)” の例文
机を置いてこれに対し、浴衣に縮緬ちりめん扱帯しごきめて、ひじをつき、けざまの目をねむるがごとくなるは、謂うまでもなく鴨川であった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかに感情の激越を表現するのでも、ああまでぶざまに顔を引きゆがめたり、唇を曲げたり、ったり、もがいたりしないでもいい。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、相手の飛躍にくうを打たせるたびごとに身をらしつつ叫んだが、うんもすんも、二つの人影はもとより答えもしないのだ。
傷は一刀の下に斬下げた、見事な後ろ袈裟げさ虚空こくうを掴んでった太吉の顔は、おびただしい出血に、紙よりも白くなっております。
振りかぶった刀の下に、お梅は肩先から乳の下にかけてザックと一太刀、虚空こくうを掴んでけぞると息はもろくも絶えた。
「おれは行くよ。おぬしらは六十、七十まで生きのびて、馬鹿なの世界で、いいだけっつっつするがよかろう。冥土の明窓あかりまどから見ていてやるぞ」
ボニン島物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そうしてその瞬間に吾れにもあらず眼を開いた時に、女は丸卓子テーブルから離れて弓のようにっていた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
途端にもし私が身をねじらなかったならば、私は風を切って飛んで来たその重い物体を真正面まともに身に受けて向うより先にこちらがけ反らなければならなかったであろう。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
八重は鞴の把手と一処に、わざと床とすれ/\になる位につて
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
金五郎は後へけぞったが、直ぐ跳ね起きて外へ走り出た。
偶人物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
水棹みずさおを取り上げて、ガバと打ってかかるのを、身を開いて、ツ、ツ、ツ、懐へ入ると見るや当身一本、船頭は苦もなく水垢あかの中にります。
男のふところ深くへ細やかな襟頸えりくびを曲げ、またっては、狂わしげに唇をさがしぬく黒髪にたいして、彼は意地わるく唇を与えないのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俥の上で何の気もなく少しうしろへると、そのまゝ車台が梶棒を天に冲して仰向けに打つ倒れ、私は往来へ叩きつけられてイヤと云ふほど後頭部を打つた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
百人長は猿臂えんぴを伸ばして美しき犠牲いけにえの、白きうなじ掻掴かいつかみ、そのおもてをばけざまに神崎の顔に押向けぬ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眼の前に火薬庫が破裂したかのように、思わず両手を顔に当てて丸卓子テーブルの前にった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それを最後にどうけ反った。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
水棹みずさおを取り上げて、ガバと打ってかかるのを、身を開いて、ツ、ツ、ツ、懐へ入ると見るや当身一本、船頭は苦もなく水垢あかの中にります。
百人長は猿臂えんぴを伸ばして美しき犠牲いけにえの、白きうなじ掻掴かいつかみ、そのおもてをばけざまに神崎の顔に押向けぬ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、時平は体をらして、さすがにいくらか照れ臭いらしく、例の豪傑笑いをした。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その切先きっさきに身を投げかけるようにして来た相手は、そのまま懐剣を取落してけぞった。両手の指をシッカリと組み合わせたまま、あおのけに倒おれると、膝頭をジリジリと引き縮めた。
斬られたさに (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けぞるばかりに仰天ぎょうてんして、なんの躊躇ためらいもなく、六尺棒を小脇にしたまま、正面六、七段の石だんを、トン、トン、トンと勢いよく馳け上がってゆきましたが——それとほとんど同時に
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子分のガラッ八が差出した提灯ちょうちん覚束おぼつかない明りにすかして見ると、若い芸妓げいしゃが一人、銀簪ぎんかんざしを深々と右の眼に突っ立てられて、ざまに死んでいたのです。
と言うより身震みぶるいせしが、俯伏うつむけにゆらめく挿頭かんざし、真白きうなじ、手と手の間を抜けつ、くぐりつ、前髪ばらりとこぼれたるがけざまに倒れかかれる、もすそ蹴返しかかとを空に、下着のくれない宙を飛びて
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云ったなり、往来のまん中へって了いました。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
妙子は袂の片方を空へ振ってけざまに笑っていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お六は鉄砲玉のように石榴口から飛出すと、流しに滑って物の見事にりました。
すうつとうしろへつてしまはれた。
泉先生と私 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
る弁次郎。逃げ出すところを、ガラッ八に足の間へまきほうり込まれたのです。
すうつとうしろへつてしまはれた。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
け反る辨次郎。逃げ出すところを、ガラツ八に足の間へまきを投り込まれたのです。
見事につて、手燭は消えます。
見事にって、手燭は消えます。