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血によって印刷された綱の跡——このような一見つまらないものを見がさなかったのは、さすがに名検事のほまれ高き村松氏であった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
がすな!」という、五郎蔵の、烈しい声が響いた。瞬間に、乾児たちが、再度、四方から、左門へ斬りかかって行く姿が見えた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
蛙を見つけては、がさず踏み潰した。蛇が蛙を呑むのを、舌なめずって最後まで見まもり、呑んでしまったところをすぐその場で叩き殺した。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
尤も、このことは、前から口には出さないが、皆うすうす知っていたので、いずれ一度はひと騒ぎをがれまいという予期もあったに違いない。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間もなく、ルパンが五人の部下と共に、ルージェール伯として、堂々と非常梯子からがれ去ったことが判明した。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
捕える糸よ。蟻だの、ぶゆだの、留まるとがさない道具だわ。あなた名を知らないでしょう、これはね、モウセンゴケというんです、ちょいとこの上から御覧なさい。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
がれたしのときつめた御心おこゝろかならずおあそばすなとなだめるさへはうるみぬ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これよりは行くべきかたもなければ、沼の岸の大木の梢にのぼりいたり。ヤマハハはどけえ行ったとてがすものかとて、沼の水に娘の影のうつれるを見てすぐに沼の中に飛び入りたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
がれたひとおもむきがあるのはその理由わけであらう。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こう思って九十郎は熊太郎の剣を、辛うじて引っ外して修羅場をがれ、お吉の家へ逃げ込んだところ、思いもよらず織江がいた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、どう要心いたしたところで、られるときはがれ難いし、また天命のつきぬときは、いかなる難におちいろうとも、そう易々やすやす終るものではない」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで彼は、きゃっと一声、悲鳴をそこに残すと、気が変になったように室外に飛び出し、階段を三段ずつ一ぺんに駈けあがりつつ一メートルでも遠くへがれようと努力した。
こんなことがあってよいものだろうか! 母はその子に殺されるかのように、こう大声に助けを呼んで、縁から庭へがれようとした。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そのお苦しみを慰めようと枯野に狩りを催せば愛鷹あいようはお手からがれ去る……若殿の切ないお心のうち申す言葉もございません」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
捕えられたらがれられない。恐ろしい漢権守の住居の、身の毛の立つような噂話を、久しい以前から聞いていたからであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今夜からこの男と……と思ったらいても立ってもいられず……そこでその席から逃げ出し……若党をつれて湯治場へがれ……
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(混乱にまぎれさえぎられ、一人のこらず見がしてしまったが、その後お吉め江戸へ入り、あんなものに零落したものと見える)
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女は今は絶体絶命、失望に眼もくらみかけたが、がれるだけは遁がれて見ようと隈笹くまざさの中へ飛び込んで息をひそめてうかがった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうして江戸の人々は、信州本場の追分を、永久聞くことが出来なくなったが、その代り恐ろしい辻斬りからは、首尾よくがれることが出来た。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「大望の邪魔する天禀星の主、目付かり次第叩っ切るのさ、求林斎それまではそちの体、屋敷内からがさぬぞよ!」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「へへへ、どいつかやってやがるな。アレーと来りゃこっちのものだ。こいつ見がしてたまるものか。どれどれ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「もうこうなればヤブレカブレだ! 切って切って切り捲くるばかりだ! がれられるだけは遁がれてやろう!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
Fなる魔法使い 大理石の牢獄をがれ出て、潮の国へ自由が歩む。潮の国には人魚がいる。(笑う)敗けた歌女うたいてが海の底でお前の来るのを待っている。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……親の心知らずというやつだな。大きな計画の方へ眼をつけている俺だ、ああいう小仕事は見がして置こう
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その柔術を使って支那官憲の包囲をがれたというようなことが書かれてあったことぐらいを覚えて居ります。
雑草一束 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうして腹背敵を受けたその危険からはがれたが、神秘を極めた地下国へは再び行くことが出来なくなった。
「それじゃあ妾はどんなことをしても、がれることは出来ないんだね。仕方がないから自由ままになろうよ」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「待て三十郎、逃がしてなろうか! ……とうとう見付けた。がそうや! ……親の敵、観念せよ!」
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼は圧殺あっさつされるであろう。どこからもがれる道はない。手をむなしゅうして殺されなければならない。
吾をさようの者とも知らず現在敵の御嶽冠者の味方になれとは事可笑おかしや! やおれ、汝ら鼠賊そぞくやから、このように明かした上からは、やわか吾らをがしはせまい。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「我は伊東頼母、先夜は府中武蔵屋で、むざむざ取り逃がしたが、再度ここで巡り合ったは天のたすけ! 父親の敵、今度こそはがしはせぬ! 出て来て勝負を致せ!」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかも心ではどうともして、この苦しみからがれ出たいものと、あえぐがように願っていた。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこで慶安騒動が破れ、正雪はじめ一味の人々、ことごとく刑殺されたばかりか、その血縁も刑に行われたが、この二人だけは幸いにがれ、今に生存しているのであった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
警護して来た紀州藩士は、忽ち三十郎をがさぬように、遠巻きにひしひしととりかこんだ。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうして物凄い「死の自動車」から、張教仁はがれたけれど、その後も彼の身の上には、死の自動車よりも恐ろしい、奇怪な事件が頻出した。しかも、同じその夜のうちに。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
連続した叡山の裏山の危難、やっとがれて旅へは出たが、その旅も決して幸福ではなかった。そうして今は敵ともいうべき、関東軍に捕えられ、生死のほどもおぼつかない。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、時綱は兵法巧者の、心掛けある武士だったので、このように大勢して押して行ったならば、四辺あたり動揺して人も出で、それに紛れて十郎頼兼がれて、故郷へ帰ろうもしれぬ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こうは考えたが宗三郎、どうしてここをがれたものか、その思案がつかなかった。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で彼は危難からがれようと急いで窓へ手をかけたが、もうその時は遅かった。見る見る身内の精力が消え、四肢が棒のように硬直し眼だけ大きく見開らいたまま腰掛けの上へ転がった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こいつを受けたら刀が折れる、身をかわすと辛くがれ、広太郎屋内へ退いた。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だからこれさえ持っていれば、大概の危難はがれることが出来る。恐ろしい敵が襲って来ていよいよ命があぶなくなったら、こいつをその敵へ投げ付けるがいい。まず最初に一つ投げる。
貴様も相当の悪党らしい。問い詰められた苦しまぎれに、ちょっとがれを
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それでは益〻恰好というもの、がしはせぬ、お立ち合いなされ!」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところが源之進が余りの醜男ぶおとこなのに厭気がさし(長いこれからの浮世を、こんな男と一緒にくらさなければならないとは。厭だ厭だ)と思い詰め、一本の娘の、前後あとさき見ない感情からその席をがれ
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを迂濶うっかり見がすような、武士は不用意の人間ではない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「一人もがすな! 一人も遁がすな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「見がしてくれるのね」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)