“の”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ノ
語句割合
退13.9%
呑10.1%
載8.4%
伸7.2%
乗6.7%
除6.4%
嚥5.4%
喫4.3%
野3.7%
飲3.4%
展3.2%
延3.0%
陳2.7%
服2.5%
騎2.2%
乘2.0%
述1.4%
暢1.4%
飮1.2%
宣0.9%
仰0.8%
遁0.7%
逃0.7%
叙0.6%
無0.6%
舒0.6%
上0.5%
演0.4%
之0.3%
後0.3%
憑0.3%
告0.3%
詔0.2%
祷0.2%
脱0.2%
熨0.2%
攄0.2%
免0.1%
踣0.1%
駕0.1%
反0.1%
哺0.1%
戴0.1%
抒0.1%
酒0.1%
女0.1%
掲0.1%
似0.1%
低0.1%
俯0.1%
去0.1%
吸0.1%
排0.1%
搭0.1%
摛0.1%
敷0.1%
祈0.1%
逭0.1%
如0.0%
詈0.0%
鈍0.0%
が0.0%
を0.0%
㖭0.0%
乃0.0%
乗車0.0%
信0.0%
倒0.0%
偃0.0%
冠0.0%
刀0.0%
則0.0%
劇0.0%
叩0.0%
咽0.0%
器0.0%
噬0.0%
圧0.0%
宜0.0%
布0.0%
序0.0%
廷0.0%
怒0.0%
惚0.0%
慂0.0%
托0.0%
押0.0%
敍0.0%
杯0.0%
残0.0%
沼0.0%
滿0.0%
物無0.0%
申0.0%
男0.0%
登0.0%
立退0.0%
箆0.0%
置0.0%
罵0.0%
船0.0%
解0.0%
言0.0%
貯0.0%
贏0.0%
転0.0%
較0.0%
酌0.0%
銭0.0%
録0.0%
長0.0%
陣0.0%
頂0.0%
食0.0%
馮0.0%
鰯0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
いくら聞かれても曖昧(あいまい)な返事ばかりしていて、最後に退(の)っ引(ぴ)きならないところまで来てしまってから、強情を張り出した点であった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
謹慎中も同志うち寄って盛んに宇内(うだい)の形勢を論じて、酒を呑(の)んで時には夜を徹したものであるけれども、母は少しも厭(いと)われなかった。
青年の天下 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
却(かえっ)て口きゝ玉うにも物柔かく、御手水(おちょうず)の温湯(ぬるゆ)椽側(えんがわ)に持(もっ)て参り、楊枝(ようじ)の房少しむしりて塩一小皿(ひとこざら)と共に塗盆(ぬりぼん)に載(の)せ出(いだ)す僅計(わずかばかり)の事をさえ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それでも筆と紙がいっしょにならない時は、撮んだ顎を二本の指で伸(の)して見る。すると縁側(えんがわ)で文鳥がたちまち千代(ちよ)千代と二声鳴いた。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若者(わかもの)は、近所(きんじょ)で布(ぬの)一反(たん)の代(か)わりに、手綱(たづな)とくつわを買(か)って馬(うま)につけますと、さっそくそれに乗(の)って、またずんずん歩(ある)いて行きました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
脆(もろ)いと申せば女ほど脆いはござらぬ女を説くは知力金力権力腕力この四つを除(の)けて他に求むべき道はござらねど権力腕力は拙(つたな)い極度
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
僕は頭痛のはじまることを恐れ、枕もとに本を置いたまま、○・八グラムのヴェロナアルを嚥(の)み、とにかくぐっすり眠ることにした。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして淡巴菰の火が消えているのに気が注(つ)いたようにして、足許の燃えさしに吸いつけて喫(の)む。村の男はそのさまをじろじろと見る。
そら雲(くも)が日(ひ)を隱(か)くした! 薄(うす)い影(かげ)が野(の)の上(うへ)を、海(うみ)の上(うへ)を這(は)う、忽(たちま)ち又(また)明(あか)るくなる、此時(このとき)僕(ぼく)は決(けつ)して自分(じぶん)を不幸(ふしあはせ)な男(をとこ)とは思(おも)はなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
と平生(へいぜい)から嘲(あざけ)るものは嘲(あざけ)るが、心優(こゝろやさ)しい衣絵(きぬゑ)さんは、それでも気(き)の毒(どく)がつて、存分(ぞんぶん)に沸(わ)かして飲(の)むやうにと言(い)つた厚情(こゝろざし)なのであつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
又は八方に爪を展(の)ばし、翼を広げて、恰(あたか)も大道の塵(ちり)の如く、又は眼に見えぬ黴菌の如く、死ぬが死ぬまでも人間に取り付いております。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
横笛今は心を定め、ほとほとと門(かど)を音づるれども答なし。玉を延(の)べたらん如き纖腕痲(しび)るゝばかりに打敲(うちたゝ)けども應ぜん氣(け)はひも見えず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
祭神は倉稲魂神となっているが、之は式内社の伊氐波神社であるから、前に陳(の)べたようにイチハノ神を祀ったものと思うのである。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「その用向(ようむき)の大体は」というから「実はラサ府に容易ならぬ病人があってその病人に服(の)ませる薬を急いで買いに行かなければならぬ。 ...
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
不意に陽がかげって頭の上へ覆(おおい)をせられたような気がするので、南(なん)三復(ふく)は騎(の)っている驢(ろば)から落ちないように注意しながら空を見た。
竇氏 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
濁(にご)れる水(みづ)も色(いろ)を添(そ)へて極彩色(ごくさいしき)の金屏風(きんびやうぶ)を渡(わた)るが如(ごと)く、秋草模樣(あきくさもやう)に露(つゆ)敷(し)く袖(そで)は、丈(せ)高(たか)き紫苑(しをん)の梢(こずゑ)を乘(の)りて、驚(おどろ)き飛(と)ぶ蝶(てふ)とともに漾(たゞよ)へり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
山(やま)がたといひ出(だ)して、土地(とち)の樣子(ようす)からその性質(せいしつ)を述(の)べて、そこに青々(あを/\)と芽(め)を出(だ)した野菜(やさい)の色(いろ)を、印象深(いんしようぶか)くつかんで、示(しめ)してゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
やや倦(う)んじたところへ多喜子が来たのも、小さい新しい一つの刺戟であるというらしい暢(の)びやかな、とらえどころのない雰囲気である。
二人いるとき (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
單純(たんじゆん)なレウマチス性(せい)の頭痛(づつう)ではあつたが、閭(りよ)は平生(へいぜい)から少(すこ)し神經質(しんけいしつ)であつたので、掛(か)かり附(つけ)の醫者(いしや)の藥(くすり)を飮(の)んでもなか/\なほらない。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
我が母は何も宣(の)らさね、子の我(われ)も何もきこえね、かかる日のかかる春べに、うつつなく遊ぶ子供を見てあれば涙しながる。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いかに感情の激越を表現するのでも、ああまでぶざまに顔を引き歪(ゆが)めたり、唇を曲げたり、仰(の)け反(ぞ)ったり、もがいたりしないでもいい。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「遁(の)がすな!」という、五郎蔵の、烈しい声が響いた。瞬間に、乾児たちが、再度、四方から、左門へ斬りかかって行く姿が見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すかして見ると春の日影は一面に射(さ)し込んで、射し込んだまま、逃(の)がれ出(い)ずる路(みち)を失ったような感じである。中には何も盛らぬがいい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宋主が寂照を見たまうに及びて、我が日本の事を問いたもうたので、寂照は紙筆を請いて、我が神聖なる国体、優美なる民俗を答え叙(の)べた。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
事無(の)うお勤めを致しましたのも、偏(ひとえ)に旦那さまのお蔭さまと蔭ながら申暮(もうしくら)して居りました、当年もまた相変らずお願い申します
苗のまだ舒(の)びない花畑は、その間の小径も明かに、端から端まで目を遮るものがないので、もう暮近いにも係らず明い心持がする。
百花園 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『断然元子(もとこ)を追ひ出して静(しづ)を奪つて来る。卑(いや)しくつても節操(みさを)がなくつても静(しづ)の方が可(い)い』といふ感が猛然と彼の頭に上(の)ぼつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ことに自分の今演(の)べんとすることは、日本に関することではないか、この点については僕は確かに彼らに優(すぐ)れている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
実は私の方でもあの通り速記者もたのんであります、ご答弁は私の方の機関雑誌畜産之(の)友に載せますからご承知を願います。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
要するにガラス絵といっても、少しも他の油絵や、水彩と変わりなく充分の写実力を養って後(の)ちでないと面白い芸術品は出来ないでしょう。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
衒学(げんがく)的な中性女そのまゝな口振りが憑(の)り移って、うぶ毛の口髭さえ面影に浮ぶのを醜いものにわたくしは感じ取りましたが
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
西行いよよ恐るる色もなく座をすすみて、君が告(の)らせ給ふ所は、人道のことわりをかりて六九慾塵(よくぢん)をのがれ給はず。遠く辰旦(もろこし)をいふまでもあらず。
ここにその招(を)ぎし四八尺(やさか)の勾璁(まがたま)、鏡、また草薙(くさなぎ)の劒、また常世(とこよ)の思金の神、手力男(たぢからを)の神、天の石門別(いはとわけ)の神五を副へ賜ひて詔(の)りたまはくは
布施(ふせ)置(お)きて吾(われ)は乞(こ)ひ祷(の)む欺(あざむ)かず直(ただ)に率行(ゐゆ)きて天路(あまぢ)知(し)らしめ 〔巻五・九〇六〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それは赤外線も、吾々が赤を識別できると同様、アリアリと眼に映(うつ)るからだ。しかし彼女は危険を感じて、吾々の眼には見えない赤外線標的を撃つことから脱(の)がれた。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
例の場所にて釣りたらば、水は浪立ずして、熨(の)したる如く、船も竿も静にて、毛ほどの中(あた)りも能く見え、殊に愛日を背負ひて釣る心地は、嘸(さぞ)好かるべし。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
北固山は宋(そう)の韓世忠(かんせいちゅう)兵を伏せて、大(おおい)に金(きん)の兀朮(ごつじゅつ)を破るの処(ところ)たり。其詩また想(おも)う可き也(なり)。劉文(りゅうぶん)貞公(ていこう)の墓を詠ずるの詩は、直(ただち)に自己の胸臆(きょうおく)を攄(の)ぶ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
言葉が順当に運ばれて、作歌感情の極めて素直にあらわれた歌であるが、さればといって平板に失したものでなく、捉(とら)うべきところは決して免(の)がしてはいない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
が、秋三の冷たい微笑を思い出すと身体が竦(すく)んで固まった。彼は秋三に追いついて力限り打ち踣(の)めしてしまいたかった。恋人との婚姻もこのまま永久に引き延ばしていたかった。
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
半分から上は消えるように隠れてしまって、枝をひろげた梢は雲に駕(の)る妖怪のように、不思議な形をしてただ朦朧(もうろう)と宙に泛(う)かんでいるばかりです。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鯖折りというのは、よくは知らないが、反(の)けざまに躯を二つに折られるのらしい。無理をすると背骨が折れてしまうので、ときに禁手(きんて)にされるほど猛烈なものである。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
現在七つのうち二つははなはだ痩せ衰えているから、三太太は暇があると母兎を捕えて、小兎を一つ一つ順番に腹の上に並べて乳を哺(の)ませた。
兎と猫 (新字新仮名) / 魯迅(著)
それから續(つゞ)いて心臟(ハート)の軍人(ネーブ)が、眞紅(しんく)の天鵞絨(びろうど)の座布團(ざぶとん)の上(うへ)に、王樣(わうさま)の冠(かんむり)を戴(の)せて持(も)つて來(き)ました、此(こ)の壯麗(さうれい)な行列(ぎやうれつ)の總殿(さうしんがり)には、心臟(ハート)の王樣(わうさま)と女王樣(ぢよわうさま)とが在(ゐ)らせられました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
一日の生活のある一片を捉えるのもいゝし、ある感情の波動を抒(の)べるのもいゝし、ある思想に形を与えるのもいゝし、人と人との会話のある部分を写すのもいゝと思う。
文章を作る人々の根本用意 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さ。熱(あつ)い酒(の)をグッとほして、度胸をおつけなさいよ、度胸をね。——お前さんのような退(ひ)け目(め)を
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼んだと言っていた。……僕は泊ったりすることはないが、……お宮というのは何様(どん)な女(の)か、僕は知らないが、……
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
平常この雑誌なら埋め草に掲(の)せてくれそうな見当を付けて置いて、編集者におべっか半分の手紙を書き、自著の詩集まで添えて、三篇も詩があった場合
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
天八達之衢(あまのやちまた)に居り、その鼻長さ七咫(ななあた)脊の長さ七尺(ななさか)云々、また口尻(くちわき)明り耀(て)れり、眼は八咫鏡(やたのかがみ)の如くして、赩然(てりかかやけること)赤酸醤(あかかがち)に似(の)れり、すなわち従(みとも)の神を遣して往きて問わしむ、時に八十万(やそよろず)の神あり
低(の)原の雲も青ざめて
春と修羅 第二集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
飛出しざまプッツリと菅笠の上から糸経(いとたて)を着ている肩先へ斬込まれ、アッといいながら前へ俯(の)める時、手綱が切れましたゆえ馬は驚きバラ/\/\と花野原(はなのばら)を駆出し逃げて往(ゆ)く。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今しも八面鉄刀に囲まれて、去(の)くも退(ひ)くも出来ない危地に墜ちた二人の虚無僧は、居竦(いすく)みのまま、八、九本の切ッ先に五体蜂の巣とされるであろうと思われた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その度に寝台を下りて、暗い旅の窓の側で仏蘭西(フランス)の煙草なぞを吸(の)んで見て、復(ま)た寝台に上ったことを思い出した。何時(いつ)の間にか彼の心は谷中の家の方へ行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(——これでは家老の藤井紋太夫(ふじいもんだゆう)とは、まったくうらはら、合わないで排(の)け者(もの)にされたはず……)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浪(なみ)の江丸(えまる)とは、例(れい)の反古(はご)新聞(しんぶん)に記(しる)されて居(を)つた名(な)で、はじめ、大佐(たいさ)の一行(いつかう)を此(この)島(しま)へ搭(の)せて來(き)た一大(いちだい)帆前船(ほまへせん)、あゝ、あの船(ふね)も、今(いま)は何(なに)かの理由(りいう)で、此(この)海岸(かいがん)にあらずなつたかと
しからずんば、いたずらに筆を援(と)りて賛美の語を摛(の)べ、もって責めを塞(ふさ)ぐ。輓近(ばんきん)の文士往々にしてしかり。これ直諛(ちょくゆ)なるのみ。余のはなはだ取らざるところなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その夜から御床も別々に敷(の)べました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なに知らず 乞ひ祈(の)むけはひ。
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
逭(の)がれよ、こゝに万物は、凡(す)べて虚(うつろ)ぞ、日は燬(や)かむ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
この歌の結句は、「崩岸辺(あずへ)から駒の行(ゆ)こ如(の)す危(あや)はども人妻(ひとづま)児(こ)ろをまゆかせらふも」(巻十四・三五四一)(目ゆかせざらむや)のに似ている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
下毛野(しもつけぬ)みかもの山(やま)の小楢(こなら)如(の)す目細(まぐは)し児(こ)ろは誰(た)が笥(け)か持(も)たむ 〔巻十四・三四二四〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その兄を詈(の)りて、「一つには天皇にまし、一つには兄弟(はらから)にますを、何ぞは恃もしき心もなく、その兄を殺(と)りまつれることを聞きつつ、驚きもせずて、怠(おほろか)に坐せる」
かれその國主(こにきし)の子心奢りて、妻(め)を詈(の)りしかば、その女人の言はく、「およそ吾は、汝(いまし)の妻(め)になるべき女にあらず。吾が祖(みおや)の國に行かむ」といひて、すなはち竊(しの)びて小(を)船に乘りて、逃れ渡り來て
やがて、鈍(の)ろい、呆(ぼ)けたやうな返事をしながら、房一の湯上りでよけい赤紅(あか)く輝く顔がのぞいた。彼はゆつくりと兵児帯をまきつけてゐた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
鈍(の)ろい、ゆつくりした口調で声をかけながら、彼等はおづおづと高間医院の玄関を入つて来る。彼等は医者に診てもらふためにわざわざ河原町へ出て来るのではなかつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
・けさは水音の(が)、よいことが(の)ありさうな
其中日記:06 (六) (新字旧仮名) / 種田山頭火(著)
外では雪がこんこんこんこん降り、酒を(の)呑みに出掛けた人たちも、停車場まで行くのはやめたらうと思はれたのです。
耕耘部の時計 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
姿が華奢(きゃしゃ)だと、女一人くらいは影法師にして倒(さかさ)に吸込みそうな提灯の大(おおき)さだから、一寸(ちょっと)皆声を㖭(の)んだ。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
然(しか)るに静御前義経公に別れ給いし妄念(もうねん)にや夜な夜な火玉となりて右乃(の)井戸より出(いで)し事凡(およそ)三百年その頃(ころ)おい飯貝村に蓮如上人(れんにょしょうにん)諸人を化益(けやく)ましましければ村人上人を相頼(あいたのみ)静乃亡霊を
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見ると女の荷物を担いだ赤帽が背後(うしろ)に立っていました。だからあの駅で乗車(の)ったんですよ
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吾(われ)聞(き)く、君子(くんし)は己(おのれ)を知(し)らざる者(もの)に(五二)詘(くつ)して、己(おのれ)を知(し)る者(もの)に信(の)ぶと。吾(われ)・縲紲(るゐせつ)の中(うち)に在(あ)るに方(あた)り、(五三)彼(かれ)、我(われ)を知(し)らず。(五四)夫子(ふうし)既(すで)に(五五)感寤(かんご)し、我(われ)を贖(あがな)へり、是(こ)れ己(おのれ)を知(し)るなり。
と、いきなり段の口へ、青天の雷神(かみなり)が倒(の)めったように這身(はいみ)で大きな頭を出したのは、虎の皮でない、木綿越中の素裸(すっぱだか)——ちょっと今時の夫人、令嬢がたのために註しよう——唄に……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
槎枒たる老躯を偃(の)べ臥した 一株の梅
山果集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
例の如く江戸時代の渋味を大切に、皺の間に保存しておくような顔で跋(ばつ)の足には大きな繻子(しゅす)の袋を冠(の)せて、外見を防いでいる。見るから感じのおだやかなお婆さんである。三味線は清子である。
美音会 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
金目貫(きんめぬき)、白鮫巻(しらさめまき)の短い刀(の)を差し、黒染(くろぞめ)の絹の袖には、白く、三ツ扇(おうぎ)の紋所が抜いてあった。——三ツ扇は誰も知る松平左京之介輝高(まつだいらさきょうのすけてるたか)の紋だ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでは、こころはむしろものに則(の)りするといえよう。
近代美の研究 (新字新仮名) / 中井正一(著)
「まあお待ち。お前さんたら馬鹿馬鹿しい。何もそんなに喧嘩腰にならなくたっていいじゃないの。ねえ万ちゃん。いったいどこへ行ったの。そんなに、いい劇(の)がどこかへ掛かってんの」
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
訪ふものは扉(どあ)を叩(の)つくし
氷島 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
看(み)そなわし、時わかずこれを試み給うや、いつまで汝われに眼を離さず我が津(つ)を咽(の)む間も我を捨て置き給わざるや
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「亭主、一杯くれ。面倒だから大きな器(の)で」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『類聚名物考』三三七に『輟耕録(てっこうろく)』から引いて、趙生なる者貧しく暮す、一日木を伐りに行って大きな白蛇が噬(の)まんとするを見、逃げ帰って妻に語ると白鼠、白蛇は宝物の変化(へんげ)だろうと思い
又も無限の時空を抱擁(ほうよう)しつつ、彼の頭の上に圧(の)しかかって来るのを、ジリジリと我慢しながら……どこか遠い処で、ケタタマシク吹立(ふきた)てていた非常汽笛が、次第次第に背後に迫って来るのを
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼の宜(の)べ伝える心理に随順する、新鮮な精神、若い精神、世俗の灰汁に染まない精神、もしくは洗い磨かれ、悲しみの涙に潤うた心——青年や、貧しい境遇に泣く人や
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
が、秀吉が、かくも沁々(しみじみ)、真面目に心事を語るのは、めずらしいことだった。それは彼が、いまや天下に為(な)さん抱懐(ほうかい)の緒(しょ)を布(の)ぶるに当って、この年の初めを、まさに重大な岐機(きき)と見
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前条には信念と題して主(おも)に虎を神また使い物として崇拝する事を述べたが、ここには民俗てふ広い名の下に虎に係る俗信、俗説、俗習を手当り次第序(の)べよう。
その廷(の)んびりとした屈託のない長さは、海の水平線を除けば、およそ本邦において肉眼をもって見られ得べき限りの最大の線であろう。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
次に久米(くめ)の摩伊刀(まいと)比賣、次に怒(の)の伊呂(いろ)比賣、次に葛城(かづらき)の長江(ながえ)の曾都(そつ)毘古は、玉手の臣、的の臣、生江の臣、阿藝那の臣等が祖なり。また若子(わくご)の宿禰は、江野の財の臣が祖なり。
おいと答(こた)へて米(こめ)かし桶(をけ)に量(はか)り出(だ)すほどの惚(の)ろさ、斯(か)くて終(おは)らば千歳(ちとせ)も美(うつ)くしき夢(ゆめ)の中(なか)に過(すぎ)ぬべうぞ見(み)えし。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしそれは誰かもうこの世にはいない元丸の内勤めのサラリーマンの迷える魂が、仮りに新聞紙に慂(の)り移って、懐しい想い出多い深夜のビル街を散歩しているようでもあった。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
左右の肋骨を交(こもご)も引き寄せて体を代る代る左右に曲げ、その後部を前(すす)める中、その一部(第三図)また自ら或る凸起に托(の)り掛かると同時に、体の前部今まで曲りおったのが真直ぐに伸びて
「どこに」と孤堂先生は足を揃(そろ)える暇もなく、そのまま日和下駄(ひよりげた)の前歯を傾けて背延(せいのび)をする。先生の腰が中心を失いかけたところを、後ろから気の早い文明の民が押(の)しかかる。先生はのめった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
唯之を敍(の)ぶれば、心昂(あが)り、思(おもひ)樂し。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
伝右衛門は、戯(たわむ)れながら、とうとう、彼を捕えて、罰杯として、大きな杯(の)でのませた。十郎左は、覆(くつがえ)るように、坐って
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、幾人(いくにん)もいる肉襦袢(にくじゅばん)一枚(まい)の若(わか)い女(おんな)らの群(む)れから、目(め)に残(の)っている女(おんな)を探(さが)しました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども其処に部落でも発達すれば、やがてそれが地名となり沼をも其名で呼ぶようになること、野尻湖の如き例が示す通りである。野は即ち沼(の)の音に充てたものに外ならない。
上州の古図と山名 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
マーキュ はて、兎(うさぎ)ではない、兎(うさぎ)にしても脂肪(あぶら)の滿(の)った奴(やつ)ではなうて、節肉祭式(レントしき)の肉饅頭(にくまんぢう)、食(く)はぬうちから、陳(ふる)びて、萎(しな)びて……
その心悠々(ゆうゆう)として常に春がすみのたなびけるごとく、胸中に一点の物無(の)うして人我(にんが)の別定かならぬのみか、往々にして個人の輪郭消えて直ちに動植物と同化せんとし、春の夕べに庭などに立ちたらば
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
大忠(だいちう)は(九〇)拂辭(ふつじ)する所(ところ)無(な)く、(九一)悟言(ごげん)は(九二)撃排(げきはい)する所(ところ)無(な)く、廼(すなは)ち後(のち)に其(その)辯知(べんち)を申(の)ぶ。此(こ)れ親近(しんきん)せられて疑(うたか)はれず・(九三)之(これ)が難(じ)を盡(つ)くすを知(う)る所以(ゆゑん)也(なり)。
「ああじれッたい! あんな男(の)を見ると、また山の中が嫌になるもんだねえ……」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
シテ酒家ニ付セ使(し)メズ/老後功名古暦ノ如シ/酔来顔色唐花ノ似(ごと)シ/東風料峭トシテ天街遠ク/疾(やまい)ヲ力(お)シテ還(ま)タ下沢車ニ登(の)ル〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これによって、われら守護する逗留客は、御自分の方から、この邸を開いて、もはや余所(よそ)へ立退(の)くじゃが。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伊藤(いとう)五がおどろいて、その矢(や)をぬいて清盛(きよもり)の所(ところ)へもって行って見(み)せますと、並(な)みの二倍(ばい)もある太(ふと)い箆(の)の先(さき)に大(おお)のみのようなやじりがついていました。清盛(きよもり)はそれを見(み)たばかりでふるえ上(あ)がって
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
アブラハム、壇を築き、柴薪をならべ、その子イサクを縛りて、之(これ)を壇の柴薪の上に置(の)せたり。
父 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ここに大伴(おほとも)の連(むらじ)等が祖道(みち)の臣(おみ)の命、久米(くめ)の直(あたへ)等が祖大久米(おほくめ)の命二人、兄宇迦斯(えうかし)を召(よ)びて、罵(の)りていはく
「あるか、脚の早い船(の)が?」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだけでは何の本だか解(の)み込めないらしく、中味を二三ペエジめくつてみて、やつと自分達にはとても解りさうにない本だといふ事だけが解つたらしかつた。
その神の言(の)りたまはく、「我(あ)が前(みまへ)をよく治めば一、吾(あれ)よくともどもに相作り成さむ。もし然あらずは、國成り難(がた)けむ」
少し宛(ずつ)の貰い物もある、処が小遣や着る物は皆私に預けて少しも無駄遣いはせんで、私の手許に些少(ちっと)は預りもあり、私も永く使った事だから、給金の心得で貯(の)けて置いた金も有るじゃ
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
放翁告帰(退官して隠居すること)の三年、舎東の茀地(ぶつち)(草の生ひしげる土地)を闢く。南北七十五尺、東西或ひは十有八尺にして贏(の)び、或ひは十有三尺にして縮まる。
小国寡民 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
媼(ばあ)やゆっくり拝みねえッて、掴(つか)みかかった坊主を一人引捻(ひんねじ)って転(の)めらせたのに、片膝を着いて、差つけて見せてやった。どうして耐(たま)ったもんじゃあねえ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
室に入り来てまず四周(ぐるり)と人々を見廻し地板(ゆかいた)に坐り両掌を地板に較(の)せ、また諸方に伸ばして紙や麪包(パン)の小片(かけ)を拾い嗅ぐ事猴のごとし、この児痩形(やせがた)にて十五歳ばかりこの院に九年棲(す)めり
大伴の家へ人を廻して様子を聞くに、今夜は兄弟酒を酌(の)んで楽しむ様子だから、今夜こそ斬入(きりい)って血の雨を降らせ、衆人の難儀を断とうという、文治郎斬込(きりこみ)のお話に相成ります。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『申し難いが、細(こま)かい銭(の)をすこし、お持ち合せはないか。実はかくの通り、単衣(ひとえ)まで質に入れてしまったので、金策に出られぬ始末』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そよと吹く風の恋や、涙の恋や、嘆息(ためいき)の恋じゃありません。暴風雨(あらし)の恋、暦(こよみ)にも録(の)っていない大暴雨(おおあらし)の恋。九寸五分の恋です」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十一節に「蘆(あし)あに泥なくて長(の)びんや、葦(よし)あに水なくして育たんや」とありて、この二つの植物が水辺に生ずるものなることを示している。「蘆」と訳せるはパピラス(Papyrus)であった。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
象山常に春秋の義を引き、城下の盟(ちかい)を以て国の大恥と為す。下田の議を聞き、いよいよ益々(ますます)憂憤す。予が事に坐して獄に下り、獄中になお上書して宇内(うだい)の沿革を論じ、航海の事務を陣(の)べんと欲す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
支えた腕(かいな)が溶けるように、島田髷(しまだ)を頂(の)せて、がっくりと落ちて欄干(てすり)に突伏(つッぷ)したが、たちまち反(そ)り返るように、衝(つッ)と立つや、蹌踉々々(よろよろ)として障子に当って、乱れた袖を雪なす肱(ひじ)で
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「彼は孔のやうに食(の)む」
不器用な天使 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
曙人(とほつおや)、馮(の)りくる児らを、 穹窿ぞ光りて覆ふ。
文語詩稿 五十篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
すると誰かが外で、其處いらには珍(めづ)らしい新らしい鰯(の)を、見つけたといつて買つて來たのよ、買つてくる奴も奴ぢやねえか、一盃機嫌だから、御本堂も何もあるものか
佃のわたし (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)