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退
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しり
ふりがな文庫
“
退
(
しり
)” の例文
しばらく
黙然
(
もくねん
)
として三千代の顔を見てゐるうちに、女の
頬
(
ほゝ
)
から
血
(
ち
)
の
色
(
いろ
)
が次第に
退
(
しり
)
ぞいて
行
(
い
)
つて、普通よりは
眼
(
め
)
に付く程
蒼白
(
あをしろ
)
くなつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
云立
(
いひたて
)
九條家を
退
(
しり
)
ぞき
浪人
(
らうにん
)
して近頃美濃國の山中に
隱
(
かく
)
れ住ければ
折節
(
をりふし
)
この常樂院へ來り近しく
交
(
まじ
)
はる人なり此人
奇世
(
きせい
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
にて
大器量
(
だいきりやう
)
あれば常樂院の天忠和尚も此山内伊賀亮を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
思
(
おもひ
)
での
我
(
わ
)
れなるに
此身
(
このみ
)
ある
故
(
ゆゑ
)
に
孃
(
じよう
)
さまの
戀
(
こひ
)
叶
(
かな
)
はずとせば
何
(
なん
)
とせん
身
(
み
)
退
(
しり
)
ぞくは
知
(
し
)
らぬならねど
義理
(
ぎり
)
ゆゑ
斯
(
か
)
くと
御存
(
ごぞん
)
じにならば
御情
(
おなさけ
)
ぶかき
御心
(
おこゝろ
)
として
人
(
ひと
)
は
兎
(
と
)
もあれ
我
(
われ
)
よくばと
仰
(
おほ
)
せらるゝ
物
(
もの
)
でなし
左
(
さ
)
らでも
御弱
(
およわ
)
きお
生質
(
たち
)
なるに
如何
(
いかに
)
つきつめた
御覺悟
(
おかくご
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
一人
(
ひとり
)
の
若
(
わか
)
い
僧
(
そう
)
が
立
(
た
)
ちながら、
紫
(
むらさき
)
の
袱紗
(
ふくさ
)
を
解
(
と
)
いて、
中
(
なか
)
から
取
(
と
)
り
出
(
だ
)
した
書物
(
しよもつ
)
を、
恭
(
うや/\
)
しく
卓上
(
たくじやう
)
に
置
(
お
)
く
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
た。
又
(
また
)
其
(
その
)
禮拜
(
らいはい
)
して
退
(
しり
)
ぞく
態
(
さま
)
を
見
(
み
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
得る事大望成就の
吉瑞
(
きつずゐ
)
なりと云ば天忠は早々御對面ありて主從の
契約
(
けいやく
)
あるべしと
相談
(
さうだん
)
茲
(
こゝ
)
に一決し天忠は
次
(
つぎ
)
へ
退
(
しり
)
ぞき伊賀亮に申樣只今先生の事を申上しに天一坊樣にも先生の
大才
(
だいさい
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
彼女が一口拘泥るたびに、津田は一足彼女から
退
(
しり
)
ぞいた。二口拘泥れば、二足
退
(
しりぞ
)
いた。拘泥るごとに、津田と彼女の距離はだんだん
増
(
ま
)
して行った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
待居たり或日將軍家には
御庭
(
おんには
)
へ成せられ
何氣
(
なにげ
)
なく
植木
(
うゑき
)
など
御覽遊
(
ごらんあそ
)
ばし
御機嫌
(
ごきげん
)
の
麗
(
うるはし
)
く見ゆれば近江守は
御小姓衆
(
おこしやうしう
)
へ
目配
(
めくば
)
せし其座を
退
(
しり
)
ぞけ獨り
御側
(
おんそば
)
へ
進寄
(
すゝみより
)
聲を
潜
(
ひそめ
)
て大坂より
早打
(
はやうち
)
の次第を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
代助は
飯
(
めし
)
が
欲
(
ほ
)
しくなかつたので、
要
(
い
)
らない
由
(
よし
)
を答へて、
門野
(
かどの
)
を
追
(
お
)
ひ
帰
(
かへ
)
す様に、書斎から
退
(
しり
)
ぞけた。が、二三
分
(
ぷん
)
立
(
た
)
たない内に、又手を鳴らして呼び
出
(
だ
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
学問は社会へ出るための方便と心得ていたから、社会を一歩
退
(
しり
)
ぞかなくっては達する事のできない、学者という地位には、余り多くの興味を
有
(
も
)
っていなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
十二時過から御仙は
通夜
(
つや
)
をする人のために、わざと
置火燵
(
おきごたつ
)
を
拵
(
こし
)
らえて
室
(
へや
)
に入れたが、誰もあたるものはなかった。主人夫婦は無理に勧められて寝室へ
退
(
しり
)
ぞいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
學問
(
がくもん
)
は
社會
(
しやくわい
)
へ
出
(
で
)
るための
方便
(
はうべん
)
と
心得
(
こゝろえ
)
てゐたから、
社會
(
しやくわい
)
を一
歩
(
ぽ
)
退
(
しり
)
ぞかなくつては
達
(
たつ
)
する
事
(
こと
)
の
出來
(
でき
)
ない、
學者
(
がくしや
)
といふ
地位
(
ちゐ
)
には、
餘
(
あま
)
り
多
(
おほ
)
くの
興味
(
きようみ
)
を
有
(
も
)
つてゐなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ機一髪と云う
間際
(
まぎわ
)
で、
煩悶
(
はんもん
)
する。どうする事も出来ぬ心が
急
(
せ
)
く。進むのが
怖
(
こわ
)
い。
退
(
しり
)
ぞくのが
厭
(
いや
)
だ。早く事件が発展すればと念じながら、発展するのが不安心である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
細君の父を閑職から引っ張り出して、彼の辞職を余儀なくさせた人は、自分たちの
退
(
しり
)
ぞく間際に、彼を貴族院議員に推挙して、幾分か彼に対する義理を立てようとした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大勢
(
おほぜい
)
の
後
(
うしろ
)
から、
覗
(
のぞ
)
き込んだ丈で、三四郎は
退
(
しり
)
ぞいた。腰掛に倚つてみんなを待ち合はしてゐた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
かえって知らぬが
仏
(
ほとけ
)
ですましていた昔が
羨
(
うらや
)
ましくって、今の自分を後悔する場合も少なくはない、私の結論などもあるいはそれに似たものかも知れませんと苦笑して壇を
退
(
しり
)
ぞいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自
(
みずか
)
ら進んで母に旅費を
用立
(
ようだ
)
った
女婿
(
むすめむこ
)
は、一歩
退
(
しり
)
ぞかなければならなかった。彼は比較的遠い距離に立って細君の父を眺めた。しかし彼の眼に漂よう色は冷淡でも
無頓着
(
むとんじゃく
)
でもなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
代助ははあと答へて、
父
(
ちゝ
)
の
室
(
へや
)
を
退
(
しり
)
ぞいた。座敷へ
来
(
き
)
て
兄
(
あに
)
を
探
(
さが
)
したが見えなかつた。
嫂
(
あによめ
)
はと尋ねたら、
客間
(
きやくま
)
だと下女が教へたので、
行
(
い
)
つて戸を
明
(
あ
)
けて見ると、縫子のピヤノの先生が
来
(
き
)
てゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「下らない」と自分は一口に
退
(
しり
)
ぞけた。すると今度は兄が黙った。自分は
固
(
もと
)
より無言であった。海に
射
(
い
)
りつける
落日
(
らくじつ
)
の光がしだいに薄くなりつつなお
名残
(
なごり
)
の熱を薄赤く遠い
彼方
(
あなた
)
に
棚引
(
たなび
)
かしていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただ彼の落ちつき払って曲彔に
倚
(
よ
)
る重々しい姿を見た。一人の若い僧が立ちながら、
紫
(
むらさき
)
の
袱紗
(
ふくさ
)
を解いて、中から取り出した書物を、
恭
(
うやうや
)
しく卓上に置くところを見た。またその
礼拝
(
らいはい
)
して
退
(
しり
)
ぞく
態
(
さま
)
を見た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
“退”を含む語句
後退
引退
退出
退去
立退
退引
飛退
退屈
退却
遠退
退校
退避
退治
進退
辞退
退潮
退院
退歩
追退
居退
...