに置きしかを知らざればなり。」
我を助けよ助けよとさけびぬれど、聞き入れず。つひに切らるるとおぼえてゆめめたりとかたる。
王侍御は急いで出て来たが、客がもう帰っていないので、訊いてみるとその事情が解った。王侍御はふるえあがって顔色が土のようになった。彼は大声を出していていった。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
お勝手で朝餉あさげの支度をしてゐる千登世に聞えぬやう聲を噛み緊めてしくり/\いてゐた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
夜更けてから、富岡は、猛烈な下痢げりをした。息苦しいかはやに蹲踞み、富岡は、両のてのひらに、がくりと顔を埋めて、子供のやうに、をえつしていた。人間はいつたい何であらうか。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
凝然じっと黙って居た二人は、同じ様に肩を顫わせてしくしくとき始めたのであります……。
陳情書 (新字新仮名) / 西尾正(著)
一夜、夫の枕もとに現われて、歌をんだ。闇の夜の、におい山路やまみちたどりゆき、かなく声に消えまよいけり。におい山路は、冥土めいどに在る山の名前かも知れない。かなは、女児の名であろう。
懶惰の歌留多 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かれここに伊耶那岐の命のりたまはく、「うつくしき汝妹なにもの命を、子の一木ひとつけへつるかも」とのりたまひて、御枕方みまくらべ匍匐はらば御足方みあとべに匍匐ひて、きたまふ時に、御涙に成りませる神は
いふことは拙けれどもひたおもて眼は輝けり下心したけるなり (斎田訓導)
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
岩倉家の玄関で車を下りると、お馨さんの阿爺おとうさんが出て来た。座にしょうぜられて、一つ二つ淀みがちな挨拶をすると、阿爺さんが突然わァッと声を立てゝいた。少し話してまた声を放って哭いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しぬびく 采女うねめが髪の みだれより 飛鳥あすかの月の えわたるかも
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
今や猛火のために焼死なんとするなり、余は天に叫べり地にけり、眼は独楽こまのごとく回転して八方を見まわすに、船を焼く火の光高く燃えあがるにしたがい、暗黒なりし天地もようやく明るくなり
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
名家の屋形にはけちがついたのである。姫の怨念おんねんは八重垣落しの断崖のあたりをさまよっていて、屋形に凶事きょうじのある前には気味のわるい笑い声がしきりに聞え、吉事きつじにはさめざめとくけはいがする。
だが、おもへば私はき過ぎた。曙は胸ゑぐ
ピンと すすりいてゐるような
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
チチアネルロひそかにく。
両箇ふたりは一度にいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
瑜伽三密ゆがさんみつの霊場叡山を敵として、今、自己の全武力をあげて包囲にかかりながら、一かいの土には、を合わせてく信長であった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊助、初めは呆然として突っ立ったきり、足許の女房の死体を見下ろしていたが、やがてがっくりと膝をつくと、手放しで男泣きにきだした。
彼女はし方行く末を考えて、ひとりでさんざんいたこともある。そのたびに彼女の心は幼いものの方へ帰って行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
キチガイのようにれ狂い、さけぶアヤ子を、両腕にシッカリとかかえて、身体からだ中血だらけになって、やっとの思いで、小舎こやの処へ帰って来ました。
瓶詰地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「山霊がくなどといったり、村の若者たちがでかけてゆくと、黒装束で現われて、みんな捕えて殺してしまう」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
三つの蛟は又あらわれて母の墓所に赴き、幾日も号哭ごうこくして去った。そのく声はいぬのようであった。
夫雀哀しんで自ら羽を抜き丸裸になってピパル樹にとまく、ピパル樹訳を聞いて貰い泣きし葉をことごとく落す、水牛来て訳を聞いて角ふたおとし川へ水飲みに往くと
声が出せたら、陶工がさてと偽の署名をしかけた時、皿や花瓶は一斉にいて拒んだだろう。
伊太利亜の古陶 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
憶良等おくららいままからむくらむそのははつらむぞ 〔巻三・三三七〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あれは、秋だったものな。はっきり聞いたのが、水の上に浮いている鴨鳥の声だった。今思うと——待てよ。其は何だか一目惚ひとめぼれの女のき声だった気がする。——おお、あれが耳面刀自だ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
ハナシカは雪くれ竹のむら雀、ジャズっては泣き、じゃずってはきとは昔むかしその昔、九郎判官義経さまが、橋のたもとに腰打ちかけて、向こうはるかに浅草の灯を、眺めし頃のタワゴトなり。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
かれ天若日子が下照したて比賣ひめく聲、風のむた一九響きて天に到りき。
孟は夜の暗いのをたよりに十一娘の墓へいって、心ゆくばかりこうと思って、夜、家を出て歩いていると、向うからきっとなって来た者があった。れ違おうとしてみるとそれは三娘であった。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
片里どのがさまざまと私の心をあおったゆえ、私ははじめて自分の姿が世の万人にすぐれているのに気がついて、その折角せっかくの美しさが、年と共に衰えゆくのを口惜くちおしく思い、ながら悪魔を呼んで
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
佐用氏にゆきて老母の介抱いたはりねんごろ一二一あつらへ、出雲の国にまかるみちに、一二二飢ゑてしよくを思はず、寒きに衣をわすれて、まどろめば夢にもきあかしつつ、十日をて富田の大にいたりぬ。
諸王、諸臣、及び天下の百姓、ことごと長老おきなは愛児を失ふがごとく、塩酢之昧あぢはひ口に在れどもめず、少幼者わかきめる父母かぞうしなふが如くて、いさつる声、行路みちに満てり、すなは耕夫たがやすものすきを止め、舂女つきめきおとせず。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)