遺失おと)” の例文
けてれば遺失おとしさうだ、——とつて、そででも、たもとでも、う、うか/\だとられも仕兼しかねない。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
遺失おとさん積りで向へ持ってきさえすれば事が済むから、此処は此の儘おだやかにしないと、此のうちも迷惑するから
女の主人は無論参朝にせまって居て、朋友の融通を仰いだのであろうし、それを遺失おとしたというのでは、おろかさは云うまでも無いし、其の困惑さも亦言うまでも無いが
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遺失おとした人は四谷区何町何番地日向某ひなたなにがしとて穀物の問屋といやを業としている者ということが解った。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それに遺失おとし易い婦人の毛ピンが敷石の上に落ちていたからといって格別怪しむにらなかったが、白昼ひるまとはいいながら死んだようにさびれた町に立って、取着く島をも見出し得なかった二人は
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
太い丸太の尖を圓めて二本植ゑた、校門の邊へ來ると、何れ女生徒の遺失おとしたものであらう、小さい赤櫛が一つ泥の中に落ちてゐた。健はそれを足駄の齒で動かしでみた。櫛は二つに折れてゐた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『だつてお前、それはこのあいだ遺失おとしたといつたじやないか』
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「近頃は喜劇のめんをどこかへ遺失おとしてしまった」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眞個ほんとうつてください。唯今たゞいまひましたやうに、遺失おとすのを、なんだつてそんなに心配しんぱいします。たゞひとれるのが可恐おそろしいんでせう。……なにわたしかまはない。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
太い丸太のさきを円めて二本植ゑた、校門のところへ来ると、いづれ女生徒の遺失おとしたものであらう、小さい赤櫛が一つ泥の中に落ちてゐた。健はそれを足駄の歯で動かしてみた。櫛は二つに折れてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
洒落しやれ遺失おとしたとおもふのさへ、のくらゐなんですもの。實際じつさい遺失おとして、遺失おとした、とつて御覽ごらんなさい。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『何うして遺失おとしたんです?』と多吉は真面目な顔をして訊いた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
が、娘はあえて、あやまって、これを遺失おとしたものとして、手に取ろうとするのではない。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『はははは、遺失おとして了ひましたわい。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ああ、剰銭つりと一所に遺失おとしたんだ。叔母さんどの辺?」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)