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退
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さ
ふりがな文庫
“
退
(
さ
)” の例文
『——伝右どの、お気持は有難くいただいた。然し、公儀の断罪を待つ私共……身に余りまする。
何卒
(
なにとぞ
)
、お火鉢はお
退
(
さ
)
げ置き下さい』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「きゃっ‼」叫んで理学士、二歩うしろへ
退
(
さ
)
がったが「赦して下さい兄さん、あなたを殺したのは悪かった。赦して下さい‼」
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、その
娘
(
こ
)
が
退
(
さ
)
がると、彼女は
微笑
(
ほゝえ
)
みながら云つた。「いゝあんばいに、今度だけは、足りない分を私の手で都合がつけられるのよ。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
西蔵宮中の不文律に依って陛下はお位を無理に
退
(
さ
)
げられ、陛下が
曾
(
かつ
)
てご一歳の時ご両親の膝元から掠奪され宮中へ連れられて参りましたように
喇嘛の行衛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それから同じ物をもう一つ主人の前に置いて、一口もものを云わずに
退
(
さ
)
がった。木皿の上には
護謨毬
(
ゴムまり
)
ほどな大きな
田舎饅頭
(
いなかまんじゅう
)
が一つ
載
(
の
)
せてあった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「汝こそ
退
(
さ
)
がれ、一刻の後にはどうなるか分らないものが、汝の身に迫っていることに気がつかんか。」
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「かしこまりました」
白髯
(
しろひげ
)
の
大臣
(
だいじん
)
はよろこんで
子供
(
こども
)
のように顔を赤くして王さまの前を
退
(
さ
)
がりました。
四又の百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「熱はもうすっかり
退
(
さ
)
がりました。津軽先生が、この薬とてもよく
効
(
き
)
くとおっしゃるの」
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
兵馬は小手調べを見事に
失敗
(
しくじ
)
って、こっちから仕かけた
軍
(
いくさ
)
に負けて一時ハッとしたが、この一手でおおよそ敵の手段のあるところがわかったらしく、
退
(
さ
)
って中段に構えたなり動かず。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
退
(
さ
)
げましょうか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「敵はきのうの大敗で、すでに遠く陣地を
退
(
さ
)
げてしまったのに、遼将軍にはなぜいつまで、甲も解かず、兵に休息もさせないのですか」
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
同
(
おな
)
じ
物
(
もの
)
をもう
一
(
ひと
)
つ
主人
(
しゆじん
)
の
前
(
まへ
)
に
置
(
お
)
いて、
一口
(
ひとくち
)
もものを
云
(
い
)
はずに
退
(
さ
)
がつた。
木皿
(
きざら
)
の
上
(
うへ
)
には
護謨毬
(
ごむまり
)
ほどな
大
(
おほ
)
きな
田舍饅頭
(
ゐなかまんぢゆう
)
が
一
(
ひと
)
つ
載
(
の
)
せてあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一歩
退
(
さ
)
がれば谷である。島君は左の片足を危く突き出た岩へ掛け右足を前へ踏みしめてわずかに体を立て直した。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
探偵は一歩後ろへ
退
(
さ
)
がると共に、
抽出
(
ひきだし
)
から取り出した自動
拳銃
(
ピストル
)
を龍介に向けた。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして、ザッザ、ザッザと、草の波を分けて、押し進んで来るのを見て、将門は、急に馬を
退
(
さ
)
げて、意気地なく、ためらい出した。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この感じを
翌
(
あく
)
る日まで持ち続けた彼は、何時もの通り朝早く出て行った。そうして午後に帰って来て、細君の熱がもう
退
(
さ
)
めている事に気が付いた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
下僕はそこで引き
退
(
さ
)
がったが、やがて再び現われると、武士を座敷へ導いた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
わけてその廊を奥へ行く美人、
退
(
さ
)
がって来る美人——何かを捧げ持って——
燈影
(
とうえい
)
の下を
楚々
(
そそ
)
と通う女性たちの色やにおいにそれが濃い。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
漸
(
やうや
)
く
下女
(
げぢよ
)
が
退
(
さ
)
がりきりに
退
(
さ
)
がると、
今度
(
こんど
)
は
誰
(
だれ
)
だか
唐紙
(
からかみ
)
を
一寸
(
いつすん
)
程
(
ほど
)
細目
(
ほそめ
)
に
開
(
あ
)
けて、
黒
(
くろ
)
い
光
(
ひか
)
る
眼丈
(
めだけ
)
を
其間
(
そのあひだ
)
から
出
(
だ
)
した。
宗助
(
そうすけ
)
も
面白
(
おもしろ
)
くなつて、
默
(
だま
)
つて
手招
(
てまね
)
ぎをして
見
(
み
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
と云うと
鳰鳥
(
におどり
)
は、一膝
退
(
さ
)
がって大地に手をつき、まず恭しく一礼したが
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
汝のごときは、その場から
逐電
(
ちくてん
)
して
今日
(
こんにち
)
にいたった不届き者、復職などは
罷
(
まか
)
りならん。もってのほかな願い。とッとと
退
(
さ
)
がりおろう
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ようやく下女が
退
(
さ
)
がりきりに退がると、今度は誰だか
唐紙
(
からかみ
)
を一寸ほど細目に開けて、黒い光る眼だけをその間から出した。宗助も面白くなって、黙って手招ぎをして見た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今さらのように、成政は、秀吉の真を知った心地に打たれながら、営所を
退
(
さ
)
がって、前田家の陣所の前を、
悄々
(
しおしお
)
と、退がって来た。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「三井です。三井はもつと
旨
(
うま
)
いんですがね。此画はあまり感服出来ない」と一二歩
退
(
さ
)
がつて見た。「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものだから、
旨
(
うま
)
く
行
(
い
)
かないね」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
小次郎は
頷
(
うなず
)
いて後へ
退
(
さ
)
がった。そして御池十郎左衛門や門下の者と、しばらく話し合っていたが、やがてまた一人離れて来て、武蔵へ
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
したがって我々は「おい一郎」とか「おいお重」とか云って、わざわざそこへ呼び出されたものであった。自分は兄よりも
遥
(
はるか
)
に父の気に入るような賛辞を呈して引き
退
(
さ
)
がった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
午餐なので、
杯盤
(
はいばん
)
はまもなく
退
(
さ
)
げられ、甘い酒と、
果盆
(
かぼん
)
が代って出た。いや、さらに美々しい一盆には、五箇の銀塊が乗っていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
銀杏の並木が
此方
(
こちら
)
側で尽きる右手には法文科大学がある。左手には少し
退
(
さ
)
がつて博物の教室がある。建築は双方共に同じで、細長い窓の上に、三角に
尖
(
とが
)
つた屋根が突き出してゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
『貴様の考えが、逆さまなのだ。水かけ論はやめにしよう。置いてわるい小間使なら、そっと宿先へ
退
(
さ
)
げてやればよいではないか』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
和尚
(
おしょう
)
の室を
退
(
さ
)
がって、
廊下
(
ろうか
)
伝
(
づた
)
いに自分の部屋へ帰ると
行灯
(
あんどう
)
がぼんやり
点
(
とも
)
っている。
片膝
(
かたひざ
)
を
座蒲団
(
ざぶとん
)
の上に突いて、灯心を
掻
(
か
)
き立てたとき、花のような
丁子
(
ちょうじ
)
がぱたりと朱塗の台に落ちた。
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、石田佐吉が、帰りを告げ、その佐吉が小姓部屋へ
退
(
さ
)
がると、入れ代りに、黒田官兵衛孝高がびッこを曳きながら入って来た。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
只
額
(
ひたひ
)
に少し皺を
寄
(
よ
)
せて、
対岸
(
むかふぎし
)
から生ひ
被
(
かぶ
)
さりさうに、
高
(
たか
)
く池の
面
(
おもて
)
に枝を
伸
(
のば
)
した古木の奥を眺めてゐた。団扇を持つた女は少し前へ出てゐる。白い方は
一歩
(
ひとあし
)
土堤
(
どて
)
の
縁
(
ふち
)
から
退
(
さ
)
がつてゐる。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
主客の間には、幾たびか茶がつぎ代えられ、そのたび大助の嫁らしい女性が見えて、何くれとはなく気をくばって
退
(
さ
)
がってゆく。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し仕方がないから、礼をして父の前を
退
(
さ
)
がろうとした。ときに父は呼び留めて
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
強
(
し
)
いてはすすめず、大助も嫁もほどよく
退
(
さ
)
がる。——その間も、竹林の彼方から、
機
(
はた
)
に似た音がしきりに耳につくので、佐渡は
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然し仕方がないから、礼をして
父
(
ちゝ
)
の
前
(
まへ
)
を
退
(
さ
)
がらうとした。ときに
父
(
ちゝ
)
は呼び
留
(
と
)
めて
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ふたりとも、
退
(
さ
)
がって、少し休息するがいい——と許され、三成と、山城とは、
相携
(
あいたずさ
)
えて、庭へ出た。新秋八月の大きな月が空にあった。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
清
(
きよ
)
を呼んで
膳
(
ぜん
)
を台所へ
退
(
さ
)
げさした。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先手の兵が、射程距離の外へ
退
(
さ
)
がったので、自然、城方の鉄砲もやんだ。が、相互の戦気は、まさに、一触即発の寸前にあるかに見えた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
清
(
きよ
)
を
呼
(
よ
)
んで
膳
(
ぜん
)
を
臺所
(
だいどころ
)
へ
退
(
さ
)
げさした。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
範宴は、あつく礼をのべて
引
(
ひ
)
き
退
(
さ
)
がった。性善坊にも告げ、学寮の人々にもそのよしを告げて、翌る日、山門を出た。同寮の学生たちは
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いただくときは一人一人が、氏名をよばれて控ノ間から進み入り、陛下への拝礼をして、総理の手からうけて
退
(
さ
)
がるのである。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして、六条の
範綱
(
のりつな
)
の
館
(
やかた
)
まで、一息に来たが、折わるく範綱は後白河法皇の院の御所へまかり出ていて、まだお
退
(
さ
)
がりにならないという。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
白刃をならべた三名に、横からまた二名ほど加わって、相手は、肩をすぼめ合いながら、
踵摺
(
かかとず
)
りに後へ後へと
退
(
さ
)
がって行った。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
家にはいると、彼はすぐ師の病室をそっと
窺
(
うかが
)
った。勘兵衛は
昏々
(
こんこん
)
とふかい寝息の中にある。ほっと胸をなでて、彼は自分の居間へ
退
(
さ
)
がった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鍋の残り飯でさえ、あんなに怒った虚無僧が、けがらわしい物でも見るように、強く首を振って、膝まで後へ
退
(
さ
)
がってゆく。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
退
(
さ
)
がれば、叱られる。進もうとするが、進めない。伊織の体が、くわっと熱くなる。人間の手につかまれた
蝉
(
せみ
)
の体みたいにくわっと熱くなる。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お客様は、独りが好きだと仰せられる。孤独を愛す、それ君子の心境だ。……さ、お邪魔しては悪い、あちらへ
退
(
さ
)
がろう」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たちまち、そこの中軍を挙げて、生田の辺まで引き
退
(
さ
)
がって来た。いや、義貞にすれば、
退
(
ひ
)
くにあらず、転進の意気だった。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三蔵が
退
(
さ
)
がりかけると、勝入は、待てと押しとどめ、さらに近臣をよんで、馬の背にでも積まなければ持てないほどな金銀をそこに置かせた。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“退”を含む語句
後退
引退
退出
退去
立退
退引
飛退
退屈
退却
遠退
退校
退避
退治
進退
辞退
退潮
退院
退歩
追退
居退
...