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咳
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せき
ふりがな文庫
“
咳
(
せき
)” の例文
彼女は眼を
潤
(
うる
)
ませてその言葉を繰り返した。弱い苦しそうな声で、そして力のない
咳
(
せき
)
をした。貞吉も同意見らしく何も言わなかった。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
源氏は内心に喜びながら宮のお居間を辞して出ようとすると、また一人の老人らしい
咳
(
せき
)
をしながら
御簾
(
みす
)
ぎわに寄って来る人があった。
源氏物語:20 朝顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
まむかうの
黒
(
くろ
)
べいも
櫻
(
さくら
)
がかぶさつて
眞白
(
まつしろ
)
だ。さつと
風
(
かぜ
)
で
消
(
け
)
したけれども、しめた
後
(
あと
)
は
又
(
また
)
こもつて
咽
(
む
)
せつぽい。
濱野
(
はまの
)
さんも
咳
(
せき
)
して
居
(
ゐ
)
た。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そこへ
咳
(
せき
)
ばらいの声がして、ドアが開いて、黒川先生が入って来られた。君も知っている様に、先生の
風采
(
ふうさい
)
は少しも学者らしくない。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と——二人がことばもなく、
寂然
(
じゃくねん
)
と、坐り合って、花世の帰るのを待っていると、二間ほど隔てた奥の
室
(
へや
)
で、人の
咳
(
せき
)
ばらいが聞えた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
ゆき子は
咳
(
せき
)
がとまらないのか、顔を真赤にして咳きこんでゐる、ゆき子は、咳止めの薬を飲み、暗い部屋のなかに、眼を開けてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
よく慈善の目的で
素人
(
しろうと
)
芝居を催して、自身は老将軍の役を買って出るのだったが、その際の
咳
(
せき
)
のしっぷりがすこぶるもって滑稽だった。
イオーヌィチ
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
十時を過ぎたので、今日はもう
諦
(
あきら
)
めようかと思ったとき、急におえいが
咳
(
せき
)
ばらいをし、乾いた声で、殆んど
嘲笑
(
ちょうしょう
)
するように云った。
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして私と清ちゃんが年も背丈も誰よりも小さかった。柳屋の
姉弟
(
きょうだい
)
にはお
母
(
っか
)
さんがなく病身のお
父
(
とっ
)
さんが、いつでも奥で
咳
(
せき
)
をしていた。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
「わたくしとても何気ない朝の
麗
(
うる
)
わしさには、こころから
嬉
(
うれ
)
しくぞんじています。貞時さまのお
咳
(
せき
)
のこえまで覚えましてございます。」
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そう云った時、少年の
咽喉
(
のど
)
から、かすれた、老人の
咳
(
せき
)
のような、子供らしくない笑いごえが出て、それが異様に屋根うらへ響いた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、一口吸うや否やたちまちゴホンゴホン! と烈しい
咳
(
せき
)
をして、まったく初めて煙草というものを経験したらしい様子であった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
咳
(
せき
)
が彼女の息をつまらせた。しかし、おどかしは効を奏した。見うけたところ、みんなカチェリーナをいささか恐れているらしかった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そして平素からの軽いかわいた
咳
(
せき
)
が増してきた。彼女は時々隣のマルグリットに言った。「
触
(
さわ
)
ってごらんなさい、私の手の熱いこと。」
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「ウンと借りができて、もう行けねえんだ。」と言いさま、
咳
(
せき
)
をして苦しい息を内に引くや、思わずホッと疲れ果てたため息をもらした。
窮死
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お父様がさうおつしやると、耕一君が立上つて、「エヘン」と一つ
咳
(
せき
)
払ひをして、ニコ/\笑ひながら、次のやうに
云
(
い
)
ひました。
母の日
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
高岡軍曹
(
たかをかぐんそう
)
は
暫
(
しばら
)
くみんなの
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
てゐたが、やがて
何時
(
いつ
)
ものやうに
胸
(
むね
)
を
張
(
は
)
つて、
上官
(
じやうくわん
)
らしい
威嚴
(
いげん
)
を
見
(
み
)
せるやうに
一聲
(
ひとこゑ
)
高
(
たか
)
く
咳
(
せき
)
をした。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
山内謙三は、チョコナンと人形の樣に坐つて、時々死んだ樣に力のない
咳
(
せき
)
をし乍ら、
狡
(
ずる
)
さうな眼を輝かして
温
(
おと
)
なしく聞いてゐる。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
持病の
咳
(
せき
)
で引きこもりがちな金兵衛まで上の伏見屋からわざわざ見に出かけて来て、いつのまにか本陣の門前には多勢の人だかりがした。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
四畳半と覚しき
間
(
ま
)
の中央に床をのべて糸のように痩せ細った身体を横たえて時々
咳
(
せき
)
が出ると枕上の白木の箱の蓋を取っては吐き込んでいる。
根岸庵を訪う記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
女はそこの入口の雨戸をそうと開け、それから
格子戸
(
こうしど
)
を開けて入った。哲郎も続いて入ったが、下の人に知れないようにと
咳
(
せき
)
もしなかった。
青い紐
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
眠る前に、彼は
掛布団
(
かけぶとん
)
をかぶって、こんこん
咳
(
せき
)
をする。
喉
(
のど
)
を掃除するためである。しかし、鼾をかくのは、ことによると、鼻かもしれない。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
主人はほんとうに
懐
(
なつか
)
しいように、うむうむとうなずきながら胡弓に耳を傾けていたが、時々苦しそうな
咳
(
せき
)
が続いて、胡弓の声の邪魔をした。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そのうち大阪に
咳逆
(
がいぎゃく
)
が流行して、木賃宿も
咳
(
せき
)
をする人だらけになった。三月の初に宇平と文吉とが感染して、熱を出して寝た。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
血を連想した時高柳君は
腋
(
わき
)
の下から何か冷たいものが
襯衣
(
シャツ
)
に伝わるような気分がした。ごほんと取り締りのない
咳
(
せき
)
を一つする。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
袴
(
はかま
)
に編みあげの靴をはいている男の老教師を、まんまとだました。自分の席についてからも、少年はごほごほと
贋
(
にせ
)
の
咳
(
せき
)
ばらいにむせかえった。
逆行
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
僕らのやりとりをしばらく横目で
睨
(
にら
)
んでいましたが、頃あいを見はからって、ぐふんとわざとらしい
咳
(
せき
)
をして、おもむろに
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
人々は両手を
膝
(
ひざ
)
の上に突っ張り、ひどい
咳
(
せき
)
の発作のときのように身体をゆするのだった。回廊の上にいる何人かさえ笑った。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
しかし一口飲むとひどく
咳
(
せき
)
が出たので、これからは自分が飲みたいと云っても、飲ませてくれては困ると、女に言い付けた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
「
厭
(
いや
)
よ、厭よ、ヘレン!」私は胸が一杯になり、何も云へなくなつた。私が泣くまいと懸命になつてゐる間に、ヘレンには
咳
(
せき
)
の
發作
(
ほつさ
)
が起つた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
小柄
(
こがら
)
な
爺
(
ぢい
)
さんは
突然
(
いきなり
)
疊
(
たゝみ
)
へ
口
(
くち
)
をつけてすう/\と
呼吸
(
いき
)
もつかずに
酒
(
さけ
)
を
啜
(
すゝ
)
つてそれから
強
(
つよ
)
い
咳
(
せき
)
をして、ざら/\に
成
(
な
)
つた
口
(
くち
)
の
埃
(
ほこり
)
を
手拭
(
てぬぐひ
)
でこすつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
大した
創
(
きず
)
ではないが
容体
(
ようだい
)
が思わしくないから、お浜が引続き郁太郎を
介抱
(
かいほう
)
している間に、竜之助は一室に
閉籠
(
とじこも
)
ったまま
咳
(
せき
)
一つしないでいるから
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なんだ、これは? 俺はこごみこんで、
咳
(
せき
)
払いをした。すると俺の口から、がっと真赤なヤイン(血)があふれ出て来た。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
同じ刺撃性の食物でも
唐辛子
(
とうがらし
)
や
山葵
(
わさび
)
の類を
咳
(
せき
)
の出る病人に食べさせたらいよいよ気管を刺撃して咳を増さしめるけれども
生姜
(
しょうが
)
は咳を
鎮静
(
ちんせい
)
させる。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
時どき力のない
咳
(
せき
)
の音が
洩
(
も
)
れて来る。昼間の知識から、私はそれが露路に住む魚屋の咳であることを聞きわける。この男はもう商売も
辛
(
つら
)
いらしい。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
尻に毛なくして尾短し、手足人のごとくにて能く
竪
(
た
)
って行く、その声
嗝々
(
かくかく
)
(日本のキャッキャッ)として
咳
(
せき
)
するごとし。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
人間というものは、たとえ岩の上に立っているにしても、やはり立つのは自分の両足ですからなあ。僕はこのとおり、どうも
咳
(
せき
)
が出ていかんです。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
魚の
腸
(
はらわた
)
が腐ったような異臭が、身の
周
(
まわ
)
りに
漂
(
ただよ
)
っているのだった。胸の中は、
灼鉄
(
やきがね
)
を突込まれたように痛み、それで
咳
(
せき
)
が
無暗
(
むやみ
)
に出て、一層苦しかった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
休暇になっても、安斉先生は相変わらずご
精励
(
せいれい
)
だ。朝から学監室に
詰
(
つ
)
めている。先生の
咳
(
せき
)
ばらいがきこえるきこえないでは若様がたの心得がちがう。
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それから彼女は、もう答弁を受けないので、
薪
(
まき
)
のない火のように静まった。しばらくして、父は
咳
(
せき
)
払いをして言った。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
蓬々
(
ぼうぼう
)
と乱れた
髪毛
(
かみ
)
と
髯
(
ひげ
)
の中から、血走った両眼をギョロギョロと
剥
(
む
)
き出して、洗濯板みたいに並んだ
肋骨
(
あばらぼね
)
を撫でまわしてゼイゼイゼイゼイと
咳
(
せき
)
をした。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこに顔をそろえた総計五名のうち、ぼくのほかの男たちはいい合わせたようにかなり強度の胸部疾患者ばかしであり、陰気な
咳
(
せき
)
ばかりつづけていた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
「お
身体
(
からだ
)
でも悪くて被居るのですか。」とたえ子が尋ねた。二人共叔父が時々軽い
咳
(
せき
)
をしているのに気附いていた。
恩人
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
蚊帳
(
かや
)
の外のランプに照らされた清三の顔は
蒼白
(
あおじろ
)
かった。
咳
(
せき
)
がたえず出た。熱が少し出てきたと言って、
枕
(
まくら
)
もとに持って来ておいた水で
頓服剤
(
とんぷくざい
)
を飲んだ。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
小柄で
痩
(
や
)
せて
皺
(
しわ
)
だらけで、見る影もない上に、ぜんそくの持病があるらしく、引つきりなしに
咳
(
せき
)
をしてをります。
銭形平次捕物控:176 一番札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
絽
(
ろ
)
ざしの手をとめて、たとえば、作り
咳
(
せき
)
をするとか耳に立つものの音をたてるかして、自分ながらしらずしらず湊の注意を自分に振り向ける所作をした。
鮨
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つい隣の隅の方の陰気くさい部屋にごろごろしている一人の青年の、力ない
咳
(
せき
)
の声が、時々うっとりと東京のことなどを考えているお増の心を
脅
(
おびや
)
かした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
新島君は当時より既によほど健康を損じておられたものと見えて、顔色
蒼白
(
そうはく
)
体躯
(
たいく
)
羸痩
(
るいそう
)
という風が見えた。
屡々
(
しばしば
)
咳
(
せき
)
をしておられたのが今なお耳に残っている。
新島先生を憶う:二十回忌に際して
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「エヘン。」と、おじいさんの
咳
(
せき
)
ばらいがしました。
女中
(
じょちゅう
)
が、なにかおじいさんに
話
(
はな
)
している
声
(
こえ
)
がきこえます。
日の当たる門
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
夜ひどい
咳
(
せき
)
の発作におそわれたり、衰弱は目に見えて著しかった。だが、彼の目には妻の「死」がどうしても、はっきりと目に見えて迫っては来なかった。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
“咳(
咳嗽
)”の解説
咳嗽(がいそう、en: cough)とは、医療分野における症状の一種であり、肺や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動である。一般的には咳(せき)という。
(出典:Wikipedia)
咳
漢検準1級
部首:⼝
9画
“咳”を含む語句
咳嗽
咳声
咳払
謦咳
咳枯
空咳
咳嗄
癆咳
咳拂
一咳
咳一咳
打咳
百日咳
癆咳病
御咳
咳入
労咳
咳唾
咳込
小咳
...