ひい)” の例文
伏見桃山のふもとの別荘、三夜荘さんやそうにいるころは、御門跡ごもんぜきさまとおひいさまのお琴がはじまったと、近所のものが外へ出てきたりしたという。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
実はそれを、教えてくれたのは、いつかの琵琶びわ法師でございます。——私とひいさまとが、あまりにいたましいといって、こう申しました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかあさんはその夕方ゆうがたひいさんをそっとまくらもとせて、やせおとろえた手で、ひいさんのふさふさしたかみをさすりながら
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しも貴下こなたが、世間せけんふやうに、阿呆あはう極樂ごくらくひいさまをれてかっしゃるやうならば、ほんに/\、世間せけんとほり、不埓ふらちことぢゃ。
ひい様の眼の前で……お身体からだの近くで、そのような恐ろしい事が起るので御座います。そうして……そうして……おひい様は……おひい様は……
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こんな心懸こころがけくない女子おなご臨終りんじゅう通報しらせが、どうしてひいさまのおもとにとどくはずがございましょう。なにみなわたくしわるかっためでございます。
うえかたのおひいさまじゃあるまいし、何処が何う違うんですか? 奥さん、絵師や腰弁が何うして芸人よりもえらいんですか?
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あなたはあのホーヘンワイス家のおひいさまが、不思議なご病気でいらっしゃるのをご存じでございますか」
「へんはばかりさまだよ、女御にょごひいさまから橋の下の乞食まで女という女はこう出来たもんだ、お蔭でおめえなんぞも気が狂わずに済むだあ、この煮干の首っくくりめ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「貴船、こりゃなんでもひいを連れて来て、見せることじゃの、なんぼでものかわいさには折れよう」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひいさま、———こうしてお姫様のおぐしを掻いておりましたら、とんでもない昔のこと、悲しいことを
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
女の行者はおつぼね様とかおひい様とかいっているだけで、ほんとうの名はわかりません。五十ばかりの家来の男は式部といっているそうで、どうも上方かみがた生まれに相違ないようです。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「御前さま、大変でございます。おひいさまが、胸を刺されて、……お湯殿で……」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
はつかねずみのおひいさま、わたしゃ其様そさまにあいにきた
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
「前の、おひい、お二人は?」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「これだ。オオここだ……おひい様、この薬草園の東の方に、妙なしるしがあると思いましたが、今、一方の板をみると、その印が解いてある」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとうさんもひいさんもびっくりして、んだ人のからだにとりついて、大騒おおさわぎをしましたが、もう二とはかえりませんでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
乳母 もしえ、この指輪ゆびわひいさまから、わしに貴下こなたげませいとうて。さ、はやう、いそがしゃれ、いかけたによって。
二方ふたかたともおひい様のところへは二度とおでになる事が出来ないような、恐ろしい運命に陥られる事になるので御座います。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わしはこちらでまだ三浦みうら殿様とのさまに一もおにかかりませぬが、今日きょうひいさまのお手引てびきで、早速さっそく日頃ひごろのぞみかなえさせていただわけにはまいりますまいか。
「あまり、無理をお謂やったら、ひいを連れて来て見せるがいいの。はやくよくならんでどうするものか」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おひいさまがいちばんのあねさまでいらっしゃいますか、どれ/\、わたくしにっこなさりませ」
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
侯爵夫人になられた細川博子さんがそのおひいさまであったが、あたしが奉公してから間もなく、ウエスト夫人という西洋人のところへ、英語を学ばれに通うことになったとき
「お世継ぎとひいさま、お三人もうけられたうえ、名君という御評判をうかがいました」
桑の木物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はつかねずみのおひいさま、わたしゃ其様そさまにあいにきた
まざあ・ぐうす (新字新仮名) / 作者不詳(著)
「おひいさま。ゆうべも乳母うばは、お亡くなり遊ばしたおやかたさまの夢をありありみましたよ。……さも、御心配そうなお顔色して」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……けれども……けれども……御発明なおひい様は、今朝けさから、それがお解りになりかけておいでになるので御座います。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おとうさんとひいさんとで、夜昼よるひる、まくらもとにつききりで看病かんびょうしたかいもなく、もういよいよ今日きょうあしたがむずかしいというほどの容態ようだいになりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
日頃ひごろわたくしは、ねばひいさまの形見かたみ小袖こそでせてもらって、すぐおそばっておつかえするのだなどと、口癖くちぐせのようにもうしていたのでございますが
バル すれば、何事なにごと大事だいじござりませぬ、ひいさまは御安穩ごあんのんにカピューレット代々だい/\のお墓所はかどころにおやすみ、ちぬ靈魂みたま天使てんしがたと一しょにござります。
あれほど大切にしたおひいさんを、なんと手軽にあつかったものだか——もとより何もかも、知りすぎる位にわかってる方が進めてゆくのだから、誰にも安心はあったであろうが
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
初めから娘を「おひいさま」と呼び、治部少輔の忘れがたみであることを感づいていた行者に対して、改めて乳母が真実を打ち明けたことがあったのか、それともそんな話はなしに
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「美しいのは当り前。おれのおふくろや親父の旧主、小野政秀さまのわすれがたみのひいさまだ。……おれのおふくろは、このひいさまの、乳母だったのさ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「イーエ……お母チャマ……アタチ知っててよ。ゆうべね。アタチ達が帰ってからね。アノお人形のおひいチャマが、菊の花を見たいって仰言おっしゃったのよ」
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おひいさまとわたくしとが此処を通り合わせましたのも何かの縁、せめて遺骸なきがらを拝ませて貰って、餘所よそながら供養をして上げとう存じますが、それもかなわぬのが口惜しゅうござります」
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
報国婦人団体が結成され、仏教婦人会の連絡をとり、籌子かずこ夫人について各地遊説ゆうぜいに、外の風にも吹かれることが多くなって、育ちゆく心はいつまでおかわいいおひいさまでいるであろうか。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「いいえ。もう海を越えて来てから七年になります。おひい様、もすこし、ゆっくりと話していただきたいと思います」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……いいえ……お母チャマ大変よ……アノネ……アノネ……アタチ……アノお人形のおひいチャマのおめざを、いただきに行ったのよ……ソウチタラネ……」
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「やっぱりそうでござらっしゃったか。お館のおひいさんは、一年の余もどこへ隠れておしまいなすったずらと、里の衆がよう折々お噂しておりますだに」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……ソウチタラネ……アノお人形のおひいチャマのお枕元に、大きい、ちろい菊の花が置いてあったのよ」
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「おひいさま、この御房ごぼうが、いちばん先に、鬼になってくださるそうですから、よいでしょう」玉日は、貝のような白いあごをひいて、にこりとうなずいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さっきから私の事を、おひい様、お姫様なんて呼んでいるけれど、人を茶化すのも好い加減にしておくれね」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さあ、おひいさま、もう、誰もいませんから、また、猿楽あそびか、鬼ごとあそびいたしましょう」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひいさま。めずらしく、外をごらん遊ばして、何がお心にとまりましたか』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……しかも野盗のごとく、搦手からめてから城外へ、白昼、風の如くひいさまを抱いて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御幼少なお嫡男ちゃくなん、お三人のひいさまたちのお行く末については、藤吉郎、身にかえても、お護りいたす所存しょぞんにございますれば……畏れながら、それについては、いささかのお心残りも遊ばさぬように
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひいさまへ、お目にかかりに来たのであろ。庭口からこれへ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おひいさま、可哀そうだに。——可哀そうなお姫だに」
「困ったおひいさまですことね」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『なんですか、ひいさま』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)