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こう
ふりがな文庫
“
昂
(
こう
)” の例文
それはマルファ・ペトローヴナの熱もだんだん
昂
(
こう
)
じてきて、妹さんの噂をしてもわたしが黙っていると言って、腹を立てるくらいでした。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
己
(
おの
)
れも好むようになりそれが
昂
(
こう
)
じた結果であり音曲をもって彼女の愛を得る手段に供しようなどの心すらもなかったことは
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と
譏
(
そし
)
られた男子同性愛も、事
昂
(
こう
)
ずればいわゆるわけの若衆さえ、婦女同然の情緒を発揮して、別れを恨んで多数高価の鶏を放つに至ったのだ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
じっさい私にはある感情特に憎悪の感情が極度に
昂
(
こう
)
じてくると、紳士的体面などは一銭銅貨のように投げすててしまい兼ねない傾向があるのだ。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
芸術家の至上主義が
昂
(
こう
)
じると生活が乱れやすいが、老人のこの主義は
真
(
まこ
)
とに安全だから結構だと思って見たりした。甚だ合理化された避暑法だ。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
▼ もっと見る
そこまで考えると、恭一のやり方の愚劣さに対する怒りは、その底に、自分で意識しない
嫉妬
(
しっと
)
の感情を波うたせて、いよいよ
昂
(
こう
)
じて行くのであった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
いつぞやお話をした『正雪の絵馬』と同じように、道楽が
昂
(
こう
)
じると、とかくに何かの間違いが起こり易いものです。
半七捕物帳:58 菊人形の昔
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
夫人のヒステリーの
昂
(
こう
)
じたころ、築地のホテルへ誘き出し、前代未聞の恐るべき手段を用いて夫人を殺しました。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこから引きかえして来た連絡係りは、これを告げるだけで充分
昂
(
こう
)
ふんすることが出来た。彼は叫んで歩いた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
後家が、役者に、思いをかけての、
痴話喧嘩
(
ちわげんか
)
が、
昂
(
こう
)
じたもの——とでも、いったように、お初はいいまわした。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
当然床の中に
臥
(
ふ
)
していなければならないうちに、ちょうどそれが田植えの時期だったので、無理に田圃へ出たのがもとで、
産褥
(
さんじょく
)
熱が
昂
(
こう
)
じ、ひどい出血の後に
緑の芽
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
が、この酒は元来好きでもあったろうが一つは生活の不愉快を忘れたさに
益々
(
ますます
)
酒癖を
昂
(
こう
)
じさせたのであろう。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
茶を
啜
(
すす
)
り菓子をつまみながら、話したい者は勝手に話すし、聞きたい者は聞いていればいい、議論の始まることもあるし、それが
昂
(
こう
)
じて
喧嘩
(
けんか
)
になりかかる場合もある。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
とうとうそれはやりきれないような気持ちにまで
昂
(
こう
)
じて行った。自分ながら案外なことであった。
京の四季
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
が、そのいさかいがだんだん
昂
(
こう
)
じて、しまいにはそれまで皆の目を
覚
(
さ
)
まさせまいとして互に小声で言い合っていたらしいのが、つい我を忘れたように声を高くしてくる。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
めいりこんでいて「伊藤が愛がないのでさびしくてしかたがない。高い
崖
(
がけ
)
の上からでも
飛降
(
とびお
)
りて死んでしまいたい」といっていたが、感情が
昂
(
こう
)
じてこんな事になったのか
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
物思いは御息所の病をますます
昂
(
こう
)
じさせた。斎宮をはばかって、他の家へ行って修法などをさせていた。源氏はそれを聞いてどんなふうに悪いのかと哀れに思って訪ねて行った。
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
時にはそれが狂乱の一歩手前にまで
昂
(
こう
)
じることも、一度や二度ではなかったのだ。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
姉は大学生が自分を思っていると思い込み、妹の方は自分を思っていると思い込んで、お前がいるからあの方は来て下さらないんだわ、いいえ姉さん、
貴方
(
あなた
)
がいるからよ、といい争いが
昂
(
こう
)
じて
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
とあれば、おそらくは、お
風邪
(
かぜ
)
が
昂
(
こう
)
じられた程度ではなかったろうか。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
浪子が病みて地を
転
(
か
)
えしより、武男は帰京するごとに母の
機嫌
(
きげん
)
の次第に
悪
(
あ
)
しく、伝染の恐れあればなるべく逗子には遠ざかれとまで戒められ、さまざまの壁訴訟の果ては
昂
(
こう
)
じて
実家
(
さと
)
の
悪口
(
わるくち
)
となり
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「ハーッ」と小次郎は気を呑んだ、恐怖が
昂
(
こう
)
ずると夢中になる。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
更に気持が
昂
(
こう
)
じてきたのだった。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
こういう風なことが
昂
(
こう
)
じると、場合によっては、窓や鐘楼からでも飛びおりたくなってきますよ。そういった感覚は魅惑の強いものですからな。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
老教授の一時の
昂
(
こう
)
奮は、しかし「判事!」と叫んだ一語のために、すっかり消えてしまったものと見えて、またもや、
菜葉
(
なっぱ
)
のようにしおれてしまった。
予審調書
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
あまり病気が
昂
(
こう
)
じないうちに一度東京へ連れて行って専門の大家に
診
(
み
)
て
貰
(
もら
)
おう、まだ東京を知らない彼女は
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
不思議な欲望——
骨董癖
(
こっとうへき
)
、
風雅癖
(
ふうがへき
)
が
昂
(
こう
)
じた結果の、異常な蒐集慾、それを満たすために、どれ程、うしろ暗い、汚らわしい行為を、繰り返して来ていた彼であったろう!
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
晩年には益々
昂
(
こう
)
じて舶来の織出し模様の
敷布
(
シーツ
)
を買って来て、中央に穴を明けてスッポリ
被
(
かぶ
)
り、左右の腕に垂れた個処を
袖形
(
そでがた
)
に
裁
(
た
)
って縫いつけ、
恰
(
まる
)
で
酸漿
(
ほおずき
)
のお化けのような
服装
(
なり
)
をしていた事があった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
退屈しのぎが
昂
(
こう
)
じて、ひとつ
揶揄
(
からか
)
ってやろうと、藤次はそこで
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遊戯
(
ゆうぎ
)
の際に早くも検校の真似をするに至ったのは自然の
数
(
すう
)
でありそれが
昂
(
こう
)
じて習い性となったのであろう
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そのように
薄情
(
はくじょう
)
にするなら、御息女のことを、世間にいいふらす——と、あたくしが、
焼餅
(
やきもち
)
が
昂
(
こう
)
じて申したのがきっかけで、あんな馬鹿らしいことになったのでございました
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そういう次第で、まだはっきりと御決心がついたわけではござりませなんだが、うす/\それが御城中へ知れわたったものでござりますから、なおさら御両人の不和が
昂
(
こう
)
じてしまいました。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
つまり自分は、二三年来生理的に夫たる資格を失いかけているところから、此のまゝでは、———何とかしてやらなければ、———妻に申訳がないと云う気持が、
昂
(
こう
)
じて来ていたのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
こういう
傲慢
(
ごうまん
)
な、我が
儘
(
まま
)
な根性は、前から彼女にあったのであるか、
或
(
あるい
)
は私が甘やかし過ぎた結果なのか、いずれにしても日を
経
(
ふ
)
るに従ってそれがだんだん
昂
(
こう
)
じて来つつあることは明かでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たゞさうすると品子に
溜飲
(
りゅういん
)
を下げさせることになるのが、いかにも残念でたまらないので、その方の意地が
昂
(
こう
)
じて来ると、猫のことぐらゐ辛抱しても誰があの女の計略なんぞにと、云ふ風になる。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たゞさうすると品子に
溜飲
(
りゅういん
)
を下げさせることになるのが、いかにも残念でたまらないので、その方の意地が
昂
(
こう
)
じて来ると、猫のことぐらゐ辛抱しても誰があの女の計略なんぞにと、云ふ風になる。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ただそうすると品子に
溜飲
(
りゅういん
)
を下げさせることになるのが、いかにも残念でたまらないので、その方の意地が
昂
(
こう
)
じて来ると、猫のことぐらい辛抱しても誰があの女の計略なんぞにと、云う風になる。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
利太郎の
横恋慕
(
よこれんぼ
)
にどの程度の熱意があったか知るべくもないが若年の頃は誰しも年下の女より
年増
(
としま
)
女の美に
憧
(
あこが
)
れる恐らく極道の果てのああでもないこうでもないが
昂
(
こう
)
じたあげく盲目の美女に
蠱惑
(
こわく
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その道楽が
昂
(
こう
)
じると、一人で使うことの出来る小さな指人形を持って町から町を
門附
(
かどづ
)
けして歩き、呼び込まれれば座敷へ上ってさわりの一とくさりを語りながら踊らせて見せると云うようなのもあり
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
昂
漢検準1級
部首:⽇
8画
“昂”を含む語句
昂奮
激昂
昂然
昂進
軒昂
昂揚
里昂
昂騰
子昂
高冠昂尾
趙子昂
意気軒昂
昂々
里昂停車場
大昂奮
曹昂
仁藤昂軒
重昂
低昂宛転
劉子昂
...