“寒椿”の読み方と例文
読み方割合
かんつばき100.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
家付きのおぬいは、灯のそばに、凍った寒椿かんつばきみたいに、じっと、俯向いていた。彦太は、こんな美しい襟あしを見たことはなかった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
珊瑚さんご象眼ぞうがんと見えるのは寒椿かんつばきの色であろう、二つ三つ四つと紅い色どりが数えられるところになんの鳥か、一羽キキと鳴いて枝をくぐった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ツィ——と寂しそうに鳴いて、目白鳥めじろただ一羽、雪をかついで、くれないに咲いた一輪、寒椿かんつばきの花に来て、ちらちらと羽も尾も白くしながら枝をくぐった。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
棚田氏からでも聞いていたとみえて、今雨戸を開けるから、上がってお茶でも一つ召し上がってと、しつこく勧めるのを断って、その辺に咲いている寒椿かんつばきの横手から裏庭へかけて、私は足を運んでみました。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
机の上にお銀様の好きな寒椿かんつばきが一輪、留守居顔にさされてあるばかりです。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この痩所帯やせじょたいに金屏風だけが光っている、これはお寺の什物じゅうもつの一つを貸してくれたもので、緑青ろくしょうの濃いので、青竹がすくすくと立っている間に寒椿かんつばきが咲いている、年代も相当に古びがついて、絵も落着いた筆である。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
炬燵に火をおこした政どんは、このへんで少しいい気持になったものと見え、いつもお雪ちゃんがするようにして、炬燵を前にみこしを据えてしまうと、半ば折りめぐらされた金屏風の緑青ろくしょうの青いのと、寒椿かんつばきの赤いのが快く眼を刺激してうつらうつらした気分に襲われたものです。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)