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哭
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な
ふりがな文庫
“
哭
(
な
)” の例文
祖母の妖怪話が頭に
沁
(
し
)
みついているせいか、どこかで
啾々
(
しゅうしゅう
)
として鬼が
哭
(
な
)
いているといったような、屋の棟三寸下るといったような
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
周倉は、
哭
(
な
)
かんばかりにいった。真情をもって訴えれば、人をうごかせないこともあるまいと、
縷々
(
るる
)
、心の底から吐いてすがった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
厳重な取調を受けても一から十まで「知りませぬ」「わかりませぬ」の一点張りで、女のようにヒイヒイ
哭
(
な
)
くばかりであった。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
夜泣きの刀のいわれは、脇差坤竜丸と所をべつにすれば……かならず
丑満
(
うしみつ
)
のころあいに迷雲、地中の竜を慕ってすすり
哭
(
な
)
くとの
伝奇
(
でんき
)
である。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
世の常の老人の如く、予をして
哭
(
な
)
かしめ給へ、永遠の夜の波の上に、辛らく差上げたこの蒼白の皺顔を君の御前に向け奉る。
法王の祈祷
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
▼ もっと見る
まあ僕は
哭
(
な
)
きたいような気が起る。
真実
(
ほんとう
)
に苦しんで見たものでなければ、苦しんで居る人の
心地
(
こころもち
)
は解らないからね。そこだ。
朝飯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
どちらも遠くへだたったところから途切れ途切れに聞えて来るのだが、その声には
肺腑
(
はいふ
)
をしぼって
哭
(
な
)
くものの底知れぬなげきがこもっていた。
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼も台所の内へ姿をかくしてしまって
哭
(
な
)
いて私の家から出ようとはしなかった。しかしおしまいに彼のお父つあんにつれられて行ってしまった。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
急逝して私を
哭
(
な
)
かしめた四代目小さん君はその頃馬楽で、手堅い渋い話術の中に警抜な警句を言い放ち、一部の寄席ファンをして随喜せしめていた。
わが寄席青春録
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
大きな熊蜂や
蟒蛇
(
うわばみ
)
も棲んでいる。さらに怪しいのは、夜も昼も音楽の声、歌う声、
哭
(
な
)
く声などの絶えないことである。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あとにお春はしばしが程は、悪夢を見ている人のようにただ
茫乎
(
ぼんやり
)
としたまま坐っていたが、やがて前へと身を投げて、よよと哀しく
哭
(
な
)
き崩れました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
三津郷……
大穴持命
(
おおなもちのみこと
)
の御子
阿遅須枳高日子
(
アヂスキタカヒコ
)
命……大神
夢
(
ユメ
)
に
願
(
ネ
)
ぎ給はく「御子の
哭
(
な
)
く由を
告
(
ノ
)
れ」と夢に願ぎましゝかば、夢に、御子の
辞
(
コト
)
通
(
カヨ
)
ふと見ましき。
水の女
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
『吾妹子が形見に置ける
緑児
(
みどりご
)
の乞ひ
哭
(
な
)
く毎に』と云つて幼児の事を咏んでゐるが、違ふ点は、『現身と念ひし妹が灰にてませば』といふ句で結んだところにある。
人麿の妻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
病的になっていたひろ子の神経は、その萩の花の大きいゆれをわが魂の大ゆれのようにはっと感じた。自分の
哭
(
な
)
こうとする心がそこにあらわされたように感じた。
風知草
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それが昨日の晩は今吹いてゐるやうな——騷がしく強い——のではなくて、哀れつぽい
哭
(
な
)
くやうな音を立てゝ吹いてゐて、
氣味惡
(
きみわる
)
い位のことではなかつたのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
北洲の人大小便すれば自ずから地下に没し、その地清潔で糞臭の処なし。人死すれば好衣もて飾り、少しも
哭
(
な
)
かずに四辻に置くと鬱遮鳥が片付けて洲外に持ち去る。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
悟空は、今までの極度の
増上慢
(
ぞうじょうまん
)
から、一転して極度の自信のなさに
堕
(
お
)
ちた。彼は気が弱くなり、ときには苦しさのあまり、恥も外聞も構わずワアワアと大声で
哭
(
な
)
いた。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「
婦
(
おんな
)
よなにゆえに
哭
(
な
)
くや。」——「わが主を取りし者ありていずこに置きしかを知らざればなり。」
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
我を助けよ助けよと
哭
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
びぬれど、聞き入れず。
終
(
つひ
)
に切らるるとおぼえて
夢
(
ゆめ
)
醒
(
さ
)
めたりとかたる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
王侍御は急いで出て来たが、客がもう帰っていないので、訊いてみるとその事情が解った。王侍御は
顛
(
ふる
)
えあがって顔色が土のようになった。彼は大声を出して
哭
(
な
)
いていった。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
お勝手で
朝餉
(
あさげ
)
の支度をしてゐる千登世に聞えぬやう聲を噛み緊めてしくり/\
哭
(
な
)
いてゐた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
夜更けてから、富岡は、猛烈な
下痢
(
げり
)
をした。息苦しい
厠
(
かはや
)
に蹲踞み、富岡は、両の
掌
(
てのひら
)
に、がくりと顔を埋めて、子供のやうに、をえつして
哭
(
な
)
いた。人間はいつたい何であらうか。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
凝然
(
じっと
)
黙って居た二人は、同じ様に肩を顫わせてしくしくと
哭
(
な
)
き始めたのであります……。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
一夜、夫の枕もとに現われて、歌を
詠
(
よ
)
んだ。闇の夜の、におい
山路
(
やまみち
)
たどりゆき、かな
哭
(
な
)
く声に消えまよいけり。におい山路は、
冥土
(
めいど
)
に在る山の名前かも知れない。かなは、女児の名であろう。
懶惰の歌留多
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
かれここに伊耶那岐の命の
詔
(
の
)
りたまはく、「
愛
(
うつく
)
しき
我
(
あ
)
が
汝妹
(
なにも
)
の命を、子の
一木
(
ひとつけ
)
に
易
(
か
)
へつるかも」とのりたまひて、
御枕方
(
みまくらべ
)
に
匍匐
(
はらば
)
ひ
御足方
(
みあとべ
)
に匍匐ひて、
哭
(
な
)
きたまふ時に、御涙に成りませる神は
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
いふ
言
(
こと
)
は拙けれどもひたおもて眼は輝けり
下心
(
した
)
哭
(
な
)
けるなり (斎田訓導)
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
岩倉家の玄関で車を下りると、お馨さんの
阿爺
(
おとうさん
)
が出て来た。座に
請
(
しょう
)
ぜられて、一つ二つ淀みがちな挨拶をすると、阿爺さんが突然わァッと声を立てゝ
哭
(
な
)
いた。少し話してまた声を放って哭いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
しぬび
哭
(
な
)
く
采女
(
うねめ
)
が髪の みだれより
飛鳥
(
あすか
)
の月の
冴
(
さ
)
えわたるかも
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
今や猛火のために焼死なんとするなり、余は天に叫べり地に
哭
(
な
)
けり、眼は
独楽
(
こま
)
のごとく回転して八方を見まわすに、船を焼く火の光高く燃えあがるにしたがい、暗黒なりし天地もようやく明るくなり
南極の怪事
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
名家の屋形にはけちがついたのである。姫の
怨念
(
おんねん
)
は八重垣落しの断崖のあたりをさまよっていて、屋形に
凶事
(
きょうじ
)
のある前には気味のわるい笑い声がしきりに聞え、
吉事
(
きつじ
)
にはさめざめと
哭
(
な
)
くけはいがする。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
だが、
惟
(
おも
)
へば私は
哭
(
な
)
き過ぎた。曙は胸
抉
(
ゑぐ
)
り
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
ピンと すすり
哭
(
な
)
いてゐるような
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
チチアネルロひそかに
哭
(
な
)
く。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
両箇
(
ふたり
)
は一度に
哭
(
な
)
き
出
(
いだ
)
せり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
瑜伽三密
(
ゆがさんみつ
)
の霊場叡山を敵として、今、自己の全武力をあげて包囲にかかりながら、一
塊
(
かい
)
の土には、
掌
(
て
)
を合わせて
哭
(
な
)
く信長であった。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伊助、初めは呆然として突っ立ったきり、足許の女房の死体を見下ろしていたが、やがてがっくりと膝をつくと、手放しで男泣きに
哭
(
な
)
きだした。
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼女は
来
(
こ
)
し方行く末を考えて、ひとりでさんざん
哭
(
な
)
いたこともある。そのたびに彼女の心は幼いものの方へ帰って行った。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
キチガイのように
暴
(
あ
)
れ狂い、
哭
(
な
)
き
喚
(
さけ
)
ぶアヤ子を、両腕にシッカリと
抱
(
だ
)
き
抱
(
かか
)
えて、
身体
(
からだ
)
中血だらけになって、やっとの思いで、
小舎
(
こや
)
の処へ帰って来ました。
瓶詰地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「山霊が
哭
(
な
)
くなどといったり、村の若者たちがでかけてゆくと、黒装束で現われて、みんな捕えて殺してしまう」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
三つの蛟は又あらわれて母の墓所に赴き、幾日も
号哭
(
ごうこく
)
して去った。その
哭
(
な
)
く声は
狗
(
いぬ
)
のようであった。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夫雀哀しんで自ら羽を抜き丸裸になってピパル樹に
栖
(
とま
)
り
哭
(
な
)
く、ピパル樹訳を聞いて貰い泣きし葉をことごとく落す、水牛来て訳を聞いて角
両
(
ふた
)
つ
堕
(
おと
)
し川へ水飲みに往くと
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
声が出せたら、陶工がさてと偽の署名をしかけた時、皿や花瓶は一斉に
哭
(
な
)
いて拒んだだろう。
伊太利亜の古陶
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
憶良等
(
おくらら
)
は
今
(
いま
)
は
罷
(
まか
)
らむ
子
(
こ
)
哭
(
な
)
くらむその
彼
(
か
)
の
母
(
はは
)
も
吾
(
わ
)
を
待
(
ま
)
つらむぞ 〔巻三・三三七〕 山上憶良
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
あれは、秋だったものな。はっきり聞いたのが、水の上に浮いている鴨鳥の声だった。今思うと——待てよ。其は何だか
一目惚
(
ひとめぼ
)
れの女の
哭
(
な
)
き声だった気がする。——おお、あれが耳面刀自だ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
ハナシカは雪くれ竹のむら雀、ジャズっては泣き、じゃずっては
哭
(
な
)
きとは昔むかしその昔、九郎判官義経さまが、橋の
袂
(
たもと
)
に腰打ちかけて、向こうはるかに浅草の灯を、眺めし頃のタワゴトなり。
寄席行灯
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
かれ天若日子が
妻
(
め
)
下照
(
したて
)
る
比賣
(
ひめ
)
の
哭
(
な
)
く聲、風のむた
一九
響きて天に到りき。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
孟は夜の暗いのをたよりに十一娘の墓へいって、心ゆくばかり
哭
(
な
)
こうと思って、夜、家を出て歩いていると、向うからきっとなって来た者があった。
擦
(
す
)
れ違おうとしてみるとそれは三娘であった。
封三娘
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
片里どのがさまざまと私の心を
煽
(
あお
)
ったゆえ、私ははじめて自分の姿が世の万人にすぐれているのに気がついて、その
折角
(
せっかく
)
の美しさが、年と共に衰えゆくのを
口惜
(
くちお
)
しく思い、
哭
(
な
)
き
乍
(
なが
)
ら悪魔を呼んで
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
佐用氏にゆきて老母の
介抱
(
いたはり
)
を
苦
(
ねんごろ
)
に
一二一
あつらへ、出雲の国にまかる
路
(
みち
)
に、
一二二
飢ゑて
食
(
しよく
)
を思はず、寒きに衣をわすれて、まどろめば夢にも
哭
(
な
)
きあかしつつ、十日を
経
(
へ
)
て富田の大
城
(
ぎ
)
にいたりぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
諸王、諸臣、及び天下の百姓、
悉
(
ことごと
)
に
長老
(
おきな
)
は愛児を失ふが
如
(
ごと
)
く、
塩酢之昧
(
あぢはひ
)
口に在れども
嘗
(
な
)
めず、
少幼者
(
わかき
)
は
慈
(
う
)
める
父母
(
かぞ
)
を
亡
(
うしな
)
ふが如くて、
哭
(
な
)
き
泣
(
いさ
)
つる声、
行路
(
みち
)
に満てり、
乃
(
すなは
)
ち
耕夫
(
たがやすもの
)
は
耜
(
すき
)
を止め、
舂女
(
つきめ
)
は
杵
(
きおと
)
せず。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
哭
漢検1級
部首:⼝
10画
“哭”を含む語句
哀哭
鬼哭
大哭
哭声
慟哭
痛哭
鬼哭啾々
号哭
悲哭
慟哭的
拝哭
哭泣
哭倒
酔哭
震動哀哭
泣哭
歌哭
音哭
飲啄笑哭
鬼哭啾啾
...