筬の音おさのおと
わが車は、とある村に入りぬ。 軒ごとに吊りほせるかけ菜の、あるかなきかの風にゆらめきて、鶏のこゑ、長閑にきこゆ。 轍におこる塵かろく舞ひ、藪ぎはの緋桃の花、ほろり/\散る。高安の春、いま闌なり。 いつしか、村をはなれつ。から/\と軋り行く輞 …