こう)” の例文
で、こうの鳥を想わせるような、純白で艶のある女の裸身は、その色に染められておのれ自身、紺碧になるかと疑がわれさえした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主人とお嬢さんとの膝に掛けるきれが、こうとりの形に畳んである、その嘴のところに、薄赤の莟を一つづつ挾んだ。
薔薇 (新字旧仮名) / グスターフ・ウィード(著)
向うの青いそらのなかを一羽のこうがとんで行きます。鳥はうしろにみなそのあとをもつのです。みんなはそれを見ないでしょうが、わたくしはそれを見るのです。
マリヴロンと少女 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
余十一歳のころ、親族児玉氏片山忠蔵(即ち北海である。)の門人たるを以て、余を引いて名字を乞ふ。片山余が名を命じ、名こう字は千里とす。其の後片山氏京に住す。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
“白石毛”とよぶ白馬にまたがり、赤地錦の直垂ひたたれに、おどしのよろいを着、兵庫グサリの丸鞘まるざやの太刀をはき、重籐しげどうの弓をお手に、こうはね征矢そやをえびらに負っておられたという。
東京へ来てから、この怪しい夢はもとより手痛く打ちくずされてしまったが、それでも時々は今でも観音様の屋根にこうとりが巣を食っているだろうぐらいの考にふらふらとなる事がある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かの水精ナイアスの水したたる白い御手おんてに滋味を吸うこうの鳥、水に浮くこの聖鳥の如くに、わたくしもまた暗い時のには、斯人の手にうち伏し、うちすがり、わが心の糧——深き夢をば求めました。
白いチューリップや水仙すいせんの中を、こうの鳥が堂々と歩を運んでる新鮮な牧場、大きな翼のつばめはとの群れが飛んでる澄みわたった空気、雨間を貫く日光の楽しさ、雲間に笑う輝いた空、夕のおごそかな清朗さ
野茨やまきの葉や枝の隙から、崖下の谷川が眼の先に見え、そこに無邪気に水を浴びている、三人の女のこうの鳥のような、皓々こうこうと白い全裸体を、金粉のように降り注いでいる
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)