-
トップ
>
-
唇紅
そのまゝ
樹下に立せ玉ふ
石地蔵𦬇の
前に
並びたちながら、
懐中より
鏡を
出して
鉛粉のところはげたるをつくろひ、
唇紅などさして
粧をなす、これらの
粧具をかりに
石仏の
頭に
置く。
ハルミが、べっとりと
唇紅のついた吸いかけの
光を置いて、立って行った。
こんな立話のまも、彼女はそわそわと
鬂のおくれ毛や
唇紅の
褪せを気にして、また、つと鏡の間へ入って、
身粧いを見直し、それからやっと如海の前へ出て、
婉然と、あいさつしていた。