)” の例文
君には解るまいが、この病気を押していると、きっと潰瘍かいようになるんだ。それが危険だから僕はこうじっとして氷嚢をせているんだ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かえって口きゝ玉うにも物柔かく、御手水おちょうず温湯ぬるゆ椽側えんがわもって参り、楊枝ようじの房少しむしりて塩一小皿ひとこざらと共に塗盆ぬりぼんいだ僅計わずかばかりの事をさえ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天空そらには星影ほしかげてん、二てんた三てんかぜしてなみくろく、ふね秒一秒べういちべうと、阿鼻叫喚あびけうくわんひゞきせて、印度洋インドやう海底かいていしづんでくのである。
河海抄は此の故事を今昔物語こんじゃくものがたりから引用し、「大和物語やまとものがたりにも此事あり」と云っているけれども、現存の今昔や大和物語にはっていない。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
人間の数がえて、この地球の上にはりきらないのも一つじゃ。だが、それだけではない。人間の漂泊性ひょうはくせいじゃ。人間の猟奇趣味りょうきしゅみじゃ。
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二十日の後、いっぱいに水をたたえたさかずきを右ひじの上にせて剛弓ごうきゅうを引くに、ねらいにくるいの無いのはもとより、杯中の水も微動だにしない。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
おじいさんは、ひざをって、うやうやしくあおたまてのひらうえせてながめていましたが、そのなかから、一つ、一つけはじめました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
勘辨などは思ひも寄らねえ、——なア、相模屋さん、あつしはケチな植木屋、お前さんは江戸の長者番附にもるほどの分限者ぶげんしやだ。
鶴吉は「お末の奴何んだつてあんなものを持出しやがつたんだらう」と思つて見まはすと、洗面所の側の水甕みづがめの上にそれがつてゐた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
懐中ふところから塵紙ちりがみして四つにつて揚子箸やうじばし手探てさぐりで、うくもちはさんで塵紙ちりがみうへせてせがれ幸之助かうのすけへ渡して自分も一つ取つて、乞
この人も戦って来た兵隊のひとりかと思うと、日吉は、頭にせられている鎖籠手くさりごての重い手も、ぞくぞくする程、光栄なここちがした。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかしはそんなに樹木じゆもくえてゐたわけでなく、たいていそれらのつかうへには、まる磧石かはらいしせて、全體ぜんたいおほうてをつたものでありました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
もっとわたくし申上もうしあぐるところがはたして日本にほんふる書物しょもつせてあることとっているか、いないか、それはわたくしにはさっぱりわかりませぬ。
かしましく電車や自動車の通っているのを余所よそに、一艘いっそう伝馬てんまがねぎの束ねたのや、大根の白いのや、漬菜の青いなどをせて
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
つてユーゴのミゼレハル、銀器ぎんきぬす一條いちでうみしときその精緻せいちおどろきしことありしが、このしよするところおそらくりんにあらざるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
彼女は片手を兄のひざせ、片手でしっかりと舟縁ふなべりを掴んでいた。風に乱された彼女の髪が、兄の没表情な頬の上に散りかかってゆく。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
十二月押しつまってから矢野の手紙が大木の机にっていた、いつも長い手紙ときまってるにその手紙はすこぶる簡単であった。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
昨夜ゆふべの収めざるとこの内に貫一は着のまま打仆うちたふれて、夜着よぎ掻巻かいまきすそかた蹴放けはなし、まくらからうじてそのはし幾度いくたび置易おきかへられしかしらせたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それで巨人きよじんせた西風にしかぜその爪先つまさきにそれを蹴飛けとばさうとしても、おそろしく執念深しふねんぶか枯葉かれはいてさうしてちからたもたうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
次ぎにせるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。
我が馬券哲学 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
地に突いたは自然木の杖、その上へ両手を重ねてせ、その甲の上へ頤をもたせ、及び腰をした様子には、一種の気高さと鬼気とがあった。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その上に昨日の俳句会の会稿らしき者せあり。竹と会稿とは共にきたなき処調和すべけれど、卓は竹とも会稿とも調和せず。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
けだしその船の大小、人員の多寡たか、いまだ知るべからずといえども、動物の属その数億のみならず、あにことごとくこれをするにたえんや。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
そしてこの水仙すいせんの花を、中国人は金盞銀台きんさんぎんだいと呼んでいる。すなわち銀白色の花の中に、黄金おうごんさかずきっているとの形容である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
彼は食い荒されたにしんの背骨をひとさらせていたが、おくへ通ずるドアを後ろ足で閉めながら、突拍子とっぴょうしもない声でいきなり
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
(これは驚いた……かねて山また山の中と聞いたから、がけにごつごつと石をせた屋根がかさなっているのかと思ったら、割合に広い。……)
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いまのは勝負しょうぶなしにすんだので、また、四五にんのお役人やくにんが、大きなお三方さんぽうなにせて、その上にあつぬのをかけてはこんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
独語ひとりごとを言ひ/\、てつきり狸がからかさの上につかゝつてゐるものと思つて、誰でもが唯もう無中むちゆうになつて頭の方ばかり気にする。
戸塚の三次は、何も言わずにズイとはいりこんで、パラリ、手拭を取りながら、そいつをかたっけて、じろりとお妙を見た。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
別に美味おいしい鰹節の煎汁を拵えておいて薬味には大根卸だいこんおろしにきざねぎ焼海苔のんだものおろ山葵わさびなぞを牡蠣の上へせて今の煎汁をかけます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
洋傘直しは剃刀をていねいに調しらべそれから茶いろの粗布あらぬのの上にできあがった仕事しごとをみんなせほっと息して立ちあがります。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
のりになりて首をうごかすと、権太も釣込まれてその通に首を揺かし、極りの悪き風にて顔を下げ、月代さかやきの上に右の手をす。
手許てもと火鉢ひばちせた薬罐やかんからたぎる湯気ゆげを、千れた蟋蟀こおろぎ片脚かたあしのように、ほほッつらせながら、夢中むちゅうつづけていたのは春重はるしげであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
すれば、當國このくに風習通ならはしどほりに、かほわざかくさいで、いっち晴衣はれぎせ、柩車ひつぎぐるませて、カピューレット代々だい/\ふる廟舍たまやおくられさッしゃらう。
武王ぶわう(二六)木主ぼくしゆせ、がうして文王ぶんわうし、ひがしのかた(二七)ちうつ。伯夷はくい叔齊しゆくせい(二八)うまひかへていさめていは
ところが、向うの船は積荷が一杯で、今度はッけて行くわけに行かねえからこの次まで待てと言うんで、俺たちはそのまま島へ残されたんだ。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
但しそのころも既に多少の文名ありしかば、十句中二三句づつ雑詠にるは虚子きよし先生の御会釈ごゑしやくならんと思ひ、少々尻こそばゆく感ぜしことを忘れず。
わが俳諧修業 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
のみならず、鋭利な刃物ですくいとるように陰部を切りとって、陰毛をせた一片の肉塊が、かたわらの壁の根に落ちていた。そればかりではない。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
えゝ、いしせてあるおうち屋根やねから、竹藪たけやぶまでえます。馬籠うまかごむらが一えます。荒町あらまち鎭守ちんじゆもりまでえます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
初めに透視の実験で途中で開封するのではないかという懸念のために、写真乾板の上に物をせて透視してもらった。
千里眼その他 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
画録にする所の鳳嶺が同僚渡辺鶴洲はもと小原氏、京都より長崎にうつつた小原慶山の後だと、同じ画録に見えてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
やわらかぬくよかな心持、浴槽のふちへ頭をせ足を投げ出していると、今朝出立して来た田原の宿、頂上の白雲、急峻な裏山などは夢のようになってしまう。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
掌のうえにせてやると、険難けんのんがって鼻をくんくんいわせる。その様子はまるで人間の子供が、「もういい。もういい。」と云っているように見える。
犬の生活 (新字新仮名) / 小山清(著)
僕は毎朝買つて見て居るんです——九州炭山の坑夫間に愈々いよ/\同盟が出来上がらんとして、会社の方で鎮圧策に狼狽らうばいしてると云ふ通信がつてたのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ほかものらはさいはひにれを坐布團ざぶとんにして其上そのうへ彼等かれらひぢせ、其頭そのあたまえてむかあはせになつてはなしてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すると私が引っ張って居る山羊、その山羊の上にせてあった僅かの荷物——羊の皮の敷物、くつ、薬のような物、それがどこへか落ちてしまったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
乙女おとめたちの一団は水甕みずがめを頭にせて、小丘こやまの中腹にある泉の傍から、うたいながら合歓木ねむの林の中に隠れて行った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
店のいそがしいときや、面倒めんどうなときに、家のものは飯をにぎり飯にしたり、または紙にせて店先からあたえようとした。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「あの六平の禿罐はげかんも飲助やさかいのう。此前もほら酒見祭を見ね行った時ね、お前様、あの常坊を首馬にせたなりに田圃たんぼの中へきせ転がったぞかい。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
A てよ。對話たいわは『中外ちうぐわい』にせるんだから、そんなはなしすこ遠慮ゑんりよしてかうよ。それよりかモツト葉書はがきくわんする無邪氣むじやき面白おもしろはなしでもないかい。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)