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嘗
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な
ふりがな文庫
“
嘗
(
な
)” の例文
もう
明日
(
あす
)
の朝の
準備
(
したく
)
をしてしまって、
膳
(
ぜん
)
さきの二合を
嘗
(
な
)
めるようにして飲んでいた
主翁
(
ていしゅ
)
は、
盃
(
さかずき
)
を持ったなりに土間の方へ目をやった。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それに其の間だつて、別の
辛
(
つら
)
さで生活の苦しみを
嘗
(
な
)
めて来た晴代は、決して木山と一緒になつてふら/\遊んでゐる訳ではなかつた。
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
其處
(
そこ
)
へ
古
(
ふる
)
ちよツけた
能代
(
のしろ
)
の
膳
(
ぜん
)
。
碗
(
わん
)
の
塗
(
ぬり
)
も
嬰兒
(
あかんぼ
)
が
嘗
(
な
)
め
剥
(
は
)
がしたか、と
汚
(
きたな
)
らしいが、さすがに
味噌汁
(
みそしる
)
の
香
(
か
)
が、
芬
(
ぷん
)
とすき
腹
(
はら
)
をそゝつて
香
(
にほ
)
ふ。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
物置は二間に二間半、中はガラクタと炭俵だけで、何の変哲もなく、
嘗
(
な
)
めるように見ましたが、金の茶釜などはどこにもありません。
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ええ、おちついているな。
脂
(
やに
)
を
嘗
(
な
)
めさせられた蛇のように往生ぎわが悪いと、もう御慈悲をかけちゃあいられねえ。さあ申し立てろ。
半七捕物帳:05 お化け師匠
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
舌の上にはとろとろした血のりが
溜
(
たま
)
っていたではないか。彼はその舌で、ポトポトと赤いしずくを
垂
(
た
)
らしながら、口辺を
嘗
(
な
)
め廻した。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「そんぢや
爺
(
ぢい
)
が
砂糖
(
さたう
)
でも
嘗
(
な
)
めろ」とおつぎは
與吉
(
よきち
)
を
抱
(
だい
)
て
籰棚
(
わくだな
)
の
袋
(
ふくろ
)
をとつた。
寡言
(
むくち
)
な
卯平
(
うへい
)
は
一寸
(
ちよつと
)
見向
(
みむ
)
いたきりで
歸
(
かへ
)
つたかともいはない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
およそありとあらゆる社会の酸いと甘いとを
嘗
(
な
)
め尽して、今は弱いもの貧しいものゝ味方になるやうな、涙脆い人と成つたのである。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
もちろん僕は大いに謹聴すると誓ったが、これから思うと、その事件において帆村は、よほど、にがにがしい苦杯を
嘗
(
な
)
めたものらしい。
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
仁太郎は、年上の羅宇屋も、本職の七之助も、
土蔵
(
ぶんこ
)
破りは、名人だろうが、頭が低いな——とすぐ
嘗
(
な
)
めてしまった。で、弁をふるって
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ええ、おこついているな。
脂
(
やに
)
を
嘗
(
な
)
めさせられた蛇のように往生際が悪いと、もうお慈悲をかけちゃあいられねえ。さあ。申立てろ。
半七雑感
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「女の
宜
(
よ
)
い
処
(
ところ
)
を味わうには、それ以上の
厭
(
いや
)
な処を多く
嘗
(
な
)
めなければならない。」とは、女の価値をあまりみとめない氏の
持説
(
じせつ
)
です。
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
魂を打込んだ真心が幾度か無惨に裏切られ、悩みに悩みを
嘗
(
な
)
めて鍛えられた心がいつわりやすい目的に目をくれなくなるのである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
嘗
(
な
)
むるとも、屈せず
撓
(
たゆ
)
まず、ついの勝利をはかるこそまことの大将とは申すべし、はやく本城へ退きたまえ、吉信しんがりをつかまつる
死処
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私が
間
(
なか
)
にはいって
嘗
(
な
)
めた苦労の十が一だって、あなたには察しができやしません。私はどれほど皆から責められたかしれないのですよ。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
二度と再びフロールとのあんな経験を
嘗
(
な
)
めたくないという恐ればかりが先に立って、人と交わることが苦しくなってくるからであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
即刻太田の補充をすること、太田の検挙のことをビラに書いれて倉田工業の全従業員に訴えること。私は原稿を鉛筆を
嘗
(
な
)
め/\書いた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
話がすこし脱線したが、其日庵主は玄洋社を離脱してから海外貿易に着眼し、
上海
(
シャンハイ
)
や
香港
(
ホンコン
)
あたりを馳けまわって
具
(
つぶさ
)
に辛酸を
嘗
(
な
)
めた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ラザルスてふ靴工、蜜を
嘗
(
な
)
めるところへ蠅集まるを一打ちに四十疋殺し、刀を作って一撃殺四十と銘し、武者修業に出で泉の側に睡る。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それをお皿の上に
逆
(
さか
)
さにして笠の裏を出して砂糖を少し振りかけておくと蠅がその匂いを
嗅
(
か
)
ぎつけて沢山
聚
(
あつま
)
って来てその
液
(
つゆ
)
を
嘗
(
な
)
めます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
あの星を、ほしいと思っていた。それでは、いつか必ず、幻滅の苦杯を
嘗
(
な
)
めるわけだ。人間のみじめ。食べる事ばかり考えている。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
地を這ふ
爬虫
(
むし
)
の一生、
塵埃
(
ごみ
)
を
嘗
(
な
)
めて生きてゐるのにも
譬
(
たと
)
ふれば譬へられる。からだは立つて歩いても、心は多く地を這つて居る。
文学に現れたる東北地方の地方色:(仙台放送局放送原稿)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
人から
憐
(
あわれ
)
まれているとおりに確かに自分は寂しい、自分の
嘗
(
な
)
めているものは
苦
(
にが
)
いほかの味のあるものではないと夫人は思ったが
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
嘗
(
な
)
めて見るとそれが
真塩
(
ましお
)
であり、その僧は弘法大師であったと、古い記録にも書いてあるそうです。(安房志。千葉県安房郡豊房村神余)
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
維新の際南部藩が朝敵にまわったため、母は十二、三から流離の苦を
嘗
(
な
)
めて、結婚前には東京でお針の賃仕事をしていたということである。
私の父と母
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
斯
(
こ
)
うして、世の辛酸を
嘗
(
な
)
めつくした中老の
亜米利加
(
アメリカ
)
女と、坊ちゃん育ちで、
我儘
(
わがまま
)
で天才的な若いスコットランド人との結婚生活が始まった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「歴代のうちで私は一番愛されたかどうかは存じませんが、ただ私が一番よく
嘗
(
な
)
められた大統領だつたことだけは事実です。」
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
美を主眼とする者があるなら、彼はその美から棄てられる矛盾を
嘗
(
な
)
めるであろう。何故なら工藝においては、用のみが美を産むからである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
どんな苦杯を
嘗
(
な
)
めて来たでしょう! それも何のためでしょう? みんな、私が正義を守ったからです、良心に恥じたくなかったからです
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
が、勝平は戸外のさうした物音に、少しも気を取られないで、瑠璃子が
酌
(
つ
)
いでやつた酒を、チビリ/\と
嘗
(
な
)
めながら、熱心に言葉を継いだ。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
癇癪持で酒乱の父に兄や姉は叱られた怖い思い出ばかり残っているようだが、末ッ子のぼくは父から
嘗
(
な
)
められるみたいに愛された記憶が強い。
さようなら
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
お銀ちやんは、唾の泡立つた唇を
嘗
(
な
)
めまはしながら、まだ何かを叫ぼうとしてゐたが、やがてその口をおきみの方へ向けて
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
お前さんたちに、いつまでもいいようにされている子供じゃないんだぞ。東京でもうさんざっぱら塩を
嘗
(
な
)
めて来ている私だ。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
民族は抑圧に対抗するとき最も
強靭
(
きょうじん
)
であり、民族的英雄や民族の伝説は、多くは民族の繁栄よりも、相共に
嘗
(
な
)
めた苦しみと
闘
(
たたか
)
いの記念である。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
「王の居候」だからおもしろい。「
置候
(
おきさふらふ
)
」の相馬小次郎は我武者に強いばかりの男では無い、幼少から浮世の塩はたんと
嘗
(
な
)
めて居る
苦労人
(
くらうにん
)
だ。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
蒔
(
ま
)
くものは、
穫
(
か
)
らざるべからず。今や徳川幕府も、二百年来の悪因果たる鎖国の
苦
(
に
)
がき経験を
嘗
(
な
)
めねばならぬ時とはなれり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
支那では
人神牛首
(
じんしんぎうしゆ
)
の
神農氏
(
しんのうし
)
が
赭鞭
(
かはむち
)
を以て草木を
鞭
(
むちう
)
ち、初めて百草を
嘗
(
な
)
めて、医薬を知つたといひ、
希臘
(
ギリシヤ
)
ではアポローの子、エスキユレピアスが
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
田舎
(
いなか
)
の書生、国を
出
(
い
)
ずるときは、難苦を
嘗
(
な
)
めて三年のうちに成業とみずから期したる者、よくその心の約束を
践
(
ふ
)
みたるや。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ジャックリーヌはその新たな
苦悶
(
くもん
)
を一人で
嘗
(
な
)
めた。それから脱したのは苦悶が鈍ってきたときにであった。しかも苦悶は愛とともに鈍ってきた。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
乙下人 はて、うぬが
指
(
ゆび
)
を
能
(
よ
)
う
嘗
(
な
)
めぬやうな
奴
(
やつ
)
は
不可
(
いけ
)
ぬ
料理人
(
れうりにん
)
でござります。それゆゑ
指
(
ゆび
)
を
能
(
よ
)
う
嘗
(
な
)
めぬ
奴
(
やつ
)
は
採用
(
とりあ
)
げませぬ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
梅子は思はず
赧然
(
たんぜん
)
として
愧
(
は
)
ぢぬ、
彼女
(
かれ
)
の良心は
私語
(
さゝや
)
けり、
汝
(
なんぢ
)
曾
(
かつ
)
て其の婦人の為めに心に
嫉妬
(
しつと
)
てふ経験を
嘗
(
な
)
めしに非ずやと
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
フリードリヒ大王当時は幅は広いが(軍隊は広正面にて前進し得た)ほとんど構築せられない道路のみで物資の追送には殊に大なる困難を
嘗
(
な
)
めた。
戦争史大観
(新字新仮名)
/
石原莞爾
(著)
その時までは何とも思はなかつたが、衣服の端で寒い外気を
被
(
おほ
)
はうとした刹那に、某年某月の旅に
嘗
(
な
)
めた異境での悲みが突然心に
蘇
(
よみがへ
)
つたのである。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
しかしわれわれ
下戸
(
げこ
)
の経験を言ふて見ると、日本の国に生れて日本酒を
嘗
(
な
)
めて見る機会はかなり多かつたにかかはらず
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
と
出鱈目
(
でたらめ
)
の名を呼び立てた。ポチは、砂を蹴って父の傍から離れると、一飛び体をくねらせ、傍の晴子の頬の辺を
嘗
(
な
)
めた。父がまるでむきな調子で
海浜一日
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
われらが冷たい思索の世界に、こうして凡俗の知らぬ苦労を
嘗
(
な
)
めているのは「真」のためでなく、「美」のためでなく、じつに「善」のためである。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「学問は上達しても、踊が、あれじゃあなってねえな。お
前
(
めえ
)
たちのは、踊ってるんじゃなくて、畳を
嘗
(
な
)
めてるんだ。」
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
惟
(
おもんみ
)
れば誰が保ちけん東父西母が
命
(
いのち
)
、誰が
嘗
(
な
)
めたりし不老不死の藥、電光の裏に假の生を寄せて、妄念の間に露の命を苦しむ、
愚
(
おろか
)
なりし我身なりけり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
鄙吝
(
ひりん
)
でもあったろうが、鄙吝よりは下女風情に甘く
嘗
(
な
)
められてはという
難
(
むず
)
かし屋の理窟屋の腹の虫が承知しないのだ。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
東京の帝國大學には、アイノ語學者を以て任ずる人もあるがすべてがバチエラの
糟粕
(
そうはく
)
を
嘗
(
な
)
めてゐるものばかりで、それも
半可通
(
はんかつう
)
に滿足してゐること。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
嘗
漢検準1級
部首:⼝
14画
“嘗”を含む語句
大嘗
新嘗
新嘗祭
未嘗
舌嘗
嘗試
一嘗
大嘗祭
臥薪嘗胆
大嘗会
新嘗忌
神嘗祭
総嘗
神嘗
相嘗
總嘗
践祚大嘗祭
飴嘗
新嘗会
新嘗屋
...