柔和おとなし)” の例文
そのお話しというのは、ほんとうに有そうな事ではないんでしたが、奥さまの柔和おとなしくッて、時として大層あわれっぽいお声を聞くばかりでも、嬉しいのでした。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
弁天ぼりに水およぎの折も我が組に成る人は多かるまじ、力を言はば我が方がつよけれど、田中屋が柔和おとなしぶりにごまかされて、一つは学問が出来おるを恐れ、我が横町組の太郎吉たろきち、三五郎など
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
初めて知り棄子すてごと云るゝを深くはぢたりけん其後は手習を我が家にてなし遊びにも外へ出行いでゆくことなく柔和おとなしやかに母の手傳ひをして我が家の内に遊び居るを養父母も其の樣子を見て取しきりに其心根を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
田中屋たなかや柔和おとなしぶりにごまかされて、一つは學問がくもん出來できおるをおそれ、横町組よこてうくみ太郎吉たらうきち、三五らうなど、内々ない/\彼方あちらがたになりたるも口惜くちをし、まつりは明後日あさつて、いよ/\かたいろえたらば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
や或るひは面體めんてい惡氣にくげに心は善良ぜんりやうるもあり或ひに面體めんてい柔和にうわにして胸中きようちう大膽不敵だいたんふてきなる者有所謂いはゆる外面如菩薩げめんによぼさつ内心ないしん如夜刄によやしやほとけも説給ひし如し然れば其面體めんてい柔和にして形容なりかたち柔和おとなしやかなる者の言事は自然と直なる樣に聞ゆれども其事は邪心じやしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
誰れだと思ふ横町の長吉だぞと平常つねの力だては空いばりとけなされて、弁天ぼりに水およぎの折も我が組に成る人は多かるまじ、力を言はゞ我が方がつよけれど、田中屋が柔和おとなしぶりにごまかされて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)