トップ
>
憑
>
の
ふりがな文庫
“
憑
(
の
)” の例文
と、淵辺の血走ッた眼は
咒文
(
じゅもん
)
のように呟いた。何かが
憑
(
の
)
り移ったもののごとく、両の膝がしらで、ジリジリ前へすすみ出ながら。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
衒学
(
げんがく
)
的な中性女そのまゝな口振りが
憑
(
の
)
り移って、うぶ毛の口髭さえ面影に浮ぶのを醜いものにわたくしは感じ取りましたが
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
半年以前に、アランの言ったと同じようなことを書いたが、私にもいくらかアランの気持が
憑
(
の
)
り移ってきたのかも知れぬ。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
一天の
景
(
かげ
)
は、寒く、こころを
憑
(
の
)
り
秉
(
と
)
つて、歎きの
科
(
しぐさ
)
を強ひる。——わたしはその群る虫に、その虫の歌に、汎として
泛
(
う
)
き流れるサモス派の船である。…
雪
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
よしや我身の
妄執
(
もうしゅう
)
の
憑
(
の
)
り移りたる者にもせよ、今は恩愛
切
(
きっ
)
て
捨
(
すて
)
、迷わぬ
初
(
はじめ
)
に
立帰
(
たちかえ
)
る珠運に
妨
(
さまたげ
)
なす
妖怪
(
ようかい
)
、いでいで仏師が腕の
冴
(
さえ
)
、恋も未練も
段々
(
きだきだ
)
に
切捨
(
きりすて
)
くれんと
突立
(
つったち
)
て
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
筆の先で思想上の問題を
始終
(
しじゅう
)
取り扱かいつけている癖が、活字を離れた彼の日常生活にも
憑
(
の
)
り移ってしまった結果は、そこによく現われた。彼は相手にいくらでも口を利かせた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あんたには、急な病で死ィとげた、肉親の女のひとがついている。そのひとは、現世で仕残したことがあるのンで、それがあきらめきれんで、あんたの身体に
憑
(
の
)
りうつって、現世のいとなみを
姦(かしまし)
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
子供の小腕だし、刀も小さいが、
侮
(
あなど
)
り
難
(
がた
)
いのは、その血相である。なにか、
憑
(
の
)
り移っているように
蒐
(
かか
)
って来る向う見ずな切先には、兵庫も、一歩
退
(
ひ
)
かなければならなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし
猜疑
(
さいぎ
)
の
眸
(
ひとみ
)
が一度お延の眼の中に動いたら事はそれぎりであると見てとった彼は、実を云うと、お延と同じ心理状態の支配を受けていた。
先刻
(
さっき
)
の波瀾から来た影響は彼にもう
憑
(
の
)
り移っていた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「おのれは、藩祖さまが
憑
(
の
)
りうつったような高慢な口をきく。さっきから、ちくいち聞いていたが、おのれの申すことは、すべて理窟だ。つまりは、このわしに切腹せい、詰腹を切れというのかい」
無惨やな
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
神路山へ鷹を放って小鳥の肉を
炙
(
あぶ
)
ったりして、大いに武威を
謳
(
うた
)
っているうちに気が変になったという男の話があるが——今夜の裸男に、その
悪霊
(
あくりょう
)
が
憑
(
の
)
り移ったのではあるまいか。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここより後へは
退
(
しりぞ
)
く大地を持たない唇をむすんで、
輦
(
くるま
)
のまえの大衆に
憑
(
の
)
りうつッている大魔小魔の振舞いをながめているだけなのである。そして、その結ばれたままの唇から、微かに
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……終ると、香煙の渦の中にある
上人
(
しょうにん
)
の顔は、そのままいつのまにやら
定
(
じょう
)
に入ったすがただった。膝に
印
(
いん
)
を結び、
趺坐瞑目
(
ふざめいもく
)
することしばらく、やがてのこと、何かが
憑
(
の
)
り移ったようにこういった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
憑
漢検1級
部首:⼼
16画
“憑”を含む語句
憑依
神憑
狐憑
取憑
憑拠
信憑
憑着
憑入
憑司
憑物
乗憑
憑付
天狗憑
信憑性
憑神
憑移
憑頼
憑體
憑殺
憑魔
...