おと)” の例文
ふねからりた三にんのものは、ばかりするどひかって、ひげはくろく、頭髪かみはのびて、ほとんど、ほねかわばかりにやせおとえていたのです。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
一座の顏觸れに、つばめ太夫の母親のお高が、三年目の歸り新參で、少しもおとろへぬ美しさと若さと藝達者を見せてくれたことは、どんなに人氣を引立てたかわかりません。
出京しゆつきやう當座たうざは、大分だいぶん身體からだおとろへてゐたので、御米およね勿論もちろん宗助そうすけもひどく其所そこ氣遣きづかつたが、今度こんどこそはといふはら兩方りやうはうにあつたので、はりのあるつき無事ぶじ段々だん/\かさねてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
老年になった両親が病気で営養のおとろえた時分、医者から滋養分を食べさせろといわれてもどういう風に老人の食物を料理していいかと知らなかったら親孝行の心を実行する事が出来ますまい。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)