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初湯
私は
昨年の十二
月芝愛宕下桜川町へ
越しまして、
此春は
初湯に
入りたいと
存じ、つい
近辺の
銭湯にまゐりまして「
初湯にも
洗ひのこすや
臍のあか」
おなじく
二日の
夜、
町の
名を
言ひて、
初湯を
呼んで
歩く
風俗以前ありたり、
今もあるべし。たとへば、
本町の
風呂屋ぢや、
湯が
沸いた、
湯がわいた、と
此のぐあひなり。
「赤さんは大きな男のお
児ですよ。」と、産婆は死児をそっと次の
室へ持ち出した。そこには母親が、畳の上に
桐油を敷き詰めて、
盥に
初湯か
湯灌かの加減を見ていた。