がい)” の例文
で、すぐに自分の座へ戻りかけるかのような物腰に見えた時、秀吉は、がい一声いっせいして、自分の膝に三法師君が在ることを——
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松本はがい一咳いちがいしつ「我が鍛工かぢこう組合の評議員篠田長二君の身上について、一個の動議を提出するんですから、先づ同君にむかつて暫時退席を要求致します」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今日きょうは九月二十七日、城山没落ぼつらくは三十三年前の再昨日さいさくじつであった。塩田君はやおら琵琶をかかえ、眼を半眼はんがんに開いて、がい一咳。外は天幕総出で立聞く気はい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
最も回旋盤ルウレットに近い椅子に割り込み、まさに美膳に臨もうとする美食家のような会心の笑みを浮べながら、ゆうゆうとテーブルの風景を観賞していたが、やがて、コン吉はがいがい
がい一咳——という古い形容詞が、この倉繁大一郎の話のあいの手には、最も適切な表現でした。
中根なかねはあのとき自分じぶん危急ききふわすれてぢうたかげて『ぢうつてくれ‥‥』と、おれむかつてつたのだ。すなはぢうあいまも立派りつぱ精神せいしんしめしたのだ‥‥」と、軍曹ぐんそうがいがいした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
カチン——まずがいがい、ひとつ叩いた、こう講釈師らしく胸を反らして。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「そもそも鯨というものは」……というのでがい一咳。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここで彼は一がいしたが
そしてがい一咳して
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人間同志の今の不安を見過し得ない憂世ゆうせいの血が、その底を流れている。がい一咳いちがいして
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桃川燕之助は、がい一咳と云った調子で、少し古風なエロキューションで続けました。大して暑くもないのに、胸のあたりでハタハタと白扇を使うと、ボヘミアン襟飾ネクタイ翩翻へんぽんとして宙に泳ぎます。
香炉こうろ薫々くんくんたる龍煙りゅうえんを吐き、この日長者が供えたお香料こうりょう銀子ぎんす、織物、その他の目録にまずうやうやしく敬礼きょうらいをほどこす。そこでがいせい、魯達が発心ほっしんによる出家得度とくどの願文を高々と読む。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐瀬弁護士は、がい一咳といった極めて効果的な調子で始めました。