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退
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ひ
ふりがな文庫
“
退
(
ひ
)” の例文
「そんなばかげたことが、世の中にあってたまるものか、お前はおれ、武士がひとたび云いだしたからには、
後
(
あと
)
へ
退
(
ひ
)
くことはならん」
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そしてその組の者は、みんなで相談して、その「週間」の間に四度だけ、学校が
退
(
ひ
)
けるとすぐ、みんなでイナゴとりに行くのでした。
栗ひろひ週間
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
お組の聲はすつかり
萎
(
しを
)
れてをります。お園と張合つて、一寸も
退
(
ひ
)
けを取らなかつたお組にしては、それは思ひも寄らぬ
挫
(
くじ
)
けやうです。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
社が
退
(
ひ
)
けて家に帰ると、ぼんやりして夜を過ごした。銀座へ出かける
目標
(
めあて
)
も気乗りもなかった。
勿論
(
もちろん
)
、明子はもう誘いに来なかった。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
本は書棚にしまわずに投げだすし、インキ
壺
(
つぼ
)
はひっくりかえる。椅子は投げたおすやらで、学校はふだんよりも一時間も早く
退
(
ひ
)
けた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
▼ もっと見る
これが、頼朝に気に入られれば入られるほど、忠義立てを見せたがり、義経らには、寵をたのんで自己を事ごとに主張して
退
(
ひ
)
かない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「原稿料じゃ当分のうち間に合いません。稿料
不如
(
しかず
)
傘二本か。一本だと寺を
退
(
ひ
)
く坊主になるし、三本目には下り松か、
遣切
(
やりき
)
れない。」
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「もう
何時
(
なんじ
)
」と
云
(
い
)
ひながら、
枕元
(
まくらもと
)
の
宗助
(
そうすけ
)
を
見上
(
みあ
)
げた。
宵
(
よひ
)
とは
違
(
ちが
)
つて
頬
(
ほゝ
)
から
血
(
ち
)
が
退
(
ひ
)
いて、
洋燈
(
らんぷ
)
に
照
(
て
)
らされた
所
(
ところ
)
が、ことに
蒼白
(
あをじろ
)
く
映
(
うつ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「お初さん、頼みというのは外でもねえが、おまはんが現に手を出しかけていることから、一ばん綺麗に、身を
退
(
ひ
)
いて頂きてえのだ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ここまで深入りして来た以上カンジンカナメの点を
放
(
ほ
)
ったらかしたまま、後へ
退
(
ひ
)
く事は、学者としての良心が第一、許さないだろう。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこで技手の
平岡
(
ひらおか
)
は田川お富に頼んで、お秀の
現状
(
ありさま
)
を見届けた上、局を
退
(
ひ
)
くとも退かぬとも何とか決めて呉れろと
伝言
(
つたえ
)
さしたのである。
二少女
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
この時分には潮が
退
(
ひ
)
き始めていたので、船は錨の周りをぐるぐる動いていた。例の二艘の快艇の方角で微かにおういと呼ぶ声が聞えた。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
「己もずうずうしい方じゃ
退
(
ひ
)
けを取らねえ積りだけれど、あの女には
敵
(
かな
)
わねえや、あの洋服で此処へ押し出して来ようてんだから」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それは、言うまでもないので、大岡越前、さっきからこんなに、口をすっぱくして詫びているんですが、愚楽老人、いっかな
退
(
ひ
)
かない
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「まあ、貴君まで、私をいじめていらっしゃるわ。そんなに好きだったら、たとい相手が妹だって、身を
退
(
ひ
)
いたりなぞ致しませんわ。」
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
退
(
ひ
)
かして芸者屋を出させ、抱えも二人までおいてやった女を、たとい二年たらずの刑期の間でも、置いて行くのは心残りであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
日米両艦隊の戦闘は、いまや順序を捨て、予測を裏切り、いずれが進むか
退
(
ひ
)
くか、
俄
(
にわ
)
かに計り知ることの出来ない疑問符号に包まれた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
予等の外に
白耳義
(
ベルジツク
)
の青年詩人が一人先に来合せて居た。翁は自分の椅子を予に与へて
暖炉
(
シユミネ
)
の横の狭い壁の隅へ身を
退
(
ひ
)
いて坐られた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
それで、纏のばれんは焼けても、消し口を取ると見込みをつけた以上、一寸も其所をば
退
(
ひ
)
かぬといって大層見得なものであった。
幕末維新懐古談:16 その頃の消防夫のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
退
(
ひ
)
け時の工場の門をあふれる勞働者の波にもまじつた。勞働者のあつまる飯屋の片隅の席にかけて、彼等の話に耳を傾けもした。
第一義の道
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
郵船会社の永田は夕方でなければ会社から
退
(
ひ
)
けまいというので、葉子は宿屋に西洋物店のものを呼んで、必要な買い物をする事になった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
強
(
し
)
いて手向かいすれば斬ってしまえと、父からかねて云い付けられているので、長三郎は一寸も
退
(
ひ
)
かなかった。彼は迫るように又訊いた。
半七捕物帳:69 白蝶怪
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう後へは
退
(
ひ
)
かれぬようになって、未練なわしの心にもどうぞ死ぬ覚悟がつこうかと、それを
恃
(
たの
)
みにあんな
真似
(
まね
)
をしてみたのだ。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
夕方学校から帰ると、伯父さんの先生はもう
疾
(
と
)
うに役所から
退
(
ひ
)
けていて、私の帰りを待兼たように、後から後からと用を
吩咐
(
いいつけ
)
る。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
予
(
かね
)
て其の方は頼まれては
退
(
ひ
)
かんとは聞いたが、大抵の事柄は…
然
(
そ
)
う/\人の為ばかりしても身でも痛めると
宜
(
よ
)
くない、母の居る
中
(
うち
)
は慎めよ
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
子供じみた彼の顔から血紅が落潮の早さで
退
(
ひ
)
いて行くのを明子は見た。それと反対に、彼は
屡〻
(
しばしば
)
子供つぽい反抗を彼女に示すやうになつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
これが、ゆっくりと、
寛々
(
かんかん
)
と、まるで象がうなずいて、また鼻を
退
(
ひ
)
く、そのように、立てた六、七吋ばかりの高さの丸太を、ちょいとやる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すこしく感ずるところがあって、常磐橋の役所も
退
(
ひ
)
くつもりだ。そのことを彼は多吉夫婦に話し、わびしい旅の日を左衛門町に送っていた。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
帰路
(
かへり
)
である。静子は
小妹
(
いもうと
)
二人を伴れて、宝徳寺路の入口の智恵子の宿を訪ねた。智恵子は、何か気の
退
(
ひ
)
ける様子で迎へる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それにも一つこゝを海岸と考へていゝわけは、ごくわづかですけれども、川の水が丁度大きな湖の岸のやうに、寄せたり
退
(
ひ
)
いたりしたのです。
イギリス海岸
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼は附近の人に恥かしい顔を見られ乍らも、足を
退
(
ひ
)
いて謝罪の言葉を繰返さなければならなかった。それでも婦人の
怒
(
いかり
)
は解けそうでなかった。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
「学校はまだすっかり
退
(
ひ
)
けてはいないよ」と、幽霊は云った。「友達に置いてけぼりにされた、独りぼっちの子がまだそこに残っているよ。」
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
ここではじめて、正三は立留り、叢に腰を下ろすのであった。すぐ川下の方には鉄橋があり、水の
退
(
ひ
)
いた川には白い
砂洲
(
さす
)
が朧に浮上っている。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
机竜之助は抜討ち横なぐりに高部を斬ると共に、当然踏み込んで行くべき二の
太刀
(
たち
)
を行かずに、後ろへ
退
(
ひ
)
いてその刀を青眼に構えたままです。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これに
反
(
はん
)
し自分に
最善
(
ベスト
)
を尽しておらぬものは、何かの時に
退
(
ひ
)
けを取りやすい。恥ずかしいが、僕もしばしば自分でこれを経験したことがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「やや、これは困った。ここへおいてゆかれたんでは進退きわまってしまう。進めば
族長
(
カボラル
)
、
退
(
ひ
)
けば
山賊
(
チュシナ
)
、……タヌ君、一体どうしたものだろう」
ノンシャラン道中記:05 タラノ音頭 ――コルシカ島の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
海は遠浅で、干潮のときには平生でも二、三町は底があらわれるし、月の初めと満月の前後には十四、五町も水が
退
(
ひ
)
いた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
クリストフは、どんなことが彼の心中に起こってるかを見てとって、自分で身を
退
(
ひ
)
きながら彼の選択を容易にしてやった。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「六波羅勢わずか五百騎というか! ……
牽制
(
けんせい
)
する手間暇はいらぬ! ……機会は来た、さあ右衛門、
退
(
ひ
)
き
鉦
(
がね
)
をお打ち、さあ退き鉦を! ……」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そして水が
退
(
ひ
)
くと一緒に、いつの間にかまた
旧
(
もと
)
の位置に帰つてゐる。丁度
鳰鳥
(
かいつぶり
)
の浮巣が潮の
差引
(
さしひき
)
につれて
上
(
あが
)
つたり
下
(
お
)
りたりするやうな工合に……
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
或
(
ある
)
島に一
匹
(
ぴき
)
の椰子蟹がおりました。大変おとなしい蟹で、
珊瑚岩
(
さんごいわ
)
の穴に住まっておりました。
潮
(
しお
)
が
退
(
ひ
)
くと、穴の口にお日様の光りが
覗
(
のぞ
)
き込みます。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
ひろびろしたトウモロコシ畠をもった多くのほほえむ谷は水の
退
(
ひ
)
いた、こういう「恐ろしい深淵」をなしているのだが
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
そうして四、五杯も詰めこんで腹が充ちて来ると、今日の学校の帰りでの出来事が想い起こされて来た。今日は土曜で学校は午前に
退
(
ひ
)
けるのだった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
一番の兄が富豪であるのに、自分が大学の僅かな月給に生活する助手であっても、自分に
退
(
ひ
)
けめを感じさせない丈の自立心を持っていると思います。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
以て氏郷が危険を物の数ともせずして、自分の身を自分が置くべきとする処に置いた以上は一歩も半歩も
退
(
ひ
)
かぬ剛勇の人であることが
窺
(
うかが
)
い知られる。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「もう三十分はいいでしょう。だって、学校が九時に
退
(
ひ
)
けて電車が十分かかると九時十分でしょう。それなら、まだ二十五分や三十分はいいですよ」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「おれはあいつにもうじき学校を
退
(
ひ
)
かせて、どこか手びろくやっている店へ、見習いにやろうという意見なのだ。」
道化者
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
そのとき、次郎左衛門は、栄之丞の前に手を
仕
(
つか
)
へて、男として一生の頼みには、どうか一ヶ月丈けこの八つ橋を、
退
(
ひ
)
かせて自分の手許へ置かせて呉れ。
吉原百人斬り
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
いつも学校が三時に
退
(
ひ
)
けると、此処まで来る時間が二十分ばかりかかる。きっとその時刻になるとやって来るのだ。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そうでなくても大概
退
(
ひ
)
け時には一度丸ビルを通過して東京駅に来るのである。丸ビルの下の十字街が雑踏するのは、正午の食事時とこの退け時である。
丸の内
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“退”を含む語句
後退
引退
退出
退去
立退
退引
飛退
退屈
退却
遠退
退校
退避
退治
進退
辞退
退潮
退院
退歩
追退
居退
...