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温和
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おとな
ふりがな文庫
“
温和
(
おとな
)” の例文
表の眼だけを見ていると、そのいつも近眼鏡の下に
温和
(
おとな
)
しく瞬いていて子供のように
円円
(
まるまる
)
してそこに狡猾さも毒毒しさもなかった。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
けれども一体どうしたのかあの
温和
(
おとな
)
しい穂吉の形が見えませんでした。風が少し出て来ましたので松の
梢
(
こずゑ
)
はみなしづかにゆすれました。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「……ちょっとみると
温和
(
おとな
)
しそうですが、わたくしなどはかなり虐待されたものです、いや本当にひどいめに遭っているんですよ」
菊屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「あらワグナーさんが……。お見それしていましたわ。あんまり普段
温和
(
おとな
)
しくしていらっしゃるので、学芸記者かと思っていましたわ」
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そしていきなり昌さんの腕をとらへて、榛の木の根もとに押しやつた。昌さんはやつと綱をほどいた。牛は
温和
(
おとな
)
しくついて行く。
南方
(旧字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
▼ もっと見る
とにかく女の言うことはみな聞いたあとで
温和
(
おとな
)
しく断わってやろうと思っていた自分が、思わず知らず最後まで追いつめられて
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そして母さんや今のお父さんの言うことをよくきいて
温和
(
おとな
)
しく待っていておくれ、そしたらお父さんが迎えに来る。きっと迎えに来る……
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
どうしたって、こんなに
温和
(
おとな
)
しくなれる訳がないのだが、実際この時は人に
逆
(
さから
)
うような気分は薬にしたくっても出て来なかった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
馬から下りた能登守が、馬の口を取っていると、その時にムクも
温和
(
おとな
)
しくなってしまいました。そこへ息を切ってお君が馳せつけて来て
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
服を着てしまふと、彼女は、
皺
(
しわ
)
にしないようにと思つて、その
繻子
(
しゆす
)
の裾を非常に注意深く持ち上げて
温和
(
おとな
)
しく自分の小さな椅子に掛けた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
流石
(
さすが
)
の太宰さんも
温和
(
おとな
)
しく
高鼾
(
たかいびき
)
。急迫したような息苦しさと紙一重の、笑いたいような気持ち。何か、心のときめきを覚える夕べであった。
雨の玉川心中:01 太宰治との愛と死のノート
(新字新仮名)
/
山崎富栄
(著)
しかし警官の顔をみる頃から桂子は
温和
(
おとな
)
しくなった。一通り、私の悪口を警官に
喋
(
しゃべ
)
ってから、その部屋に寝ることを承知する。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
その筋に分ったら大変だと、全部の女給に暇を出し、新しく
温和
(
おとな
)
しい女ばかりを雇い入れた。それでやっと危機を切り抜けた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
私は軍人や山蜂のやうに剣を
提
(
さ
)
げた
生物
(
いきもの
)
は余り好かない方だから、玉蜀黍は成るべく
農夫読
(
ひやくしやうよ
)
みに
温和
(
おとな
)
しく「たうもろこし」と読んで貰ひたい。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
邪魔せずに眺めてゐるから、早く首縊つて牛肉屋の牛肉みたいに
温和
(
おとな
)
しいブラブラになりやがれ! 早く牛肉にならないか、不潔な肉の魂めえ!
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
そして
温和
(
おとな
)
しい彼女も、宇野の細君に対して一方ならず腹を立てた。憤慨の余り彼女は夫に向って、凡てのことを話した。
田原氏の犯罪
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
が、美奈子はさうしたはしたない感情を、グツと抑へ付けることが出来た。彼女は
平素
(
いつも
)
の初々しい
温和
(
おとな
)
しい美奈子だつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
平素
(
ふだん
)
温和
(
おとな
)
しい
善
(
よ
)
い人の
怒
(
おこ
)
ったのは
甚
(
ひど
)
いもので、物をも云わずがらりと戸を開けて中へ飛込み、片手に
抜身
(
ぬきみ
)
を
提
(
さ
)
げて這入ると、未だ寝は致しません
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
小さい子だったが——いかにも我慢強くて
温和
(
おとな
)
しかったことを思い出せば、そう安々と
家
(
うち
)
の者同志で喧嘩もしないだろうし、またそんな事をして
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
伊兵衛 (憤然として弥八の腕を押え)
温和
(
おとな
)
しくしていればいい気になり、畜生に穿かせる物でよくもぶったな。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
口数の多い助七の前に、
温和
(
おとな
)
しい長次郎は
愈々
(
いよいよ
)
無口となって、如何にも無能らしく
唯
(
ただ
)
黙々と随伴するのであった。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「黒、
温和
(
おとな
)
しくしろ——これからときどきたずねて来るからな——まあ、少しの間おれに中の話を聴かせてくれ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
まったく今では
MISS
(
ミス
)
・キャゼリンの心は殿下のことで一杯なのでしょう。
温和
(
おとな
)
しい人ですから口には出しませんが、おそらく四六時中殿下のことのみを
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「それでも」と野枝さんは
微笑
(
ほほえ
)
みつつ、「
尾行
(
びこう
)
が申しましたよ。児供が出来てから大変
温和
(
おとな
)
しくなったと。」
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
お前は——何時もあのやうに静な、あのやうに清浄な、あの様に
温和
(
おとな
)
しい——お前が野獣のやうに部屋の中で怒り狂つてゐるではないか。気をつけるがよい。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
そうかと思うと今度は急に
温和
(
おとな
)
しくなって、まるで眼の前になよたけが現れたかのように、話し出すんだ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
さても
御主
(
おぬし
)
は、聞分けのよい、年には増した利発な子じゃ。そう
温和
(
おとな
)
しくして
居
(
お
)
れば、諸天童子も御主にめでて、ほどなくそこな
父親
(
てておや
)
も
正気
(
しょうき
)
に還して下されよう。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そうしないで、なおも飽く事を知らずに、必要もない新しい犠牲を求めて歩いたのは何故か……黛夫人の遺骸が白骨になり終るのを、
温和
(
おとな
)
しく待っておりさえすれば
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
行儀作法
(
ぎゃうぎさはふ
)
の
生粹
(
きっすゐ
)
ぢゃありやせん、でも
眞
(
ほん
)
の
事
(
こと
)
、
仔羊
(
こひつじ
)
のやうに、
温和
(
おとな
)
しい
人
(
ひと
)
ぢゃ。さァ/\/\、
小女
(
いと
)
よ、
信心
(
しんじん
)
さっしゃれ。……え、もう
終
(
す
)
みましたかえ、お
晝
(
ひる
)
の
食事
(
しょくじ
)
は?
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
其麽
(
そんな
)
間
(
なか
)
に立つてゐる
温和
(
おとな
)
しい静子には、それ相応に気苦労の絶えることがない。実際、信吾でも帰つて色々な話をしてくれたり、来客でもなければ、何の楽みもないのだ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼は、私をこわがらせるのにも飽きてしまったのか、今日はめずらしく
温和
(
おとな
)
しかったのです。
恐怖の正体
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
空
(
むな
)
しくそっと引き退け酔うでもなく
眠
(
ねぶ
)
るでもなくただじゃらくらと
更
(
ふ
)
けるも知らぬ夜々の長坐敷つい出そびれて帰りしが山村の
若旦那
(
わかだんな
)
と言えば
温和
(
おとな
)
しい方よと小春が顔に花散る
容子
(
ようす
)
を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
無論初子さんが紹介したんですがね、百合ちゃんは姉さんのように手腕はないけれど、
温和
(
おとな
)
しいものだから、川口さんすっかり気に入っちゃって、初子さんの事は
断念
(
あきら
)
めたんですの。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
犬でさへ
温和
(
おとな
)
しいのもあれば怒りつぽいのもある。頭の良いのもあれば悪いのもあるのである。その通り人間も動物でしかなかつたのだ。今や人間は動物から一歩前進しなければならぬ。
覚え書
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
お母さんは永年お民さんをかわいがって御いでですから、お民さんの
気質
(
きだて
)
は解って居りましょう。私もこうして一年御厄介になって居てみれば、お民さんはほんと優しい
温和
(
おとな
)
しい人です。
野菊の墓
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
一昨年の三月のときも、わしのいうことをきいて
温和
(
おとな
)
しく帰ってくれた……
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
もう来るころと待っていて
若干
(
いくらか
)
祝儀を出すとまたワッショウワッショウと
温和
(
おとな
)
しく引き上げて行くがいつの祭りの時だったかお隣の大竹さんでは心付けが少ないと言うので神輿の先棒で板塀を
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
指し乍ら「
温和
(
おとな
)
し相でゐて心底の骨の強い人には妾決して惚れる事は出来ないの。此人はこんな人の善さ相な顔してゐて
心
(
しん
)
はそれは氷のやうにきついんですからね。ほゝどうもお
八釜
(
やかま
)
しう。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
似ぬ
温和
(
おとな
)
しさはてつきりさうと、いよいよ乗ずる三の蔭口、車夫の力松、小間使のおせかまで、異な眼つきにて我を見る、返す返すの心外さに、もう堪忍がと立上る、その足許には奥様の合槌
誰が罪
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
近江屋の分家で黒木屋五造というごく
温和
(
おとな
)
しい男なんですが、生れつき夜眼が見え、まっ暗がりの土蔵なんかでも、
龕灯
(
がんどう
)
いらずに物もさがせば細かい仕事もするという奇態な眼を持っているので
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「ほら、私だというとこんな具合で、化物
海豹
(
あざらし
)
めが
温和
(
おとな
)
しくなっちまう」と、餌桶いっぱいの魚をポンポンくれているおのぶサンと、
鯨狼
(
アー・ペラー
)
をひき比べてみているうちに、折竹がぷうっと失笑をした。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
虎というものは、野に在る時は、百獣の王、いかなる獣も
怖
(
おそ
)
れおののくほどじゃが、
一旦
(
いったん
)
捕われて檻に入れられると、まるで性が変ったように
温和
(
おとな
)
しくなり、尾を振って食を乞おうとするものじゃ。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
が、幸子は彼以外の男にはそう親しみのない者にでも
温和
(
おとな
)
しく自分を抱かせる所から見ると、あるいはそうであるかもしれないとも思った。とにかく幸子の一番嫌いな者はこの叔父であるらしかった。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
温和
(
おとな
)
しくしてゐるんですよ
人形の家
(旧字旧仮名)
/
ヘンリック・イプセン
(著)
温和
(
おとな
)
しいかれは、寂しそうに私を見た。この友は非常に貧しかったが、その精神はいつも純潔な、まるで優柔なものをもっていた。
或る少女の死まで
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
けれども一体どうしたのかあの
温和
(
おとな
)
しい穂吉の形が見えませんでした。風が少し出て来ましたので
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずえ
)
はみなしずかにゆすれました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
年は二十五歳くらいだろう、ごく
温和
(
おとな
)
しい、まじめな性質で、彼を見ていると、自分が洗われるような気持になる、とおみやは語った。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は模範的な
温和
(
おとな
)
しい青年であって、金銭関係についても婦人関係にかけても極めて厳格であって、一つのスキャンダルもない。
心臓盗難:烏啼天駆シリーズ・2
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
披露の席で軍治は急に姉の傍へ坐ると言ひ出したのであるが、それでも幾が軽くたしなめると
温和
(
おとな
)
しくその膝に来たのだつた。
鳥羽家の子供
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
そうかと言って、まるっきり
温和
(
おとな
)
しくしていると悪い奴にばかにされるから、時々威勢を見せつけてやらなくちゃあいけねえ。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
温
常用漢字
小3
部首:⽔
12画
和
常用漢字
小3
部首:⼝
8画
“温”で始まる語句
温
温泉
温順
温柔
温気
温暖
温味
温泉宿
温泉場
温習