おと)” の例文
およそ外より人に入るものの人を汚し能はざる事を知らざる。そは心に入らず、腹に入りてかはやおとす。すなはちくらふ所のものきよまれり。」
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これ悪漢が持てりし兇器きょうきなるが、渠らは白糸を手籠てごめにせしとき、かれこれ悶着もんちゃくの間に取りおとせしを、忘れて捨て行きたるなり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
縞の財布よ、其の中に金が三両二分に端たが些とばかりと印形いんぎょう這入へえってたから、おとし主へ知らせて遣りたいと思って、万年の橋間はしまで船をもやって
『アウシュコルン、』かれは言った、『今朝、ブーズヴィルの途上でイモーヴィルのウールフレークのおとした手帳をお前が拾ったの見たものがある。』
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
押戴おしいたゞ行燈あんどう指翳さしかざし一目見るより打ち驚き之はさきつ頃私しが道におとせし品にして母の紀念かたみくしなれば家財道具は聊かの物も殘さず賣盡し身にまとふべき衣類いるゐさへ今はつゞれもあらざれども此品計りは我が母のおん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
祖「何ういう事も何もない、父の屍骸しがいかたわらに汝の艶書てがみおとしてあったのが、汝の天命である」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)