)” の例文
しかし、長老の快川国師かいせんこくしは、故信玄こしんげんおんにかんじて、断乎だんことして、織田おだの要求をつっぱねたうえに、ひそかに三人をがしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すかして見ると春の日影は一面にし込んで、射し込んだまま、がれずるみちを失ったような感じである。中には何も盛らぬがいい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人殺しの罪はがれられないとは云いながら、年は若し、出世の見込みのある相撲を、こんなことで殺すのは可哀そうでした。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こゝに注意をがすべからざる一大現象は、遊廓なるものゝ大にこの時代に栄えたることなり、難波或は西京には古くよりこの組織ありしと雖
徳川氏時代の平民的理想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
手を動かす練習をもうすこし遅く始めたのだったら、彼はこのチャンスを、むざむざとがしたかも知れないのだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これらの細かいことは、その時わたしが非常に煩悶していたのにかかわらず、何ひとつがさずに、あたかもきのうのことのように明白に思い出します。
ところがおさん二番町の小川様から探索が届いてるもんじゃからすぐに手が這入って、手が這入ると寺男の庄吉という者がおさん本堂の床下よかしたげたところが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あいやお武家、袴氏とやら。ずいぶん立派な腕前だの。拙者鉄扇てっせんにてお相手いたす。ただし後には槍がある、宝蔵院ほうぞういん流の鎌槍かまやりがな。まずこれだけはがれられまい」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ネーにはナポレオンのこの奇怪な哄笑こうしょうの心理がわからなかった。ただ彼に揺すられながら、恐るべきうらないからがれた蛮人のような、大きな哄笑を身近に感じただけである。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
黒めが、やわか別嬪べっぴんがすまじと、ほら、のう、あの通り今もなおしきりとはずんでいるわ、わはははは、わはははは、のう、どうじゃ、畜生のあさましさとはまさしくあれじゃわ。
KS倶楽部の土間は、命からがら、身をもってがれて来た人々で埋まっていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
今後はがさぬぞ。この繃帯を解いてくれ。この蒲団ふとんを取ってくれ。早く。早く
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
けれどもこう云う天与の時をがしては武士の冥加みょうがに盡きる。
甚太夫は本望ほんもうげたのちの、くちまで思い定めていた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「まあ岡本さん、穏やかに……私は決して無理にと言うのじやなくて、出来るならと、まあ話のついでに話したのが、うまく成功したようなわけで……ですから、今度のところは、どうぞまあ、穏やかに見がしておいて下さいな。」
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
たとい誰が持ち出したにせよ、その笠に自分の名がしるされてある以上、自分も係り合いをがれることは出来ない。
月給はたくさんとる、時間は少ない、それで宿直をがれるなんて不公平があるものか。勝手な規則をこしらえて、それがあたまえだというような顔をしている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(どうだ、貴公も行かないか。ぜひ一口入れ。吾々が世に浮かび出る千ざいの一ぐうが来たのに、その機会をがすなどという法があるものか。——なあ御新造、そうじゃないか)
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流石さすが名奉行様だから、永禪和尚が藤屋の女房じゃアまアお梅を連れてげる時のことを知ってるから、これをかして置いては露顕するもとというて、ってげたに違いないと云うので
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
目につくものなら、何なりとがさんというのが、私立探偵の生命線なんでして——
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「何んの鼓賊め! その手には乗らぬ! 神妙に致せ! がしはせぬぞ!」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お近と幸之助が藤助の家から帰る途中で、町方らしい者に追われて危くがれたなどという噂を聴くたびに、彼も毒針で胸を刺されるように感じた。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
勝頼かつより末子ばっし伊那丸いなまるが、まだ快川かいせんのふところにかくまわれているという事実をかぎつけて、いちはやく本陣へ急報したため、すわ、それがしてはと、二千の軍兵ぐんぴょう砂塵さじんをまいて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
追い懸けて来る過去をがるるは雲紫くもむらさきに立ちのぼ袖香炉そでこうろけぶる影に、縹緲ひょうびょうの楽しみをこれぞと見極みきわむるひまもなく、むさぼると云う名さえつけがたき、眼と眼のひたと行き逢いたる一拶いっさつ
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
するとれから其の響けで永禪和尚がげたので、逃げる時、藤屋の女房じゃアまアと眞達を連れて逃げたのだが、眞達を途中で切殺して逃げたので、ところが眞達は死人しにんに口なしで罪を負うて仕舞い
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それ、がすなッ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
迷惑したのは小栗家で、自分の屋敷の門前に据えてあったのですから、係り合いはがれられません。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「出しておけって、あんな立派な御召おめしはござんせんわ。金田の奥さんが迷亭さんに叮嚀になったのは、伯父さんの名前を聞いてからですよ。着物のとがじゃございません」と細君うまく責任をがれる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これほどの騒動が出来しゅったいしちゃあ、唯済むわけのものじゃあねえ。積もってみても知れたことだ。お気の毒だが、おめえの主人も係り合いで、なにかの迷惑はがれめえと思う。
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
万一水底をくぐって引っ返して来る事もあるかと、岸では夜もすがら篝火かがりびを焚いて警戒していたが、かれは再びその影を見せなかった。がれて海に去ったのか、溺れて海に沈んだのか。
馬妖記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
十手を持った二人が眼のまえに立ち塞がっているのに気怯きおくれがしたのか、もうがれる道はないと諦めたのか、さすがの幸之助も俄かにおとなしくなって、持っている血刀をからりと投げ捨てて
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)