ひい)” の例文
渡邊織江が殺されましたのは、子刻こゝのつ少々前で、丁度同じ時刻にの春部梅三郎が若江というお小姓の手をひいて屋敷を駈落致しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
律義なる水主かこ船頭を載せて羽州能代に下しけるに、思ふまゝなる仕合せを得、二年目に万事さしひいて六貫目の利を見たり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たいらな沙地が、地平線の遠くにまで接している。南の方と思われた。雲のすそが明るくれて、上は濃い墨を流したように厚みのある黒い線をひいている。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
始めはず英文を蘭文に飜訳することを試み、一字々々字をひいてソレを蘭文に書直せば、ちゃんと蘭文になって文章の意味を取ることに苦労はない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「こいつは面白い、早くその願というものを聞きたいもんだ!」と綿貫がそのひげを力任かせにひいて叫けんだ。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ひいて百十七兩二歩となほし金方の役所へ到り差出し加納屋利兵衞御拂おんはらひくださるべしといふ役人やくにん請取うけとりあらたむるに勘定方かんぢやうかた添書そへしよ印形いんぎやうも相違なければやがて百十七兩二分の金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とて越中ゑつちうかしらでゝしたあかくニヤリとわらひ、ひとさしゆび鼻油はなあぶらひいて、しつぺいはらんと歯噛はがみをなし立上たちあがりし面貌つらがまへ——と云々うんぬんかくてこそ鬼神きじん勇士ゆうし力較ちからくらべも壮大そうだいならずや。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大仏殿の二階の上には、千余人昇り上り、かたきの続くをのぼせじとはしをばひいてけり。猛火みやうくわまさし押懸おしかけたり。喚叫をめきさけぶ声、焦熱、大焦熱、無間むげん阿鼻あびほのほの底の罪人も、是には過じとぞ見えし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
おもちや屋の亭主ていしゆがした通りを真似まねて、ひいて見ても縮めて見ても、どうひねくりまはしても「てふちよ、てふちよ」のふしはいでず、よつてこの時始めて悟りました、此風琴も琴、三味線同様
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
今古句数首をひいて俳家の用意周到なる処を指摘し、あわせて多少の評論を費すべし。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
さうしてに二度目どめさけあづからぬばあさんおもて雨戸あまどさらに二三まいひい餘計よけい薄闇うすぐらつた佛壇ぶつだんまへ凝集こゞつた。何時いつにか念佛衆ねんぶつしゆう以外いぐわい村落むら女房にようばうくははつて十にんばかりにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
奇怪おかしなことのように朋輩は思って中には今の世間に能くある例をひいて善くない噂を立てる連中もあった。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
母「あゝ云う言抜いいぬけきゃアがる、気いひいて見たなどゝ猶更置く事は出来ねえから出て行け」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すなわち今日かぜひいたり熱が出たりしてグヅ/\して居るのは摂生法の上等に過るあやまちであるから、ただちに前非を改めると申して、その日からフラネルのシャツも股引ももひきも脱ぎ棄てゝ仕舞しまっ
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ドウかすると風をひい悪寒おかんを催して熱が昇る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)