音響おと)” の例文
それから十分ばかりのち、圓朝を乗せた人力車は、暗い湯島の切通しから、本郷三丁目を壱岐殿いきどの坂へと、鉄輪の音響おとを立てながら走っていた。
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
世界中の煙突えんとつと云う煙突をこゝに集めて煤煙の限りなくく様に、眼を驚かす雲の大行軍だいこうぐん音響おとを聞かぬが不思議である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まつたく、ひどい音響おとだね! あれは——もう僕は、大抵慣れたつもりなんだが、だがさつぱり駄目だよ。
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
錆び鉄鎖ぐさりのような音響おととともに、鍵も銀器も一しょくたになって床に散乱した。
空家 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ソレ弾丸だまでも食って怪我けがをしては大変と松とも話し、一緒に家へ帰って、師匠に市中の光景などを手真似てまねで話をしておりますと、ドドーン/\/\という恐ろしい音響おとが上野の方で鳴り出しました。
いつまでもむことのない北国の永い降雪期を心で厭いながら、あの何ともいわれない寂しい音響おとという音響おとのはたと止んだ静かな町を、寒げに腰をまげて縮んだように行く往来の人を眺めていた。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
此のいい音響おとで冬めを祭れ
とたんにハッキリ手応えあってゲソッと何かの剥がれ落ちるような音響おとがした。とたんにツツツツ薄白いものが目の前をよぎって、ブスッと地べたへもろにささった。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「そう、水の音響おとかな。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)