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退
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の
ふりがな文庫
“
退
(
の
)” の例文
今一人の柄本家の
被官
(
ひかん
)
天草平九郎というものは、主の
退
(
の
)
き
口
(
くち
)
を守って、半弓をもって目にかかる敵を射ていたが、その場で討死した。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いくら聞かれても
曖昧
(
あいまい
)
な返事ばかりしていて、最後に
退
(
の
)
っ
引
(
ぴ
)
きならないところまで来てしまってから、強情を張り出した点であった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
寧子
(
ねね
)
を想うそばから、その
寧子
(
ねね
)
の恋を、自分へ譲って、国外へ
立
(
た
)
ち
退
(
の
)
いた純情一徹な友の身の上をも、彼はしきりと案じていた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふところ手のまま立って、じっとお蓮さまを見おろしながら、
退
(
の
)
けっ! という
意
(
こころ
)
……懐中で
肘
(
ひじ
)
を振れば、片袖がユサユサとゆれる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
若者は妄想を
退
(
の
)
けようとしたが、それからそれへ花やかな雲のやうな繰言がむく/\とわきあがつて来て、おさへきれさうもなかつた。
パンアテナイア祭の夢
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
その方がその当時、一葉女史を
退
(
の
)
けては
花圃
(
かほ
)
女史と並び、
薄氷
(
うすらい
)
女史より名高く認められていた、
楠緒
(
くすお
)
女史とは思いもよりませんでした。
大塚楠緒子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
どんな事でもして
退
(
の
)
けようという肌合の佐良井とは、結婚後一ヶ月経たない内に、到底並び立ちそうもないことが判ってしまいました。
死の舞踏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「どいておくれ。」と、
男
(
おとこ
)
は、ぶあいそうにいった。
少年
(
しょうねん
)
は、一
歩
(
ぽ
)
退
(
の
)
いて、
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
くして、
雲切
(
くもぎ
)
れのした
秋
(
あき
)
の
空
(
そら
)
を
仰
(
あお
)
いでいました。
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その
異形
(
いぎょう
)
の怪物はおどろく夫婦を
衝
(
つ
)
き
退
(
の
)
けて、風のように表のかたへ立ち去ってしまったので、かれらはいよいよおびやかされた。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
女は
上唇
(
うわくちびる
)
と
下唇
(
したくちびる
)
とを堅く結んで、
暫
(
しばら
)
く男の様子を見ていたが、その額を押さえている手を引き
退
(
の
)
けて、隠していた顔を
覗
(
のぞ
)
き込んだ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その解らない物を教えた時に丁度速水君が生徒だったから、偉くない偉くないという考えが
何時
(
いつ
)
までも
退
(
の
)
かないのかも知れません。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と恐ろしい悲鳴をあげてとび
退
(
の
)
いた。お杉の腕からごろりと転げ落ちたのは諸君御存じの木彫り人形である。若旦那でもなんでもない。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と一言の
許
(
もと
)
に笑って
退
(
の
)
けたが、小宮山はこの女何を言うのかしらと、かえって眉毛に
唾
(
つば
)
を附けたのでありまする、女は極く生真面目で
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宮は上着を源氏の手にとめて、御自身は外のほうへお
退
(
の
)
きになろうとしたが、宮のお
髪
(
ぐし
)
はお召し物とともに男の手がおさえていた。
源氏物語:10 榊
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それからもう一つは、そう云う
離業
(
はなれわざ
)
を
演
(
や
)
って
退
(
の
)
けられる
膂力
(
りょりょく
)
と習練を備えた人物が、現在この事件の登場人物のうちにあるからだ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そうしてその看護婦がグッタリと仰向けに引っくり返ったなりに動かなくなると、その綿を鼻の上に置いたままソロソロと離れ
退
(
の
)
いた。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この
退
(
の
)
っ
引
(
ぴき
)
ならないものへ落付きどころを置き、その上での生きてるうちが花という気持で、せいぜい好きなことに殉じて行ったなら
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
で、続いて中へ入って、持って来た座布団を机の前に敷いて、其処を
退
(
の
)
くと、雪江さんは礼を言いながら、
入替
(
いりか
)
わって机の前に坐って
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「
退
(
の
)
っ
引
(
ぴ
)
きなく手術を受けさせる妙案です。私は次男へ電報を打ってやりました。『俺が手術をしてやる。明日立つ』とは
何
(
ど
)
うです?」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と三人出たから見物は段々
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
る、
抜刀
(
ぬきみ
)
ではどんな人でも退る、豆蔵が水を
撒
(
ま
)
くのとは違う、
怖
(
おっ
)
かないからはら/\と人が
退
(
の
)
きます。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
友木の眼には涙がにじみ出た。彼はそれを払い
退
(
の
)
けるように、眼を
瞑
(
つむ
)
って頭を振ったが、彼の握りしめた
拳
(
こぶし
)
は興奮の為にブルブル顫えた。
罠に掛った人
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
康雄はこれだけのことをすらすらと言って
退
(
の
)
けた。彼は女の姿を見れば見るほど、いじらしさが増して、恋の心が募って行った。
好色破邪顕正
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
仮令
(
たとい
)
叔父様が何と云わりょうが下世話にも云う乗りかゝった船、
此儘
(
このまま
)
左様ならと指を
噉
(
くわ
)
えて
退
(
の
)
くはなんぼ
上方産
(
かみがたうまれ
)
の
胆玉
(
きもだま
)
なしでも
仕憎
(
しにく
)
い事
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、いよいよ帰るとなっても、
野次馬
(
やじうま
)
は容易に
退
(
の
)
くもんじゃない。お蓮もまたどうかすると、
弥勒寺橋
(
みろくじばし
)
の方へ引っ返そうとする。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「あゝよして呉れ!」父は
排
(
はら
)
い
退
(
の
)
けるように云った。「そんな事は聞きたくない。
馬鹿
(
ばか
)
な! 画描きなどが、画を描くことなどが、……」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いずれも
握飯
(
むすび
)
、
鰹節
(
かつおぶし
)
なぞを持って、山へ林へと逃げ惑うた。半蔵の家でもお民は子供や下女を連れて裏の隠居所まで立ち
退
(
の
)
いた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「なにいうてんのや。わたしが
戻
(
もど
)
ったとて、
知
(
し
)
らぬものが、あろうはずがあるかいな。——こうしてはいられぬのじゃ。そこ
退
(
の
)
きやいの」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「こやつ、わしを老人と見て侮っておるな! ようし! それならば消えて失くなるようにお
禁厭
(
まじない
)
してやるわ。そこ
退
(
の
)
くなッ」
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
樂音は、遠
退
(
の
)
くに從つてだんだんに柔かく、空に漂ふやうに聞きなされ、あたりの靜寂と月の光とに調和するやうに思はれた。
クリスマス・イーヴ
(旧字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
とても宥めたくらいでは累の
怨霊
(
おんりょう
)
は
退
(
の
)
かないと云うので、
祈祷者
(
きとうしゃ
)
を呼んで来て
仁王法華心経
(
におうほっけしんきょう
)
を読ました。お菊はそれを
遮
(
さえぎ
)
った。
累物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
明子は幼児の幻影を払ひ
退
(
の
)
けようとして幾度も手のひらを
瞼
(
まぶた
)
に斜めの空間に振つた。しかし彼女の手は空しく冷え冷えした秋の風を切つた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
人々は少し
退
(
の
)
いたが、元いた場所へはもどらなかった、そのうちに問われた男は気を落着かせ、ちょっと
微笑
(
ほほえ
)
みさえもらしながら、答えた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
これが役付きの与力なら、押してきくことは出来るのであるが、今は役を
退
(
の
)
いた平八であった。どうすることも出来なかった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と
辟易
(
たじろ
)
ぐ拍子に、ズドンと一発! 夫人の銃弾が
背後
(
うしろ
)
の扉に
逸
(
それ
)
て、濛々と白煙が立ち込める。床に
転
(
ころ
)
がった
拳銃
(
ピストル
)
を、素早く
靴
(
くつ
)
で払い
退
(
の
)
ける。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
青年
(
わかもの
)
は言葉なく縁先に腰かけ、ややありて、
明日
(
あす
)
は今の
住家
(
すみか
)
を立ち
退
(
の
)
くことに定めぬと青年は翁が問いには答えず、
微笑
(
ほほえ
)
みてその顔を守りぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
己は自分の事を
末流
(
ばつりゅう
)
だと
諦
(
あきら
)
めてはいるが、それでも少し侮辱せられたような気がした。そこで会釈をして、その場を
退
(
の
)
いた。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
さながら蠅取り紙に足を取られた銀蠅の、
藻掻
(
もが
)
けば藻掻くほど深みに引き込まるる、
退
(
の
)
くも引くも意に任せず、ここに全く進退
谷
(
きわ
)
まった様子。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
子供はそれを見ると、一種の
嫉妬
(
しつと
)
でも感じたやうに気狂ひじみた暴れ方をして彼の顔を手でかきむしりながら押し
退
(
の
)
けた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
市中の電車に乗って
行先
(
ゆくさき
)
を急ごうというには
乗換場
(
のりかえば
)
を
過
(
すぎ
)
る
度
(
たび
)
ごとに
見得
(
みえ
)
も
体裁
(
ていさい
)
もかまわず人を突き
退
(
の
)
け
我武者羅
(
がむしゃら
)
に飛乗る
蛮勇
(
ばんゆう
)
がなくてはならぬ。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
博士は無言で直ぐにその側へ寄添うと、屈み込んで白布をとり
退
(
の
)
けた。そして屍骸の右足をグッと持ちあげると、宇吉へ
三狂人
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
アア
妾
(
しょう
)
はただ自分の都合によりて、先祖代々師と仰がれし旧家をば一朝その郷関より立ち
退
(
の
)
かしめ
住
(
すみ
)
も慣れざる東の空にさまよわしめたるなり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
黎明来ると共に暗黒の悪者どもは
忽
(
たちま
)
ち姿を消す、そのさまあたかも
絨毯
(
じゅうたん
)
の四隅を取らえてこれより
塵
(
ちり
)
を払い
退
(
の
)
けるが如くであるというのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
すると鹿毛は、いよいよ山へ行けるのかと言うように、飼葉桶を首ではね
退
(
の
)
け、片肢でかっ、かっと地面を蹴り出した。
荒蕪地
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
急に兄の家から立ち
退
(
の
)
かなければならなくなったりした時に、あまりみじめな思いなどせずにすむように、郵便局にあずけて置いたものであった。
親という二字
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あゝ
浮世
(
うきよ
)
はつらいものだね、
何事
(
なにごと
)
も
明
(
あけ
)
すけに
言
(
い
)
ふて
退
(
の
)
ける
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
ぬからとて、お
倉
(
くら
)
はつく/″\まゝならぬを
痛
(
いた
)
みぬ。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
取り残された鶴見は、景彦に大きな
翼
(
つばさ
)
があって、そのひと羽ばたきで
払
(
はら
)
い
退
(
の
)
けられるような強い衝撃を受けたのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
彼は、直覚的に、夜廻り役人から、御用の声をあびせかけられている当人は、いまここを
退
(
の
)
いたばかりの、あの若者であるに相違ないと思うのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
するとお宮は、「おう
恐
(
こわ
)
い人‼」と、呆れたようにいって蒲団の端の方に身を
退
(
の
)
いて、
背後
(
うしろ
)
に
扭
(
ね
)
じ向いて私の方を見た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼等
(
かれら
)
は
雨
(
あめ
)
を
藁
(
わら
)
の
蓑
(
みの
)
に
避
(
さ
)
けて
左手
(
ひだりて
)
に
持
(
も
)
つた
苗
(
なへ
)
を
少
(
すこ
)
しづつ
取
(
と
)
つて
後退
(
あとずさ
)
りに
深
(
ふか
)
い
泥
(
どろ
)
から
股引
(
もゝひき
)
の
足
(
あし
)
を
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
引
(
ひ
)
き
拔
(
ぬ
)
き
植
(
う
)
ゑ
退
(
の
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
はっきりした言葉でそれをすぱりと云って
退
(
の
)
ければ、世界中の学者は一度に
溜飲
(
りゅういん
)
が下がったような気がするであろう。
スパーク
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“退”を含む語句
後退
引退
退出
退去
立退
退引
飛退
退屈
退却
遠退
退校
退避
退治
進退
辞退
退潮
退院
退歩
追退
居退
...