睡魔すいま
「おやっ?彼奴」 村田が、ひょっと挙げた眼に、奥のボックスで相当御機嫌らしい男の横顔が、どろんと澱んだタバコの煙りの向うに映った——、と同時に (彼奴はたしか……) と、思い出したのである。 「君、あの一番奥のボックスの男にね、喜村さんじゃ …