“ひい”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒイ
語句割合
50.6%
15.5%
7.5%
緋衣3.4%
2.9%
費褘1.7%
火入1.7%
非違1.7%
1.7%
1.1%
1.1%
退1.1%
0.6%
日出0.6%
落籍0.6%
0.6%
0.6%
0.6%
0.6%
0.6%
日忌0.6%
0.6%
秘異0.6%
胆力0.6%
脾胃0.6%
被衣0.6%
退校0.6%
鄙意0.6%
非職0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
瑠璃子の前には、小姓か何かのように、力のないらしい青年は、極度の当惑に口をつぐんだまま、そのひいでたまゆを、ふかくひそめていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
実はそれを、教えてくれたのは、いつかの琵琶びわ法師でございます。——私とひいさまとが、あまりにいたましいといって、こう申しました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
律義なる水主かこ船頭を載せて羽州能代に下しけるに、思ふまゝなる仕合せを得、二年目に万事さしひいて六貫目の利を見たり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
玉座を自由の手にかえし、民衆を本来の民衆たらしめ、大権を人間に戻し、緋衣ひいを再びフランスの頭にきせ、道理と公正とをその円満なる状態に返し
……ひいふうみいよう、もう七歳ななつになる。もう五年したら。白いヴェールをかぶらせ、透き編みの靴下をはかせよう。一人前の娘さんのようになるだろう。
えんは、大将軍尚書令に累進したので、そのあとには費褘ひいが代って就任した。また、呉懿ごいが新たに車騎将軍となって、漢中を総督することになった。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃこの芳年よしとしをごらんなさい。洋服を着た菊五郎と銀杏返いちょうがえしの半四郎とが、火入ひいりの月の下で愁嘆場しゅうたんばを出している所です。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日ごろのあることないこと、非違ひい指弾しだんの紛々のうるささに、さしも、かなわじと、敗れ果ててのおん顔……。じじも、無念の涙に、よう詳しくもまだ、伺うてはおりませぬ
大正元年暮の二十九日、雪の黄昏を眺めた私の心のやるせない淋しさ——それは世界を掩うて近寄り来る死の蔭のひいやりとしたあゆみをわれ知らず感じたのでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ただに自身の不利のみならず、男子の醜行より生ずる直接間接の影響は、ひいて子孫の不幸をかもし一家滅亡の禍根にこそあれば、家の主婦たる責任ある者は、自身の為め自家の為め
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一旦五六岳ごろうだけ辺から胴を波の中に没してしまったが、やがて立山となって首を躍出している、と見るとき、海の底から煥発かんぱつした朱樺色しゅかばいろの火が、一文字をひいて走った。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
自分の性質の特色ともいうべき温和な人なつこいところはほとんど消えせ、自分の性質の裏ともいうべき妙にひねくれた片意地のところばかり潮の退ひいあとの岩のように、ごつごつと現われ残ったので
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「おつう、われまつと此處ここひいとつてくんねえか」卯平うへいはそれだけいつて依然いぜんとしてもない煙管きせるんだ。おつぎは麁朶そだつて藥罐やくわんしたやしてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
らがなんで三百ちやうぺんひいけたんだから、らがむしやらなこと大好だえすきのがんだから、いや本當ほんたうだよ、んで腹疫病はらやくびやうくつゝいたときだつて到頭たうとうねえつちやつたかんな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
小塩津こしほづの浜まで十五町辿つて来ると、岩が無くなつて、砂浜が幅広く一帯につづいて日出ひいの絶端まで一望に見渡される。伊良湖の裏浜はう一里程で尽きるのだ。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
日出ひいの浜には子供等が集まつて焚火をしてゐた。船底に藻草のついたのを火に焼くのが如何にも面白さうなので、子供等はその火の周囲にわい/\云ひながら飛び廻つてゐた。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
あんな派手な落籍祝ひきいわいどころじゃありません、貴郎あなた着換きがえも無くしてまで、借金の方をつけて、夜遁よにげをするようにして落籍ひいたんですもの。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「(そうです。)は可怪おかしい。近所に居ながら、知らんやつがあるか、判然はっきりえ、落籍ひいたのか!」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
墓守の家に東京から女の子が遊びに来ると、「ひいちゃん」「お安さん」とよく一緒に遊んだものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ゑりもとばかり白粉おしろいえなくゆる天然てんねん色白いろじろをこれみよがしにのあたりまでむねくつろげて、烟草たばこすぱ/\長烟管ながぎせる立膝たてひざ無作法ぶさはうさもとがめるひいのなきこそよけれ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
譬へば樹梢高らかに空にひいりて山上に
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
私が大へんわるかつたんですから、かあさまどうぞ御免下さい、買ふつもりでも何でもないんでしたもの、あの人がひいてるの聞いてたら、みんな忘れつちまつたんです。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
中央メラネシアの或島民は、人殺に往く前に自分の守護鬼の名をひいて敵手を詛ふ。
詛言に就て (旧字旧仮名) / 南方熊楠(著)
の日・日忌ひいみ様・二十五日様等の名も一つの証拠であるが、カイナンボウなどという珍しい言葉までが、行く行くはまた一つの手掛りになるだろう。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ひいじいさんかが、切支丹キリシタンの邪宗に帰依きえしていたことがあって、古めかしい横文字の書物や、マリヤさまの像や、基督キリストさまのはりつけの絵などが、葛籠つづらの底に一杯しまってあるのですが
鏡地獄 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この中世紀めいた物語説は、いまでこそだれでも一笑に付するが、あの恐怖と秘異ひい感の最中には、冗談どころか、一部の人々によって大真面目に唱道しょうどうされたものである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
何人たれ胆力ひいの強い者はないか、入ってもらいたいが」
蟹の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
届書に俊良、食べ合せ物宜しからず、脾胃ひいそこない頓死云々うんぬん。正に立会候者也と書き立てた。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
青い草の萌える、満ちた川水の流れる、霞の被衣ひいのやうにほのかに靡く春に——。桃の花の白いのが、春の日影の中にくつきりと出てゐるさまは何とも言はれなかつた。
不思議な鳥 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
梅ちゃんは十歳とおの年から世話になったが、卒業しないで退校ひいても先生別に止めもしなかった、今は弟の時坊が尋常二年で、先生の厄介になっている
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
うちは千駄木辺で、お父さんは陸軍の大佐だか少将だか、それで非職ひいてるの。その息子さんが新しい法学士なんですって……そこからね、是非、お嫁さんにほしいって言ったんですとさ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)