おと)” の例文
その中からつまみ出した小型の注射器に蒸溜水を七分目ほど入れて、箱の片隅の小さな薬瓶の中の白い粉を、薬包紙の上におとすと
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この時まで枯木こぼくのごとく立ッていた吉里は、小万に顔を見合わせて涙をはらはらとおとし、小万が呼びかけた声も耳に入らぬのか、小走りの草履の音をばたばたとさせて
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
さらにその深情、濃感、蘊籍うんせき渾厚こんこう、一読人をしてなみだおとさしむるに至るを覚う。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)