)” の例文
すなすべりのたに一名いちめいたにばるゝほどで、一度いちどこのあななか陷落かんらくしたるものは、到底とうていがれこと出來できないのである。
言葉が順当に運ばれて、作歌感情の極めて素直にあらわれた歌であるが、さればといって平板に失したものでなく、とらうべきところは決してがしてはいない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さきにわがため命をすてし、阿駒おこま赤心まごころ通じけん、おぞくも爾釣り寄せられて、罠に落ちしもがれぬ天命。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
らった上は決してがさぬ。光代との関係は確かに見た。わが物顔のそのつらにじるのは朝飯前だ。おれを知らんか。おれを知らんか。はははははさすがは学者の迂濶うかつだ。馬鹿な奴。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
わざはひの神といふ者もしあらば、まさしく我身さそはれしなり、此時の心何を思ひけん、よしとも知らずしとも知らず、唯懐かしの念に迫まられて身は前後無差別に、がれいでしなり薄井の家を。
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)