おと)” の例文
たなばたつめは、天上の聖職を奉仕するものとも考えられた。「あめなるや、おとたなばたの……」と言うようになったわけである。
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
かれここにその姉は、いとみにくきに因りて、見かしこみて、返し送りたまひて、ただそのおとはな佐久夜さくや賣毘を留めて、一宿ひとよみとあたはしつ。
世は斯くぞ宇多の宇迦斯うかし兄弟えおとあれど帰服まつろはずおとぞ仕へし
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
たまさかは来よとねがひき来しゆゑにこのおとかなし酒なとぬくめな
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おとむすめ、笑みのな白みに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
かれそのたけなはなる時になりて、御懷より劒を出だし、熊曾くまそが衣のくびを取りて、劒もちてその胸より刺し通したまふ時に、そのおとたける見畏みて逃げ出でき。
汝所堅之美豆能小佩ナガカタメコシミヅノヲヒモ(こおびか)は、誰かも解かむ。」答へ申さく、「旦波比古多々須美智能宇斯王タニハノヒコタヽスミチノウシノミコむすめ、名は兄比売えひめおと比売、此二女王フタミコぞ、浄き公民オホミタカラ(?)なる。かれ、使はさばけむ。……」
水の女 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
しゆんしゆんと煮立つ酒かも吾がおとと春早き丘に来り火をたく
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
天皇はまたその皇后サホ姫の申し上げたままに、ミチノウシの王の娘たちのヒバス姫の命・おと姫の命・ウタコリ姫の命・マトノ姫の命の四人をお召しになりました。
空飛ぶをおとがあやつる翼かと早やおぼすらし声おろおろに
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
またその后の白したまひしまにまに、美知能宇斯みちのうしの王の女たち比婆須ひばす比賣の命、次におと比賣の命、次に歌凝うたこり比賣の命、次に圓野まとの比賣の命、并はせて四柱を喚上めさげたまひき。
女童めわらべひかつぐおとの足触りつつをり伸びし芽麦を
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おとどもが酒に吼ゆるを寿詞よごととも元日は聴け日もかたむきぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
菎蒻屋のおとの末吉泣きめだち女子めのこさびしか今はをばめく
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)