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嵩
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こう
ふりがな文庫
“
嵩
(
こう
)” の例文
若さと若さとが互いにきびしく求め合って、葉子などをやすやすと
袖
(
そで
)
にするまでにその情炎は
嵩
(
こう
)
じていると思うと耐えられなかった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その退屈がだんだんに
嵩
(
こう
)
じて来た第三日のゆう方に、倉沢は袴羽織という
扮装
(
いでたち
)
でわたしの座敷へ顔を出した。かれは気の毒そうに言った。
西瓜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
福田氏は、以前から一体陰気な性質であったが、夫人を失ってからは、一層それが
嵩
(
こう
)
じて、終日一間にとじ籠っている様な日が多かった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
解ったか、味噌擂り奴、——
手前
(
てめえ
)
は腹の悪い人間じゃねえが、主人大事が
嵩
(
こう
)
じて、外の者へツラく当りすぎるよ、気を付けやがれ
銭形平次捕物控:098 紅筆願文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ヒステレーの
嵩
(
こう
)
じかかって来た細君は、浅井の顔を見ると、いきなりその胸倉に飛びついたり、瀬戸物を畳に
叩
(
たた
)
きつけたりした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
それは自身で研究して自身で造り出した砲でなければ満足のできないほどに、能登守の砲術の愛好心は
嵩
(
こう
)
じているのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こういう問答は専門に
渉
(
わた
)
ったことでありますからこれから後の分も略します。だんだん仏教の話が
嵩
(
こう
)
じてとうとう夕暮になってしまった。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
けれども、男の
膚
(
はだ
)
は知らない処女の、
艶書
(
ふみ
)
を書くより恥かしくって、人目を避くる苦労に
痩
(
や
)
せたが、
病
(
やまい
)
は
嵩
(
こう
)
じて、夜も昼もぼんやりして来た。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
なぜといって、わたしの煩悶はだんだんに
嵩
(
こう
)
じてきて、自分はいま何をしているか分からないくらいになったからでした。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
得意さきでおだてられるまゝ稼業そっちのけに
声色
(
こわいろ
)
をつかって聞かせたりしていたうちはまだよかった、それが
嵩
(
こう
)
じて「役者になりたい」になり
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
正木博士の話から
湧出
(
わきだ
)
して来る一種の異妖な気分に魅せられて、何となく
狂人
(
きちがい
)
じみた不可思議な疑いが、だんだん
嵩
(
こう
)
じて来るのを感じながら……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
悪ふざけが
嵩
(
こう
)
じて遊里の評判、時の政道のそれとない批判まで織りこむようになり、寛政度のお叱りにあって一転し、善玉悪玉の教訓物となったが
仇討たれ戯作
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
女は思い
嵩
(
こう
)
じて、脅迫観念のようなものを感じはじめているらしかった。すっかり連絡の絶えてしまった家族や亭主のことが日夜気にかかるあまり。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
自分はこの影と稲妻とを
綴
(
つづ
)
り合せて、もしや兄がこの
間中
(
あいだじゅう
)
癇癖
(
かんぺき
)
の
嵩
(
こう
)
じたあげく、嫂に対して今までにない手荒な事でもしたのではなかろうかと考えた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これが
原因
(
もと
)
で、
妻
(
つま
)
は心配が
嵩
(
こう
)
じて、やぶれかぶれになり、めしつかいの者たちがいろいろなぐさめてくれるのも耳に入らず、首をくくってしまいました。
子どもたちが屠殺ごっこをした話
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
これも我には
心易
(
こゝろやす
)
だての我儘と
自惚
(
うぬぼれ
)
が
嵩
(
こう
)
じていましたから、
情人
(
おとこ
)
の為に嫌われると気の
注
(
つ
)
きませんで持ったもの。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今度は
黽勉
(
びんべん
)
努力を心に誓った。以前だって決して自分から怠けたのでない。雪子夫人のヒステリーが
嵩
(
こう
)
じて、已むを得ず、日一日と欠勤が続いたのだった。
秀才養子鑑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だんだんに、この厭でうるさいという感情が
嵩
(
こう
)
じてはげしい憎しみになっていった。私はその動物を避けた。
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
そりゃア、わたくしの道楽が
嵩
(
こう
)
じましたのです、な。わたくしには物の啼き声を真似るのが持ち前に備わってたとでも申すのでしょうか? 何でも真似ます。
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
それが
嵩
(
こう
)
じて、利益の分配のことにもけんかの花が咲き、その結果があの笛の中の書き置きにあったようなしばいがかりのつらあて毒死になったものでしたが
右門捕物帖:05 笛の秘密
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
初めは一種の
畏怖
(
いふ
)
と親しみであったものが、逆に
嵩
(
こう
)
じて、茫然と限界に拡がり満ちる痴川の生存そのものを
忌
(
い
)
み呪う気持が伊豆の
憔悴
(
しょうすい
)
した孤独を
饒舌
(
じょうぜつ
)
なものにした。
小さな部屋
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
高橋おでんも、
蝮
(
まむし
)
のお政も、
偶々
(
たまたま
)
悪い素質をうけて生れて来たが、彼女たちもまた美人であった。おでんもお政も悪が
嵩
(
こう
)
じて、盗みから人殺しまでする羽目になった。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
この老人は、直樹の叔父にあたる非常な神経家で、潔癖が
嵩
(
こう
)
じて一種の
痼疾
(
こしつ
)
のように成っていたが、
平素
(
ふだん
)
癇
(
かん
)
の起らない時は口の
利
(
き
)
きようなども至極丁寧にする人である。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
復一の神経
衰弱
(
すいじゃく
)
が
嵩
(
こう
)
じて、すこし、おかしくなって来たという噂が高まった。事実、しんしんと
更
(
ふ
)
けた深夜の研究室にただ一人残って
標品
(
プレパラート
)
を作っている復一の姿は
物凄
(
ものすご
)
かった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
初めは墨色の研究のつもりだったが、だんだん
嵩
(
こう
)
じてきて、とうとう一昨年は、墨絵の展覧会までやった。私の墨絵の高弟で、
出藍
(
しゅつらん
)
の誉れ高い、岩波の小林勇君との二人展である。
九谷の皿
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
又それが
嵩
(
こう
)
じて貨車をも持ち上げるほどの大旋風となることなどを理解しなかった。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
彼はこの馬鹿げた形の狂いを感じると、お柳に対する
怒
(
いかり
)
がますます輪をかけて
嵩
(
こう
)
じて来た。彼は寝台の上へ倒れたまま、心をなだめるように、毛布の柔かな毛なみをそろりそろりと
撫
(
な
)
でてみた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
廊下
(
ろうか
)
を通る人の足音とか、
家中
(
かちゅう
)
の者の話声とかが聞えただけで、すぐ注意が
擾
(
みだ
)
されてしまう。それがだんだん
嵩
(
こう
)
じて来ると、今度は
極
(
ごく
)
些細
(
ささい
)
な刺戟からも、絶えず神経を
虐
(
さいな
)
まれるような姿になった。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
店は折曲りの土間になって大きな
欅
(
けやき
)
の角火鉢、支度待つ間の一服というのが普通の構え、たまには小座敷があってちょっと一杯、それが
嵩
(
こう
)
じて座敷も立派に、広間もあるという待合式の家もでき
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
ふとした病が
嵩
(
こう
)
じて旅でお亡くなりになりました、私がついておりながらも、こればっかりはどうすることもできませんでございました
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
これが
嵩
(
こう
)
じると自分までヒステリーのようになって、暇を取ったくらいでは気がすまないで、面あてに首でも
縊
(
くく
)
ろうかと思う時さえあった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
笹村もお銀の気の長いのを、時とするとじれったく思うことがあったが、衰弱がどこまで
嵩
(
こう
)
じて来るか、じっと見ていたいような気もした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「生れ付きの
片輪
(
かたわ
)
が
嵩
(
こう
)
じて、近ごろは身動きも自由でなく、離屋に
籠
(
こも
)
ったきりでございます、もう十五になりますが」
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これがいよいよ
嵩
(
こう
)
じて来たら何を仕いだすかも判らない。真っ昼間、ここの玄関へ乗り込んで来るかも知れない。その
暁
(
あかつき
)
には自分の身はなんとなる。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし
文字
(
もんじ
)
のあるものが、目に
一丁字
(
いっていじ
)
のない床屋の若いものに、
智慧
(
ちえ
)
をつけて、
嵩
(
こう
)
じたいたずらをしたのが害になったんだから、なお責任は重大です。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「唯病重しという丈けの電報で能く分らないのさ。二三年前からの持病が
嵩
(
こう
)
じたのか、脳溢血でも起ったのかって、皆取るものも取り敢えず帰って行った」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
だんだんと
嵩
(
こう
)
じて行くばかりでしたが、やがて中学を卒業しますと、彼は上の学校にはいろうともしないで、ひとつは親たちも甘過ぎたのですね、息子の言うことならば
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はこの頃、持病の不眠症が
嵩
(
こう
)
じた結果、頭が非常に
悪
(
わ
)
るくなっている事を自覚していた。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが次第に
嵩
(
こう
)
ずるうちに、大名共、だんだんと
狡猾
(
こうかつ
)
になって、お墨付には別段音物付け届け手土産の金高質量を明記してなかったのを幸いに、いつのまにか千両は五百両にへり
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それがだん/\
嵩
(
こう
)
じて、のっ引ならなくなり、安宅先生は葛岡の勤めている学園などにはもう一ときもいられないと
駄々
(
だだ
)
を
捏
(
こ
)
ねて、その駄々をまた本当のことに捏ね直す
羽目
(
はめ
)
になり
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「四番首まで討って、天下に怖いものなしと、
己惚
(
うぬぼ
)
れが
嵩
(
こう
)
じておるのじゃよ」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
痴話も
嵩
(
こう
)
ずると真剣になることがある。あぶない。その時、行手の谷間から、がやがやと人の声があって、こちらをめがけて悠長に登って来る。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
倉地の胸から触れ慣れた
衣
(
きぬ
)
ざわりと、強烈な膚のにおいとが、葉子の病的に
嵩
(
こう
)
じた感覚を乱酔さすほどに伝わって来た。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「それがいけないんで、仁三郎さん。お互に年は取りたくないネ。持病の
疝気
(
せんき
)
が
嵩
(
こう
)
じて、近頃は腰も切れない始末さ。気ばかり若くたって、もういけねえ」
銭形平次捕物控:052 二服の薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それがいよいよ
嵩
(
こう
)
じて来て、なんだかむやみに妬ましいような、腹が立つような
苛々
(
いらいら
)
した心持になって来て、唯なんとなしに江戸の人間が憎らしくなって
半七捕物帳:18 槍突き
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
先生がこの瘣を気にし出したのは、よほど以前から
素地
(
したじ
)
のあった胃病が、大分
嵩
(
こう
)
じて来てからであった。先生はそのころから、筆を執るのが億劫らしく見受けられた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
この世間をアッと云わせようという心理、それが
嵩
(
こう
)
じると、狂的な企てをもやり兼ねない。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
串戯
(
じょうだん
)
も
嵩
(
こう
)
じると、抜差しが出来なくなる。誰か知らんが、
悪戯
(
いたずら
)
がちと過ぎます。面は内証で取るが
可
(
い
)
い、今の内ならちっとも分らん、
電燈
(
でんき
)
を
点
(
つ
)
けてからは消え
憎
(
にく
)
くなるだろう。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
遠方はるばるお医者の
玄関
(
げんか
)
へ。連れて来られた人間ならば。誰が見たとて正気に見えない。かなり
嵩
(
こう
)
じた連中ばかりじゃ。又は見かけが普通と変らぬ。落付き払った病人とても。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
嘉六も粗筋だけは知っている安宅という女教師の郷里への引退に就ては、その実、ひどい神経衰弱であったことや、その神経衰弱が
嵩
(
こう
)
じて、先生は実家から
出奔
(
しゅっぽん
)
し、自殺の
惧
(
おそ
)
れがあるため
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
嵩
漢検準1級
部首:⼭
13画
“嵩”を含む語句
水嵩
嵩高
荷嵩
気嵩
嵩山
金嵩
年嵩
嵩張
一嵩
亀嵩
皇甫嵩
曹嵩
嵩間
嵩谷
嵩張物
御嵩
嵩山正直
嵩山寺
嵩増
姥嵩
...