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咳
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せ
ふりがな文庫
“
咳
(
せ
)” の例文
魚屋が
咳
(
せ
)
いている。
可哀
(
かわい
)
そうだなあと思う。ついでに、私の咳がやはりこんな風に聞こえるのだろうかと、私の分として聴いて見る。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
一時は腰が抜けて起つことも出来ない。寝ていても時を
頻
(
しき
)
って
咳
(
せ
)
き上げて来て
気息
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
くことも出来ない。実に恐ろしく苦しみました。
幕末維新懐古談:50 大病をした時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そして彼はまた新たに激しく無性に
咳
(
せ
)
きこんだ。グラチアはびっくりした。彼女はちょっと彼が無理に咳をしてるような気がした。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
久しぶりに十兵衛は、父の血色に壮者のような
紅味
(
あかみ
)
を見た。しかし云い終るとすぐ、
鬢髪
(
びんぱつ
)
の
霜
(
しも
)
をそそげ立てて烈しく
咳
(
せ
)
き
入
(
い
)
った。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ステージに出る姿は、ほとんど二つ折になり、絶えず
咳
(
せ
)
き続けていた。が婦人達はそれにもかかわらず、少しも彼に休息を与えなかった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
と、彼は軽く
咳
(
せ
)
き入つた、フラ/\となつた、しまつた!
斯
(
か
)
う思つた時には、もうそれが彼の
咽喉
(
のど
)
まで押し寄せてゐた——。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
こう云って激しく
咳
(
せ
)
きこみ、そのまま向うへ去っていった。苦しそうな精のない咳のこえが、ずっと遠くなるまで聞えていた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それが政治家めいた笑ひ方であらう、彼は
稍々
(
やや
)
細い身体を反り身になつて豪放に笑ふのだが、途中で
咳
(
せ
)
いて、苦しさうに身体を曲げたりした。
大凶の籤
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
私が釣のお話を伺いに出ましたというと、当時同優は持病の喘息の烈しい時で、挨拶よりも
咳
(
せ
)
きいる方が先で、気の毒なほど苦しそうであった。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
日が暮れるに随って、梢はぴったりと寄り添って、
呼吸
(
いき
)
を殺して川のおもてを見詰める、川水はときどき
咽
(
むせ
)
ぶように、ごぼごぼと
咳
(
せ
)
きこんで来る。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
M君は、風をくらうと、
暫
(
しば
)
らくは激しく
咳
(
せ
)
きこんだ。その
癖
(
くせ
)
、どっか家ン中か、
木蔭
(
こかげ
)
に入ろうと云っても
諾
(
き
)
かなかった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
姉はまた
咳
(
せ
)
き出した。その発作が一段落片付くまでは、さすがの比田も黙っていた。長太郎も茶の間を出て来なかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
寝すごしたのだろうと思い、わしは自分で
煙草盆
(
たばこぼん
)
を引き寄せ、マッチで
煙管
(
キセル
)
に火を
点
(
つ
)
け一二服吸い、
咳
(
せ
)
き入ったが、その音でも奈世は起きて来ない。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
やい、この
態
(
ざま
)
はどうしたのだ。と口なる手拭
退
(
の
)
けてやれば、お録はごほんと
咳
(
せ
)
き入りて、「はい、
難有
(
ありがと
)
うございます。 ...
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腰は二
重
(
え
)
に崩れ、
咳
(
せ
)
いたり痰を吐いたり、水
洟
(
ばな
)
をすすり上げたり、
涎
(
よだれ
)
を流したり老醜とはこのことかむしろ興冷めてしまったが、何れにしても怪しい。
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
元来
咽喉
(
のど
)
を害してゐた私は、
手巾
(
ハンケチ
)
を顔に当てる暇さへなく、この煙を満面に浴びせられたおかげで、
殆
(
ほとんど
)
息もつけない程
咳
(
せ
)
きこまなければならなかつた。
蜜柑
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
病母の
咳
(
せ
)
く声がする、父の鼾がつまりそうにしてまた大きく鳴る、国吉が寝言をいう、鼠が畳の上を駈け廻る。お小夜はそんな物音が一々耳にとまる。
新万葉物語
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「およし、ソーニャ、およし!」彼女は急ぎ込んで息を切らし、ごほんごほん
咳
(
せ
)
き入りながら、早口にこう叫んだ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
部屋に戻ると、一間はなれた部屋の、菊之丞の、皺枯れた咽喉が軽く
咳
(
せ
)
くのがきこえて、ポンと、灰ふきの音——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「まったく寒うござんすよ。」と、古河君は
咳
(
せ
)
きながら答えた。「こっちには長く御滞在の御予定ですか。」
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
喘息
(
ぜんそく
)
で
咳
(
せ
)
き入りながら玄関に出て来て、松次郎がいないのを見ると、おや、
今日
(
きょう
)
はお前一人か、じゃまあ上にあがってゆっくりしてゆけと親切にいってくれた。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
そいつを吐こうと思って、
顎
(
あご
)
をグッと前に伸ばす
途端
(
とたん
)
に、咽喉の奥が急にむずがゆくなってエヘンと
咳
(
せ
)
いたらば、ドッと温いものが
膝頭
(
ひざがしら
)
の前にとび出してきた。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こんこん
咳払
(
せきばら
)
いするのが癖で、「自分等の年をとったことはさ程にも思いませんが、弘さんや捨吉の大きく成ったのを見ると驚きますよ」と言って復た
咳
(
せ
)
いた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
夢うつつの
裡
(
うち
)
に、こんこんと
咳
(
せ
)
き込んで、そのうちに、ごろごろと、何か、胸の中で鳴るものがある。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼が
咳
(
せ
)
き入つて叫んだ。明子が
枕許
(
まくらもと
)
のコップを口に当てがつてやると彼は待ち兼ねたやうに二度目の多量の
喀血
(
かっけつ
)
をした。血がコップを
溢
(
あふ
)
れて明子の手の甲を汚した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
多勢が四方から、
咳
(
せ
)
き入る先生をなでるやら、
擦
(
さす
)
るやら、
半暗
(
はんあん
)
のひと
間
(
ま
)
のうちが、ざわざわ騒ぎたったすきに
乗
(
じょう
)
じて、お蓮さまはするりと脱け出て、廊下に立ちいでた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
見ると山羊髯のおやじは仕事が閑散だと見えて、大阪の新聞の経済欄を読みながら、朝日を吸っては
咳
(
せ
)
き入り、咳き入っては水ッ
洟
(
ぱな
)
をすすり上げている。タヨリない事夥しい。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
やっと立ち上がる。
咳
(
せ
)
き込み、
唾
(
つば
)
を吐き、息をつまらせ、眼がかすみ、頭がぼうっとする。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
青年は、それに答えようとでもするように、
身体
(
からだ
)
を心持起しかけた。その途端だった。苦しそうに
咳
(
せ
)
き込んだかと思うと、
顎
(
あご
)
から洋服の胸へかけて、流れるような多量の血を吐いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
村子 ……(ノドを見せて、ウィスキイの口飲みをして)ウウッ! ウ!(
咳
(
せ
)
く)
胎内
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
中将の書斎には、
父子
(
おやこ
)
ただ二人、再び帰らじと
此家
(
ここ
)
を
出
(
い
)
でし日別れの
訓戒
(
いましめ
)
を聞きし時そのままに、浪子はひざまずきて父の
膝
(
ひざ
)
にむせび、中将は
咳
(
せ
)
き入る
女
(
むすめ
)
の
背
(
せな
)
をおもむろになでおろしつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
おどろいて笑いながら、つづけて
咳
(
せ
)
きをした。そこは零下三十五度だった。雪が珍しいというのではなく、こんなに雪の降る、このモスクヷの生活が、伸子の予感をかきたてるのであった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と、行列は動き出したが、今度は信玄が先頭に立って蔵の中へ案内する。安置してしまうと行列は静かに蔵から外へ出る。この間少しも
喋舌
(
しゃべ
)
ることは出来ない。
咳
(
せ
)
くことさえ
憚
(
はばか
)
るのである。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一頻
(
ひとしき
)
り病人の
咳
(
せ
)
きあげるのを、爺さんは
後方
(
うしろ
)
から背を撫でてやつたりした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
父
(
ちゝ
)
の
一昨年
(
をとゝし
)
うせたる
時
(
とき
)
も、
母
(
はゝ
)
の
去年
(
きよねん
)
うせたる
時
(
とき
)
も、
心
(
こゝろ
)
からの
介抱
(
かいはう
)
に
夜
(
よる
)
も
帶
(
おび
)
を
解
(
と
)
き
給
(
たま
)
はず、
咳
(
せ
)
き
入
(
い
)
るとては
脊
(
せ
)
を
撫
(
な
)
で、
寢
(
ね
)
がへるとては
抱起
(
だきおこ
)
しつ、
三月
(
みつき
)
にあまる
看病
(
かんびやう
)
を
人手
(
ひとで
)
にかけじと
思召
(
おぼしめ
)
しの
嬉
(
うれ
)
しさ
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
咳
(
せ
)
き込みながら、二郎が非常な恐怖に撃たれて、あえぎあえぎ叫んだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこまで云った彼はまるで言葉に
噎
(
む
)
せ返るように
咳
(
せ
)
きこんだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
老人は鋭い痛ましい笑いとともに
咳
(
せ
)
き込み、そして言った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
秋蘭は
咳
(
せ
)
き上げて来た理論に詰ったように眼を光らせた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
何あに、反省を促す為めに、
態
(
わざ
)
と
咳
(
せ
)
いたのだけれど。
冠婚葬祭博士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
女童
(
めわらべ
)
は
繁
(
しじ
)
に
咳
(
せ
)
き入る寒き夜を
小糠
(
こぬか
)
小星
(
こぼし
)
も風に冱えにき
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
暗い外套の下で、ゆき子は、激しく
咳
(
せ
)
きこんでゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
母親のほうは
咳
(
せ
)
きこんで何も聞こえないのだ。
変身
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
彼は芦の茂みへ分けいり、
咳
(
せ
)
きこみながら、浅い沼を渡った。石灰粉を深く吸いこんだために、咳はいつまでも止らなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お角はさう
言
(
い
)
つてサメザメと泣くのです。次の間ではあの晩から
風邪
(
かぜ
)
を引いた幸三郎が、弱々しくも
咳
(
せ
)
き込んで居ります。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
命松丸がカユ
碗
(
わん
)
を下において
咳
(
せ
)
き込むと、雀は、彼の肩から兼好の肩へピラと移って、餌をネダるような
媚態
(
びたい
)
を作る。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
元来
咽喉
(
のど
)
を害していた私は、
手巾
(
ハンケチ
)
を顔に当てる暇さえなく、この煙を満面に浴びせられたおかげで、
殆
(
ほとんど
)
息もつけない程
咳
(
せ
)
きこまなければならなかった。
蜜柑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは奥の部屋部屋から煙草の煙の波が絶えず流れ込んで、不幸な肺病やみの女をいつまでも悩ましげに
咳
(
せ
)
き入らせるので、それを少しでも防ぐためだった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
激しく
咳
(
せ
)
きこんだ。
老婢
(
ろうひ
)
のザロメが駆けつけてきた。彼女は老人が死にかけてるのかと思った。彼はなお続けて、涙を流し
咳
(
せ
)
きこみ、そしてくり返していた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼女は、いくたびかはげしく
咳
(
せ
)
きいりながら、虫のような声でくりかえしくりかえし歎願し、椋島の助命を頼んだのであった。しかし父博士は一言も口を開かなかった。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
“咳(
咳嗽
)”の解説
咳嗽(がいそう、en: cough)とは、医療分野における症状の一種であり、肺や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動である。一般的には咳(せき)という。
(出典:Wikipedia)
咳
漢検準1級
部首:⼝
9画
“咳”を含む語句
咳嗽
咳声
咳払
謦咳
咳枯
空咳
咳嗄
癆咳
咳拂
一咳
咳一咳
打咳
百日咳
癆咳病
御咳
咳入
労咳
咳唾
咳込
小咳
...