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退
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さが
ふりがな文庫
“
退
(
さが
)” の例文
密使の僧は、こっそり
退
(
さが
)
って行った。——その日、べつの殿中には、信長が、着京の挨拶のため伺候して、義昭の出座を待っていた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あたかも二十有余の戦勝は翼をひろげて戦場に入りきたったかの観があって、勝利者たる敵軍も敗者たる心地がして後ろに
退
(
さが
)
った。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
智惠子は、自分がその小川家の者でない事を現す樣に、一足後へ
退
(
さが
)
つた。その時、傍の靜子の耳の紅くなつてゐた事に氣がついた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
首を縮め
帆立尻
(
ほたてじり
)
をし、ジリジリと後へ
退
(
さが
)
りながら、息を呑み眼を見張り、
素破
(
すわ
)
と云わば飛んで逃げようと、用心をして構えていた。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と其の場を
外
(
はず
)
して次の間へ
退
(
さが
)
り、胸に
企
(
たく
)
みある蟠龍軒は、近習の者に
連
(
しき
)
りと酒を
侑
(
すゝ
)
めますので、
何
(
いず
)
れも
酩酊
(
めいてい
)
して居眠りをして居ります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
先方へ延びずに
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
り、西飛の癖として、火先へ延びず、逆に尻火に延び、反対に退却した形になって仲町から田原町へと焼けて来た。
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「昨日はあまり早く
退
(
さが
)
りましたのが残念だったものですから、まだ宮様が御所にいらっしゃると人が言うものですから、急いで」
源氏物語:45 紅梅
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
「はッ恐れながら。」と
冒頭
(
まえおき
)
して、さて御機嫌を伺えば、枯れたる声を絞らせたまい、「
退
(
さが
)
りや、退りや。」と取っても附けず。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一同が思わずワアと声を揚げて
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
った
隙
(
すき
)
に吾輩は、そこに積上げて在るトランクを小楯に取って身構えた。ドイツコイツの嫌いは無い。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「お召しにより三之丞、参上仕りました」「近うまいれ」「はっ」「弓の相手を申付ける。これ、その方どもは
退
(
さが
)
ってよいぞ」
備前名弓伝
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
即ち豫め病と称して宿に引き
退
(
さが
)
り、
小柄
(
こづか
)
を以て眼球の組織を破壊した後、その傷痕の癒えるのを待って始めて出仕したと云う。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
平生
包
(
つつ
)
み
蔵
(
かく
)
しているお延の利かない
気性
(
きしょう
)
が、しだいに
鋒鋩
(
ほうぼう
)
を
露
(
あら
)
わして来た。おとなしい継子はそのたびに少しずつ
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さて、彼と彼の助力者たちは、
帷
(
カーテン
)
の後に引き
退
(
さが
)
つた。デント大佐に率ゐられた、も一つの組は、半圓形に列べた椅子に掛けた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「ねえ、旦那。今夜お由利が帰ってきましたら、平太郎さんとの話を、すっかり決めて、一日も速くお城から
退
(
さが
)
るようにしたいもんですねえ」
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
両手をくくられて、雪のなかにさらされて、
所詮
(
しょせん
)
わが命はないものと覚悟していると、やがて主人は城から
退
(
さが
)
って来ました。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
あっさりお受けして、御前を
退
(
さが
)
った長庵だったが、考えてみると、そんなことで
真面目
(
まじめ
)
に働くことはない。根が荒っぽい大悪党の長庵である。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
老人は
箒
(
ほうき
)
を中へ入れようとしたが、入れることができなかった。同時にもつれあっていた黒い渦巻が眼の前に倒れた。老人は驚いて一足
退
(
さが
)
った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ところが次ぎの瞬間には、何も言うことがなくなり、それから今度は、『ちぇっ、まるで
得体
(
えたい
)
の分らぬ男だ!』と言って引き
退
(
さが
)
るより他はない。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
一色が知っているような気もしたが、黙って引き
退
(
さが
)
っている一色を、
年効
(
としがい
)
もなく踏みつけにしていることを考えると、そう思いたくはなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
旦那様はもうお
臥
(
やす
)
みでしたが、私は自分の部屋へ
退
(
さが
)
ろうとしていると、叫び声がしました。ハイ、たしかに叫び声です。
見開いた眼
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「
退
(
さが
)
れ退れ、退れと申すに。殿はただいま御病気じゃ、追って
穏便
(
おんびん
)
の
沙汰
(
さた
)
を致すから、今日はこのまま引取れと申すに」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
衆徒は驚いて、こは何事と増賀を
引
(
ひき
)
退
(
さが
)
らせようとしたが、増賀は声を
厲
(
はげ
)
しくして、僧正の御車の
前駈
(
さきがけ
)
、我をさしおいて誰が勤むべき、と怒鳴った。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私はもう
後
(
あと
)
は聴いていなかった。
誰
(
たれ
)
を
憚
(
はばか
)
る必要もないのに、
窃
(
そっ
)
と目立たぬように
後方
(
うしろ
)
へ
退
(
さが
)
って、
狐鼠々々
(
こそこそ
)
と奥へ
引込
(
ひっこ
)
んだ。ベタリと机の前へ坐った。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「それじゃ話が未だ徹底していない。そんなことでノメ/\引き
退
(
さが
)
って来る仲人があるものか? 何が犬馬の労だ?」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
視線を据えたままじりじりと
退
(
さが
)
って、今は彼のうしろは行き詰りであった。
唇
(
くちびる
)
を鳴らして、白い手を振ったり拡げたり、前後に振りまわしたりした。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
お紋は慎み深く、それっきり姿を見せず、美しい女中達も遠く
退
(
さが
)
って銘々の部屋へ入った様子、巣鴨の夜は、滅入るように、ただ深々と更けて行きます。
銭形平次捕物控:027 幻の民五郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が突然彼は後ろに飛び
退
(
さが
)
った。彼女は
強
(
し
)
いて笑いつづけた。二人はたがいに顔をそむけ、なんでもないふうを装っていたが、でもそっと眼を見合っていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そのとき竹見は、ハルクの後へ
退
(
さが
)
っていたが、
睨
(
にら
)
み合いの相手丸本をいつになくきたない言葉でののしり
火薬船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幸子は顔を
顰
(
しか
)
めて、彼を見ながらだんだん後へ
退
(
さが
)
ってゆくと、
上
(
あが
)
り
框
(
かまち
)
から落ちかけようとして手を拡げた。
御身
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それもそのはず、群集にもまれて、絶えず前に出過ぎるか、後へ
退
(
さが
)
りすぎるかした。のべつに新聞の売店や、街燈の柱や、花売り小屋にぶつかって廻り路をした。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
イエスは弟子たち一同を鋭く見まわしつつ言下に、「
退
(
さが
)
れ、サタン! 汝は神のことを思わず、かえって人のことを思う」と強く
叱咜
(
しった
)
し給うた(八の三一—三三)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
才五郎は、平伏すると、そのまま二三尺
後方
(
うしろ
)
へ
退
(
さが
)
って、もう一度平伏して、立上ると、出て行った。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その
暫
(
しばら
)
く前に二三人の
足軽
(
あしがる
)
らしい者が、お庭先へ入っては参りましたが、
青侍
(
あおさぶらい
)
の制止におとなしく引き
退
(
さが
)
りましたので、そのまま気にも留めずにいたのでございます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
主人
(
あるじ
)
は東に向い一拝して香を
焚
(
た
)
き、再拝して
退
(
さが
)
った。妻がつゞいて再拝して香を焚き、三拝して退いた。
七歳
(
ななつ
)
の鶴子も
焼香
(
しょうこう
)
した。最後に
婢
(
おんな
)
も香を焚いて、東を拝した。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
四辺
(
あたり
)
一面真赤になる。と、思わず飛び
退
(
さが
)
つた兄の子は、
吃驚
(
びつくり
)
すると、唖のやうに其処に突つ立つて了つた。
彼
(
あ
)
の子から観ると、それはあまり予期しない奇怪事であつた。
神童の死
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
まるで遊戲でもしているような調子だったが、そのくせ座席の向うの隅へ身をにじり
退
(
さが
)
った。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
目を
閉
(
つぶ
)
ってしまいました。それでも忠実な黄は私の身を案じてなかなか
退
(
さが
)
ろうとはせず、躊躇して居りましたが、私はもう相手にもならず、くるりと横を向いてしまいました。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
女中は引き
退
(
さが
)
った。ドーブレクは再び書きかけの手紙を書いた。それから手を延ばして、彼は机の一端にあるメモの用紙へ何か書いて、すぐ眼に付く様にそれを机上に立てかけた。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
やがて女中が
退
(
さが
)
っていったあとで、女はさっきから黙って考えているような風であったが——もっとも彼女はいつでも、いうべき用のない時は無愛想なくらい口数の少い女であった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と
爺
(
ぢい
)
さんは
少
(
すこ
)
し
座
(
ざ
)
を
退
(
さが
)
つて
兩手
(
りやうて
)
を
以
(
もつ
)
て
喧嘩
(
けんくわ
)
の
相手
(
あひて
)
を
苛
(
いぢ
)
めるやうな
容子
(
ようす
)
をして
見
(
み
)
せた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「ここにはもういなくてもよいから、あちらへ
退
(
さが
)
れというのじゃ。早く退れっ」
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
私は次の間に
退
(
さが
)
って、春の夜の夢のような恋の御物語に聞惚れて、唐紙の
隙間
(
すきま
)
から
覗
(
のぞ
)
きますと、花やかな
洋燈
(
ランプ
)
の光に映る奥様の夜の御顔は、その晩位御美しく見えたことは有ませんでした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ああどうしよう、せっかくの望も喜も春の雪と消え失せてしまった。ああこのままここを辞せねばならぬのか。彼の胸には失望と苦痛とが沸き立った。仕方なく彼は
踵
(
きびす
)
を返して
忍足
(
しのびあし
)
でここを
退
(
さが
)
った。
愛か
(新字新仮名)
/
李光洙
(著)
今
(
いま
)
一
度
(
ど
)
物
(
もの
)
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
され、
天人
(
てんにん
)
どの! さうして
高
(
たか
)
い
處
(
ところ
)
に
光
(
ひか
)
り
輝
(
かゞや
)
いておゐやる
姿
(
すがた
)
は、
驚
(
おどろ
)
き
異
(
あやし
)
んで、
後
(
あと
)
へ
退
(
さが
)
って、
目
(
め
)
を
白
(
しろ
)
うして
見上
(
みあ
)
げてゐる
人間共
(
にんげんども
)
の
頭上
(
とうじゃう
)
を、
翼
(
はね
)
のある
天
(
てん
)
の
使
(
つかひ
)
が、
徐
(
しづ
)
かに
漂
(
たゞよ
)
ふ
雲
(
くも
)
に
騎
(
の
)
って
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
恐ろしさに両手で顔をおおいながら部屋のすみに
退
(
さが
)
って行った。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
で、
膠
(
にべ
)
もなく拒絶した。しかし彼はなかなか引き
退
(
さが
)
らない。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
門倉平馬は、食卓から
退
(
さが
)
るように、畳に両手を下ろした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
あの夜、勘当になって上の御広間から
退
(
さが
)
るとき政岑が
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
給仕人はそいつを筆記して引き
退
(
さが
)
って行く。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
そう引き
退
(
さが
)
るより外はなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“退”を含む語句
後退
引退
退出
退去
立退
退引
飛退
退屈
退却
遠退
退校
退避
退治
進退
辞退
退潮
退院
退歩
追退
居退
...